まん○だら○の面接に行った話

 私は、世でサブカルチャーと言われてるものが好きであることをなんとなく後ろめたく思っていたから今までサブカルっぽいところでバイトしようとは考えなかったのだけれど、ふとその自意識が私の邪魔をしているのではないかと思い、サブカルの聖地でバイトをしてみようという気になった。なってみた。からそうと決まれば、すぐ応募。なにやら志望動機や身分を書く欄があったので、雑な動機(「ヨッまん○だら○!」)を書いて、ノリノリでベットで寝そべってとった自撮りを貼り付けて、送信。
 そんなの誰も見てないし、結構気軽に決まるもんだろうと思って、猛スピードで、「買い物ブギー」歌いながらチャリこいで面接に向かった。

 るんるんで宇宙基地みたいなオフィスのピンポンを鳴らすと、なんかわちゃわちゃしたパートのおばさんが出て書類書けというから余裕しゃくしゃく。ささっと書いて「これからよろしくね」を待っていると、さっきのわちゃおばではなく、まんだらけ正社員であろう男の人がやってきた。なんだ?ちょっと汗やら垢やらが混じった匂いのするこのまん○だら○にリーマン?

 優しそうな顔でその男が「こちらに」というので、いそいそとついていくと、そこに3人の大人がパソコンの前にコの字にして待ち構えている。…やられたッ!殺される!バタンと扉が閉まり、私はコの穴の部分に座らされた。まんだらけの大人たち。怖いに決まっている。まんだらけのあのシャカシャカを着て、わたしのふざけた志望動機と自撮りを印刷して持っている。見られないと思ってかなりバカバカしい内容を書いてしまったあの書類。ああ…後悔。とてつもなく情けなさを感じる。穴があったら入りたい…そんな私の気持ちをしっかり無視して、大人たちが順番にドンドン質問をしてくる。あの先ほど案内をしてくれた相席スタート山添似の男、無機質なメガネをかけたインテリ男、ベリーショートで小柄な40代の女(萩尾望都とか好きそう)、クンニがめちゃくちゃ上手そうな髭面のザまんだらけのアングラ男。全員が全員、真面目な顔でこちらを向いている。「サブカルが好きなの?どのジャンルが好きなの?なぜ好きなの?きっかけは?」「職歴は?スナック?なぜ?」動揺してはいけないのはわかっていても動揺するよ。「え…っさくらももこ先生のことが好きです…。宮沢章夫さんの80年代論が好きで、そこから影響を受けてます…本で見て作品を知って…ああガロとか、山田花子とか…。漫画ブリッコなどエロマンガ研究してました…」「スナックは街を知ることができます…」もうホント私はタジタジで。自分の声がいつもより大きな音で頭の中に響くのに、自分が何を喋ってるのかわからない。ぐるぐるとまわる。「そのメガネは何?スナックでは客によって対応変えるの?顔覚えるの?将来何をしたいの?何かなりたいものがあるの?」ああ、私のことを知ろうとしている。わたしに何をみたいんだ?「メガネはエロいかなって思って…」ああ、早く逃げたいと思う反面、どうでもよくなってきた。「わたしはさくらももこになりたかったけど、なれないから、さくらももこになれなかったやつの人生を…何にもなろうとは…そんなことは…思っていません。」私の特別な人が言っていたことを引用して、「なんの因果かマッポの手先で…よくわかりません…」と答え、面接終了。絶対に落ちた。いいから、はやくあなた方が回し読みしているそのくだらない書類と自撮りを捨ててくれ。

 調子に乗っていた罰がこんなにわかりやすい形で下るとは。ホントに…ね。自分の逃げ場だったのにも関わらず、だらだらとサブカルに甘えていたから…サブカルチャーからの逆襲。完全にやられた。もっと真剣にサブカルに向き合うべきだったのだろうか…知らないよ…バイトじゃん…ひどいよ。あの人たちあの後わたしのこと笑ってんだろうな…また恥だけかいてなにも事が始まらず終わってしまった。これからどうなってしまうんだろう?すごい明るい気持ちでバイトの面接に行ったのに真っ暗にさせられるとはね…。みなさん、これからも私と一緒に私を追ってくださいね。

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