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事業計画を達成して勝ち癖をつける

[要旨]

Bリーグチェアマンの島田慎二さんは、事業計画は、悲観的に、あらゆるリスクが発生することを想定して、それでも達成できるものを立てることが大切と考えているそうです。なぜなら、計画を達成してもらうことで、従業員のモチベーションやパフォーマンスを向上させることができるようになるからだということです。

[本文]

今回も、Bリーグチェアマンの島田慎二さんのご著書、「オフィスのゴミを拾わないといけない理由をあなたは部下にちゃんと説明できるか?」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、かつて、島田さんが社長を務めていた千葉ジェッツでは、ミスが起きた時、規則通りに仕事をして起きたミスか、規則に反して仕事をた結果起きたミスかを判定し、さらに、規則に反して仕事をしたとき、その理由に合理的な理由があるかどうかを判定することで、規則に問題がある場合は、個人の責任ではなく、規則に問題があると判断し、規則を変更することで、質の高いサービスを提供できる体制をつくっていったということについて説明しました。

これに続いて、島田さんは、経営理念に基づいて事業計画を立てるときは、悲観的なシナリオで考えることが大切ということについて述べておられます。「経営理念に基づいて計画を立てるうえでのポイントは、悲観的なシナリオで考えることです。悲観的に、あらゆるリスクが発生することを想定して、それでも達成できる計画を立てます。とはいえ、誰が見ても、楽に達成できる低レベルの計画がよいというわけではありません。正しく努力すれば達成できる、ちょっと背伸びしたくらいの計画がベストです。

『達成できる』というのは、経営者として、絶対に達成できるシナリオを具体的に描けるという意味です。必達を条件にするのは、経営者は、組織をゴールに導ける存在であるべきだからです。それは、社員や顧客を含む、すべてのステークホルダーから信頼を勝ち取るために欠かせません。特に、社員のモチベーションやパフォーマンスを向上させるには、小さな成功を積み重ね、『自分たちは勝てる』という勝ち癖をつけていくことに、大きな意味があります。

今期の目標、来期の目標、再来期の目標と、設定された目標を実現し、それによる事業成果が報酬増につながることによって、社員も自分たちがいまやっていることは正しいという満足感と自信を得られるのです。ですから、予算を組む上でも、必達できる目標=トップラインをまず固めて、そのために必要なリソースを用意するkとになります。コストありきで無謀な目標を立てて、スパルタに社員を追い立てても、『2:6:2』の『6』と下位の『2』は疲弊して、自信を喪失していくだけでしょう」(98ページ)

島田さんは、「悲観的に、あらゆるリスクが発生することを想定して、それでも達成できる計画を立てる」というご説明をしておられますが、私は、このような計画を立てることは、頭で考えるほど簡単ではないと思っています。なぜなら、単に、達成できそうな目標を立てるだけでよいのかというと、それだけでは事業を継続させるために必要な利益を得ることができるとは限らないからです。ただ、この点については、今回の記事の本旨ではないので、ここではこれ以上の説明は割愛します。

そして、島田さんの考え方のように、事業計画を達成する経験を持ってもらうことは、従業員のモチベーションやパフォーマンスを向上させることになるという役割があるということです。これも当たり前のことなのですが、日本の中小企業で事業計画を作成している会社は、10%もないのではないでしょうか。そして、事業計画がない会社では、売上や利益が増えたか、または、減ったかくらいでしか業績を測ることしかできません。しかも、それは決算が終わってから、すなわち、事後的にしかわかりません。

でも、事業計画を立てている会社は、会計年度の途中でも、目標がの程度達成しているかが分かったり、どの部分が目標と実績で乖離しているかが分かったりしますので、目標を達成するための精度の高い改善を行うことができます。そして、島田さんがご指摘しておられる通り、目標を達成することで、「自分たちは勝てる」という自信を従業員の方に持ってもらうことができます。確かに、中小企業で目標を建てるための労力は小さくないことも事実です。でも、業績を高めるためには事業計画の役割は重要であり、それによって業績が高まる可能性は高まるわけですから、事業計画を作成する労力は十分にペイできると、私は考えています。

2023/7/21 No.2410

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