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家族のかたち

こんにちは、いとさんです。

アルゼンチンでは家族で会社を経営している人が多いようです。平日は家族全員で会社を切り盛りし、休みの日には家族が集まってasadoを食べる。家族の誕生日や父の日、母の日なども全員が集まってホームパーティーをします。アルゼンチン人は家族との関わりがとても深い暮らしをしているように思います。

日系人の方が日本語や合気道、お習字などを教えている公民館のようなところへお邪魔した時、沖縄にルーツを持つという女性と日本語で話す機会がありました。こちらには沖縄から移民してきた日本の方が多いようです。「日本では子供は巣立ってしまうと帰ってこないけれど、アルゼンチンでは違いますね。いつまでも一緒です。」そのようなことを仰っていました。

普段は仲が良い家族でも、もちろんすれ違うこともあります。家族はあなたのためを思って色々と口やかましく言ってみたりするのでしょう。でも時としてそれが迷惑に感じることもある。ちょっと煩わしいな、鬱陶しいなという気持ちを表現する時、彼らは“rompe bolas”と言います。これは迷惑な人や何かに対して使われます。似たような表現で“hincha pelota”と言う人もいます。これらは直訳すれば「ボールを破く、潰す」という意味ですが、どうしてそれが迷惑だということになるのか、今のところ私の感性ではまだしっくりきません。

例えば、お母さんから不急の電話がかかってきた時に“Que rompe bolas”と呟いてから、少し面倒臭そうに電話に出て”Que paso?(何かあった?)”と言うのです。するとお母さんは負けずに「やぁ、母上。ご機嫌いかがですか?くらい言ったらどう?」とやり返すのです。アルゼンチンで親子のこんなやりとりを目の当たりにして、ところ変われど総じてお母さんからの電話というものはタイミングが悪いなと可笑しく思いました。そして煙たく思うときはあれど、共に生きていくにはそういう瞬間も半分楽しみながらやり過ごすことも大事だなと感じるのです。

フランスでは宗教の兼ね合いもあって事実婚を選ぶ方が多いと聞きましたが、この頃はアルゼンチンでも事実婚を選ぶ若い人たちが多いようです。先日出産した知り合いの方も子供の父親である彼とは十年近く交際していますが、子供が産まれても入籍せずに、pareja ”パートナー“という関係でいることを選択しました。デートアプリなどを使って気軽にデートを楽しむアルゼンチン人ですが、いざステディな関係になると交際期間がとても長いケースが多いです。私のお友達は殆どが8年以上お付き合いをしている相手がいます。一度心に決めた人が出来ると愛情をたくさん捧げるのです。

余談ですけれど、あるプロレスラー達は自分の仲間のことをparejaと呼びますが、このparejaは時に同性同士のカップルが自分のパートナーを指す時に使うこともあるらしいです。日本語で言えば「相方」という感じでしょうか。表現方法に困ったときは、parejaと呼ぶといいのかなと思います。

家族のあり方や、心に留めている家族への想いなどは人それぞれ。指紋が皆違うようにどれも同じものはないのだろうと思います。出会って共に生きようと誓った相手と何かを育んでいく中で、思い描いている未来が違うと感じてしまうこともあって然りです。形やルールに縛られずと簡単に言いますが、それを実行するのはなかなか大変なことです。

アルゼンチンで知り合った人の中には、離婚した後でもお互いに行き来して生活を助け合いながら暮らしている人もいます。はたから見ていると家族にしか見えず、離婚していると聞かされるまで気づきませんでした。ある人から見れば、それは奇妙な家族の形と思えるかも知れませんけれど、また違うある人から見れば理想的な関係性かもしれません。家族とは他人に何か評価されるものでもないですし、他人には分かり得ない奥深いものがありますから、当人同士が幸せであること以上の正解はないのだと思います。

いとさん

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