20200131迷想日誌

Society5.0時代への対応――経労委報告の注目点|迷想日誌

経団連が、2020年版の「経営労働政策特別委員会報告-Society5.0時代を切り拓くエンゲージメントと価値創造力の向上-」をまとめました。
雇用・労働問題に対して幅広い知見を提供してくれていますので、注目点を示したいと思います。

働き方改革や70歳までの就業確保への対応、さらに今季労使交渉の基本スタンスなどは当然重要ですが、日本経済社会の今後の発展を考えた場合、サブタイトルにもあるように「Society5.0時代」に雇用・労働分野としてどう対処すればいいかが最も気になります。
果たして、日本がポスト5Gを見据えた人材育成、企業育成を行えるかです。
30年続くデフレで、完全に5Gに乗り遅れたことは、次世代への負の遺産となってしまいました。

そこで経労委報告では、「Society5.0時代」にふさわしい雇用体系、労働時間制度、人材育成のあり方を提言しています。
このうち労働時間制度をみると、裁量労働制と導入があまり進んでいないといわれる高度プロフェッショナル制度の拡大を強調しています。
働き方改革フェーズ2の重要な視点といえるでしょう。

スペシャリストとして雇用される社員は、専門性ゆえに上司が具体的な指示をすることが難しいため、裁量労働制との相性が良いといえます。
自律的、主体的な働き方がイノベーションや高い成果をもたらすことは明らかです。
前回見送られた企画業務型裁量労働制の対象拡大の早期実施が求められますが、行政の取組みはのんびりしたものです。

日本型雇用も変容を強いられることになるでしょう。
イノベーションをめざしてキャリア形成を積極化する社員に対しては「ジョブ型」(「メンバーシップ型」と対照的な雇用区分)とし、今後は徐々に「ジョブ型」の雇用区分の比率を高めていくことが必要です。
企業の意思決定から切り離すぐらいの自律性を与え、併せて成果に見合った適正な処遇とすることです。

日本はこのままだと、三流国あるいは途上国経済水準に落ちていく可能性が否定できません。産業界には、ポスト5Gに向けて世界の先陣を切れるようチャレンジしてもらいたいと思います。
労働行政も躊躇せず迅速な制度改正を行っていくべきです。再び世界に乗り遅れたら明日はありません。

労働新聞編集長 箱田 尊文

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