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[要旨]

会社は株主の意向にそって経営が行われることが原則ですが、現実的には、創業家の影響力が大きく働いていることもあります。その影響力が、会社をまとめるためによい方向に影響することもありますが、逆に、不祥事を招いたり、会社に終焉を招いたりすることもあります。


[本文]

日本経済新聞の、セブン&アイ・ホールディングスのガバナンスに関する記事を読みました。その記事によれば、株式会社のガバナンスは、本来は、株主が握っているものの、同社では創業家にもある程度の影響力が残っており、2016年の首脳人事の混乱のときは、創業家が事態収拾に一役買ったというものです。繰り返しになりますが、株式会社の最高意思決定機関は株主総会ですが、従業員たちの精神的支柱としての創業家の存在は、簡単に無視できないというものです。

株式会社は「かね」の論理で動くことが原則ですが、実際には事業活動は、社会的、生物的な存在である「ひと」が関わっており、そうである以上、「感情」に影響されることは当然と言えます。そして、セブン&アイの場合、創業家の影響力によって、首脳人事案がよい方向で収まったと言えます。ところが、同じ記事でも言及していますが、創業家の影響力には暗い側面もあります。前述の記事では、ダイエーを例にあげています。

「過剰債務で経営危機に陥った2000年ごろ、外部からある再生計画案が持ち込まれたことがある。それはダイエーを身売りして、傘下のローソン、金融会社のダイエーオーエムシー(現SMBCファイナンスサービス)、リクルート(現リクルートHD)を残すという内容だった。(中略)だが、真剣に検討することを阻んだのが、創業家ガバナンスだったことは想像に難くない。中内氏にとって、ダイエーを身売りすることは身ぐるみはがされることに等しいからだ」

同社以外にも、創業家の影響力の暗い側面が表面化した事件は、残念ながら珍しくありません。例えば、2018年に、投資用不動産の運営会社が経営破綻し、不正融資が発覚した地方銀行は、やはり、創業家の意向が聖域化していたために、不正が横行したと言えます。

では、どうすればよいのかということですが、実は、これについては、私はなかなか結論が出ない課題だと思っています。創業家の影響力があるから、会社がまとまることもあるし、逆に、会社が終焉を迎えることになってしまうこともあります。それくらい、会社は有機的で複雑な論理で動いているからこそ、経営者は、ビジネスだけでなく、ガバナンスにも大きな注意と関心を向けなければならないと、私は考えています。

2022/2/19 No.1893

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