未熟な“偽善ちんぽ”を許さないスナック

 その日のスナックもs子さんがリーダーの日だった。松さんというたまに来るスキンヘッドの歯が汚いおじさんが、若い男の子2人と自分の双子の弟を連れて来た。その日にたまたま若者2人組に居酒屋で絡まれたので、初対面にも関わらずスナックに連れて来てみたんだと言う。まっさんと双子の弟は、その若い男の子2人に「スナックを教えてやる!スナックの作法は…」と心底鬱陶しいスナックおじさんをやっている。しかし、その若い男2人は、チャラい!とてもチャラいから、おじさんには目もくれない。受け流しと言う名の無視。

 若い男Aは、ボサノバ。ドレッドヘアにでかい体。大麻がどうのこうのと言っていたし。21歳だそう。海外から最近帰って来たらしい(ボンボンっぽい)でもこのAは、実際情けないカンジで女には甘えるタイプだろうなと推測。音楽が好きなそうで、Queenが好きらしい。
 若い男B。こいつが本当にくだらない。すごく顔が良い。とにかく顔が小さい。アメリカの血が入ってるどうのこうのと言っていた。センター分けヘアで高めのブランドのポロシャツ。綺麗めのチノパンにイン。私立のバカ大学1年生。こいつはモテることしか考えておらず、本当に表面的なことばかりカッコつける。そして自分がモテること、顔がいいことを自覚しており、とても調子に乗っている。

 最初に私がついた時、この若い男2人は「おねえさんエロすぎおねえさんたまんね〜」と言う。初めの方は、私も気分いいのでおすましをしている。しかし、こいつらは、「俺をみろ!」のエネルギー量が尋常ではない。やんややんや騒ぎ立て、お世辞を言い、自分の髪を触ったり、酒をたくさん飲んだり、若いアピール。そして、とてつもなくつまらない冗談を言う。(何を言っていたか覚えてもいない)面白くないから私が冗談と認識出来ず、笑わないでいると「おねえさん笑って〜」などと笑顔を強要してくる。
 ムカつくからますます全然笑わないでいると、Bの方が、「じゃあおれ歌いまあす!」と言い始め、「やっぱお姉さんたちはあ、vaundyとか好きっすか?」と。「いや、きみのこと知らないからきみが好きな歌をうたってほしい」と言うと「くぅ、接客がうまいっすねえ〜!で、ひげだんでいいすか?」イライラ…。何も答えないでいると、歯の汚いおじさん(兄)が、吉幾三を歌う。「これがスナックなんだよ!」とまだ言っているが、吉幾三はとてもよかったので拍手。すると、Bが、「こんなん誰もしらないっすよ〜(笑)ねぇ?おねえさんたち〜」と。すると、BがAに耳打ちをし、Aが仕方なさそうにデンモクを手にする。

「島人ぬの宝」

 そしてBが大声で「イーヤーサーサー!」他の人たちにも言うように促す。あぁこの予定調和的な、形式的なそれ、そう“チンポの偽善”が私には許せない。このようにして、私のイライラはどんどん溜まっていった。(スナックの店員としてはどうかと思うけど) 

 Bが、私に、何を歌って欲しいかしつこく聞くので「斉藤和義」と言うと、Bは、「ずっと好きだったんだぜ」を歌い、「こういうのが好きなんっすよね?俺わかってるんすから!」とドヤ顔を向ける。あと、「キミ」などの二人称的なフレーズが出てくると私たちの名前を当てはめて替え歌してくる。無視をしていると、他に一緒についていた女性、23歳関西出身のえみさん(新入り)が、きちんとBに反応をする。(仕事してる)

 Aのボサノバの方が、レディオヘッドが好きだと言い、creepを歌う。Bは、「こんなしらけた歌うたうなや〜スナックで歌う歌じゃあないだろう」と言う。(イライライラ)

 ここまで私は沈黙を貫いて来た。しかし、これ以上調子に乗らせるべきではない!と判断をし、「そんなんでイケると思うなよー」などの野次を合間合間に飛ばし始める。Bは、困った顔をし、「おねえさん、椎名林檎っぽーい」などズラして茶化す。そしてまた、えみちゃんが歌の合いの手を入れるなどのフォローを重ねる。これ以上こいつの好きにさせるわけにはいかないんだよと、私はお門違いにもえみちゃんに「チッ」と思いながら、お茶を飲む。Bは、ここで私に向かってとんでもない発言をする。

 「お姉さん、母子家庭ですか?ぼくそうなんです…おんなじ雰囲気がするから聞いたんですけど。」こいつは本当にダメだとここで私は確信する。

「濡れない、きみ本当に濡れないわ!」

 偽善ちんぽはポカンとしている。
すると隣の卓で一連の流れをみていたs子さんは、私に向かって「りんごちゃんいいね!いいよ!サイコー!よくやった!」
すると、他の女の子たちもめちゃくちゃ笑っている。(みんなの笑顔が集まった!)

 Bは、やっとしょんぼりちんぽに。さっきまで無視していたはずのスナックおじさんの方に逃げた。(勝った!)そして、最後に私とs子さんで、「長く短い祭り」を歌いながら踊る。

 歯の汚いスナックおじさんたちが、「もう帰るぞ、いくぞ!おい!」と、お金を払い、2人を連れ帰って行ったのだった。 退店。

 我がスナックの存続を心から願います…。






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