ピンチのときは客観的な情報が重要
[要旨]
資金繰支援などを受けるには、自社の財務の状況が悪いなりに、詳細な財務データを示す方が、協力を得やすくなると考えられます。中小企業では、経営者の人間関係で取引をすることが多いですが、会社の状況がピンチのときは、客観的な情報の方が重要さを増します。
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今回も、前回に引き続き、スーパーやまとの元社長の小林久さんの、ご自身の分析による、会社が倒産した原因について、私が特に参考になると思ったものをご紹介します。それは、大手食品卸会社からの納品停止を予測できなかったということです。もう少し具体的に書くと、当時のやまとは、銀行から、融資返済のリスケジュールをしてもらったり、卸会社にも、商品代金の支払を猶予をしてもらったりしていたそうです。
そして、小林さんが予測できなかったというのは、大手食品卸会社は、しばらくは、やまとの味方になってくれると思っていたのに、予想以上にやまとの信用状況をシビアに見ていたということです。これを言い換えれば、大手の会社には、浪花節的な考え方はあまり通用せず、財務指標が重視されるということです。
したがって、もし、小林さんが、大手の会社の判断の仕方を理解していれば、メインバンクとともに、綿密に卸会社への協力の要請を行うことなどで、突然の納品停止という事態は避けることができたかもしれません。では、このような小林さんの失敗事例が、ほかの会社にどのような面で参考になるかというと、中小企業の経営者の方の多くは、自社のことは銀行や取引先が理解してくれていると考えがちだということです。
事業規模が小さいうちは、経営者の方の「顔」や「信用」などで取引をすることが多いので、経営者の方は、自社に対して支援を依頼する相手に対しては、客観的な財務データなどを示さなくても大丈夫と考えがちではないかと思います。でも、協力をする相手は、協力の依頼に応じるかどうかを判断するにあたっては、不透明な部分が多いと、ネガティブに考えてしまいます。
一方で、財務データを示してしまうと、余計に不安を大きくしてしまうかもしれないという懸念もあるでしょう。でも、協力を依頼する時点で、自社の信用力はあまり大きくないということを自分で認めているわけですから、そうであれば、協力を得るには、不透明な部分が少ない方が、相手の協力を得るために有利に働くと言えるでしょう。繰り返しになりますが、ピンチのときは、浪花節的な考え方は、あまり有効ではないということに注意が必要です。
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