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ピューロランドとファンの絆の強さ

[要旨]

サンリオピューロランドは、コロナ禍になった際、休館を決めましたが、休館中に公開した動画が大きな反響を呼びました。この動画が受容された要因は、ピューロランドとファンの間でエンゲージメントが育まれていたからと考えることができますが、このような関係性をつくるには、経営者層にファンの視点を持つことが必要と言えます。

[本文]

今回も、前回に引き続き、PRストラテジストの本田哲也さんのご著書、「ナラティブカンパニー-企業を変革する『物語』の力」を読んで、私が気づいたことについてご紹介したいと思います。同書には、ナラティブに基づいて成功した活動の事例として、サンリオピューロランドの取組が紹介されていました。「サンリオグループのサンリオエンターテイメントが運営する、サンリオピューロランドは、屋内型のテーマパークである。

天候に左右されないため、赤ちゃん連れのファミリーや、休日を利用して来館する大人のファンでも安心して楽しめることが強みだ。しかし、コロナ禍で、ファンの間からは、長時間、室内空間に滞在することに対する心配の声が上がっていた。そこで、サンリオエンタは、2020年2月21日に、同施設の臨時休館を発表、翌日には休館となった。(中略)それが3月23日、ツイッターで、『サンリオピューロランド公式』、『ピューロランド』が突如トレンド入りした。それは、ユーチューブ上の公式チャンネルに公開された動画がきっかけだった。(中略)

舞台裏を映したこれらの動画は、大きな反響を呼び、ピューロランドのファンのみならず、子どもの頃にサンリオキャラクターに慣れ親しんだ、多くの大人の心を揺さぶり、ツイッターでトレンド入りを果たす。このような大きな反響を得られたのは、エモーショナルで、SNSで拡散されやすい仕掛けが施された動画であることはもちろんだが、それ以前に、この動画を受容してくれるファンとのエンゲージメントが、すでに育まれていたから、と僕は見ている」(62ページ)

本田さんは、ピューロランドの成功の要因として、「ファンとのエンゲージメントがすでに育まれていたから」とご指摘されておられますが、私の意見も本田さんと同じです。サンリオエンターテイメントの社長の小巻亜矢さんが、幹部として同社の経営に関わることになったきっかけは、小巻さん自身が、当時、業績が悪化していたピューロランドを、顧客として訪れた後に、サンリオの辻社長あてに、「ピューロランドは可能性に満ちている」というレポートを出したことでした。

すなわち、ピューロランドの事業改善は、経営者としての観点よりも、ピューロランドのファンとしての視点から行われているという面もあると思います。もちろん、ファンの視点だけで事業の改善はできませんが、ファンとの関係を強化するには、ファンの視点が欠かせないということも確かだと思います。最近は、「顧客体験価値(カスタマー・エクスペリエンス、CX)」という専門用語を目にする機会が増えていると思いますが、これを実現するには、ファンとのエンゲージメントが重要であり、そのためには前述のように、経営者層がファンの視点を理解している必要があると思います。

2023/1/8 No.2216

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