病気の君 ショートショート#29

部屋の中にメトロノームのような音が響く。
一定間隔でなる甲高い音。
君の真っ白で透き通るような肌。
正面から見るのは初めてだ。
そして、これが最後。
この告白が成功しようが、しまいがこれで最後。
君は今日でどこか遠くへいってしまう。
もう会えることはないだろう。
遠い未来に逢えるだろうか。
いや、君と僕とでは行き先が違うだろう。

君への想いを全て打ち明ける。
君が好きだということ。
今の君が好きだということ。
部屋の中でニット帽を被っている今の君が
好きだということ。
そんな僕は最低だということ。
さようなら、もう2度と逢えることはないだろう。
お別れを告げるように部屋の中に甲高い音が
ずっと鳴り響く。
僕は退室し、その場を後にした。
「案外、すぐに逢えるかもね。」
そう言って僕は屋上へ向かって走っていった。

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