商品価値は顧客が購入してからスタート
[要旨]
料理道具専門店の飯田屋では、商品を売るという考え方から、使う人に合った料理道具を使ってもらい、よろこびを感じてもらうという考え方に変更し、業績を伸ばしています。これは、「モノ」を売るのではなく「コト」を売るという考え方で、効果は高いものの、難易度もやや高い方法です。
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今回も、かっぱ橋道具街の料理道具専門店の飯田屋の社長、飯田結太さんのご著書、「浅草かっぱ橋商店街リアル店舗の奇蹟」を読んで、私が注目したことについて述べたいと思います。前回お伝えしたように、飯田さんは、従業員の半分が一斉に退職したことから、無意識のうちに従業員を軽視してきたことに気づき、事業方針を転換しました。具体的には、ノルマを課して売上を増やす方法から、「笑顔」で売上を増やす方法にしたそうです。
例えば、おいしい料理が作れるけれど、値段が高くて手入れが大変な鍋と、料理を作るときにはコツが必要だけれど、値段が安くて手入れ簡単な鍋があったします。そして、小柄な婦人が来店し、自分に合う鍋を買いたいと言われたときに、どのような鍋を売るべきかを考えると、ノルマがあるときは、高価格の鍋を提案してしまうかもしれませんが、顧客の使いやすさを勘案し、手入れが簡単な鍋を売ることを優先してもらうようにしたそうです。すなわち、鍋などの料理道具を売ることを目的とせず、「なんていい道具にめぐり合えたのか」と、顧客がよろこんでもらうことを目的と考えてもらうようにしたそうです。
これは、ハーレーダビッドソンジャパンなどと同じ手法だと思います。ハーレーダビッドソンジャパンの手法は有名ですが、移動手段としてのオートバイを売るのではなく、「ハーレーのあるライフスタイル」という顧客体験を売るという考え方で事業に臨んできた結果、業績を伸ばしています。すなわち、「モノ」ではなく「コト」を売るということです。私がちょっと驚いたのは、この、顧客体験の考え方は、比較的、高額の商品でないとうまくいかないのではと思っていたのですが、料理道具のような商品にも活用できるということを知ったことです。
とはいえ、「コト」を売るようにすることは、決して難易度は低くないようです。飯田さんがどのようなことをしたのか、その具体的な内容は割愛しますが、飯田さんは、「160時間ルール」、「2万回ルール」というものを設け、「コト」を売るための体制をつくっています。これらの「ルール」にご関心のある方は、ぜひ、飯田さんのご著書を読んでみてください。
2021/12/19 No.1831