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厳しい非正規の雇用減――5月の雇用情勢から|迷想日誌

令和2年から一貫して非正規労働者の雇用数減少がめだちます。
厚生労働省などがまとめた令和3年5月分の雇用情勢をみると、完全失業率(季節調整値)は3.0%となり、前月比0.2ポイント上昇しました。
男性3.2%、女性2.7%で、前月比は男性で変わらずですが、女性は2.3%から急増しています。
全体の完全失業者数は、前月194万人から204万人と、200万人台に乗りました。

コロナ禍の雇用情勢の最大の特徴は、非正規労働者の減少です。
令和元年までは年間で前年比45万人増と、長期増加傾向の波に乗っていました。
しかし、令和2年は、1月から一貫して減少傾向となり、年間では前年比75万人減となっています。

そして、令和3年に入って、1月から3月まで、前年同月比で毎月90万から100万人のペースで減少しました。
ただし、4月に20万人増、5月は16万人増と、なんとか歯止めが掛かったといえるでしょう。

これに対して、正規労働者は、コロナ禍にあっても順調に増加してきました。
渦中の令和2年でも年間35万人増、令和3年も全月で増加中です。
とくに3月は前年同月比54万人も増加しています。
これによって、非正規労働者の割合は、令和元年の38.3%から令和3年5月に36.7%まで縮小しています。

雇用者数を産業別にみますと、「宿泊業、飲食、サービス業」の落ち込みが最も多く、次いで「生活関連サービス業、娯楽業」「運輸業、郵便業」で減少がめだちます。
「製造業」「建設業」も減少しています。増加しているのは、「情報通信業」「医療、福祉」などです。

というわけで、コロナ禍にあっては、正規労働者を増加させて事業を継続しながら非正規労働者で調整してきたと考えられます。
パンデミックは、当然、一時的で早晩回復すると考えれば、基幹的労働者を十分確保して、回復に備えておく必要があります。

国としては、完全失業率3%を大きく上回らないよう雇用対策を弱めないことが重要です。
アメリカなどの経済政策と同様に十分な予算投入が、今後の日本経済を支えていくはずです。
財政上のプライマリーバランスを強調している時ではありません。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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