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パレルモの石鹸屋さん

こんにちは、いとさんです。

ある日、アルゼンチン人のお友達の誕生日パーティーに招待されました。アルゼンチンでは主役が家族や友人を招いてパーティーを主催します。自宅で行われることもありますし、アパートに併設されている多目的ルームのような場所を借りる方もいます。この多目的ルームには、parrilla(バーベキューグリル)が備わっているところもあり、アルゼンチン流パーティーも楽しめます。主役の彼女は自らのパーティーを計画するために2ヶ月も前から私に声をかけてくれました。これまでの私の経験によれば、アルゼンチンでの普段の約束事はこれほど計画的であることはありませんので、彼女がよほど力を入れていることが良く分かりました。

お友達に良いプレゼントを選びたいと思いましたが、アルゼンチンのプレゼントの相場が分からなかったり、どういったものが好まれるか等、課題が多くプレゼント選びは難航しました。そこで持参していた「地球の歩き方2018〜19」をペラペラめくっておりますと、ブエノスアイレス市パレルモ地区に自家製石鹸のお店があることを知って、ある日曜日の午後に行ってみることにしました。

パレルモ地区は、おしゃれなお店がたくさん立ち並び、話題のスポットが多いところですが、大きな公園があってのどかな一面があります。Parque 3 de febrero(2月3日公園)に寄り道をして散歩していますと、観光客はもちろん、ブエノスアイレスに住む人達が芝生に座って家族とマテ茶を飲んでくつろいでいたり、数人が集まってエクササイズをしていたり、遠くの方ではマイク一本でパフォーマンスをしている人の周りに人だかりができていたりしました。「Paseo el Rosedal」という一角は、薔薇がたくさん咲いているエリアで、そこではその美しい光景と写真を撮ろうとカメラを構えた人が大勢いました。

御目当ての石鹸屋さんは歩いている途中に見落としてしまったようで、一度目は通り過ぎてしまいました。地図の場所を確かめながら、もう一度戻って慎重に進んでいくと、思っていたより小さい店構えでしたが地図が指す場所にちゃんとありました。辿り着くまでに寄り道してきたお店はどこも若い店員さんばかりでしたので、お店にそろりそろりと入った時に迎えてくれたのが初老の男性であったことに少し驚きました。

「誕生日プレゼントを探しています。」と言うと、幾つか箱を見せてくれて、その中から一つを選びました。箱には三つ石鹸が入りますので、店の中にずらりと並んだ石鹸を一つ一つ手に取って匂いを確かめながら選んでいきます。私が真剣に石鹸と睨めっこをしている間、私の買い物に付き合ってくれていた友人におじさんが色々質問をしていました。後から聞いてみると、私がどこから来たのか、と尋ねるので日本からだと答えると、「日本か!息子が新婚旅行で日本に行ったよ。俺も行ってみたいんだよなぁ。」と話していたそうです。日本を訪れたことのあるその友人は、恐らく日本について色々おじさんに語っていたのでしょう。

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そうこうしている間に、私は三つを選び終わりました。バラとラベンダー、それから確かカレンデュラを選んだ気がします。箱に詰めて頂いている間、おじさんに「お店の写真を撮ってもいい?」と聞くと、「俺の商売の真似をするなよ」と笑いながら承諾してくれました。

贈り物を選ぶ時間というものは、贈られる相手を思い浮かべながらその人の幸せをずっと願っている時間ですから、こちらまで幸せな気持ちになります。お誕生日パーティーが終わってずいぶんしてから「石鹸を使ったよ!とっても幸せな気分になった!」とわざわざメッセージを送ってくれた時は、すっかり自分が石鹸を贈ったことを忘れていましたが、再び幸せな気持ちになりました。不思議なものだなと思います。

今回訪れた石鹸屋さんは「SABATER HNOS」と言います。お店はスペインのバルセロナにもあるそうです。ご家族が経営しているのか、詳しくは聞きませんでしたけれど、いつかスペインを訪れることがあったら立ち寄りたいなと思います。

いとさん

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