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商品ではなく購買体験を販売する

[要旨]

ドン・キホーテは、商品を販売しているのではなく、他店では決して味わうことのできない購買体験、時間消費をお客さまに提供しているという考え方で事業に臨んでいます。しかし、そのように事業をとらえること、また、それができたとしても、それを実践するためのスキルを習得するためには時間を要することから、他社が同社に追随することは容易ではないようです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、ドン・キホーテ創業者の安田隆夫さんのご著書、「安売り王一代-私の『ドン・キホーテ』人生」を読んで気づいたことをご紹介します。「ドンキは、モノ(商品)ではなく、”流通”を売っている。ここで言う流通とは、生産と販売の間に介在し、それをスムーズにつなぐ付加価値のいっさいを指す。具体的に言えば、ドンキ独自の集荷・品揃え、見せ方、売り方、価格、各種プリモーション、店づくり、さらに商品担当者の思いなどである。

こうした”流通”行為が、モノに新たな命を吹き込み、他店では決して味わうことのできない購買体験、言い換えれば、時間消費をお客さまに提供している。これがドンキ最大の魅力であり、武器であり、そして本質的な参入障壁になっているのだ」(104ページ)この安田さんは、「商品ではなく購買体験を売っている」という指摘は、ほとんどの方が理解されると思います。ところが、業績が好調であるドン・キホーテに倣って会社経営をしようとしても、それを実践する会社は意外と少ないと思います。

その理由のひとつは、やはり、例えば、流通業は商品を販売するという考え方から抜け出して考えることができる人は、まだ少ないからではないかと思います。また、業種としては小売業であっても、会社の事業領域は購買体験を売ることであるということを理解できたとしても、顧客体験を提供できるようになるまでには、安田さんも一朝一夕ではできなかったくらい、難易度は高いものです。

だからといって、事業の強みを発揮するための取り組みを怠っていれば、ライバルとの競争に敗れてしまいます。繰り返しになりますが、自社の強みを発揮するための事業領域はどのようなものなのかを探究すること、そして、時間がかかってでも、その領域で事業を実践できるようになるための取り組みを続けることが、自社の競争力を高めるための方法であるということでしょう。

2022/6/5 No.1999

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