少年の友達ができた話

仕事仲間は多いけど友達は少ないんです。

そんな僕に友達ができました。
出会って1ヶ月。数回しか会えなかったけど、あの少年は間違いなく友達だと言い切れます。


海の家の仕事に携わったものの、はっきり言って営業中は時間がないからお客さんと仲良くなるなんて難しい。
女の子を口説くのも一苦労だ。

そんなある日、中の仕事を任せて僕は呼び込みをしていた。

ナンパの延長でしか声かけできないので、女性スタッフに「ロッキーさんって若い女性しか呼び込み成功しないですよね」なんて言われながら頑張ってたわけよ。

店内で流れるEDMに合わせて踊りながら店先にいると、僕に合わせて踊る少年と目が合う

「いいね!おいでよ、かき氷でも食べよう!」

「あとでねー!」

そういう少年と気まずそうな母親、そして一緒に歩いていく他の親子。

まあいいや。なんて思いながら呼び込みを続けていると、1時間もしないうちにさっきの少年と仲間たちがやって来た。

母親の「じゃあかき氷ください」との言葉が言い終わる前に、少年は店内で踊っていた。
実に夏らしい。

店内の砂浜で遊んだりチ○コ出して遊んだり、かなり賑やかに遊んでくれてたな。

帰宅時に母親から受け取った「また来ますね」を、僕は素直にキャッチできていなかったかも。

それが僕とケイくんの初対面。
夏は7月の後半に差し掛かっていた。


8月のある日
「来たよー!」
の声とともにケイくんが来店。

当時忙しさからメンタルがやられていた僕はめちゃくちゃ嬉しくて、水か汗かわからないビチョビチョのケイくんを思い切りハグした。

母親の「あ!ケイの服濡れてますよ!」という言葉が言い終わる前にハグをしていた。

その日から僕とケイは友達になった。

友達と、時には親子だけで、ケイは何度かかき氷を食べに来てくれた。
俺はかき氷作るの下手なんでバイトの子に作ってもらってたけど。

「ロッキーさん、ケイくん来てるよ!」
バイトの子のセリフが嬉しかった。

ふとした時ケイの母親から聞いた「お兄さんに会いたいってはしゃぐのに、お店に来たら大人しくなるんです。照れてるんですよね」が可愛くて仕方ない。


「ロッキーさんって海が終わると寂しいですか?」

「どうだろうね」

そんな会話をバイトとしてるとき、ふとよぎったのがケイのことだった。

「あれ?ケイともう会えなくね?」


ケイはまだ子供なんだ。
連絡先も知らない、9月から俺は江ノ島にいないし、海の家も解体しちゃう。
そもそも俺は来年はいない可能性が高い。
ケイと会えないよね。

8月31日
ケイが来るって言ってた気がしたけど、来なかった。
一日中待ってたけど来なかった。

その日はいろいろあって飲んで帰ったが、その帰り道に
「ケイくん来なかったですね」とバイトに言われて泣きかけた。

翌日の9月1日
通常営業を切り上げてスタッフ間の打ち上げ
僕は仲のいいスタッフと別の場所で飲んでいた。

「そろそろ打ち上げ行こうか」

そう言って向かっている最中に店から電話が

「ロッキーさんに会いに来てる男の子がいますけど、今どこですか?」

急いで向かうと、そこには照れてるケイ。
なぜかいつも以上に照れてるケイ。

すると母親が「ほらケイ、渡すものあるでしょ?」と。

モジモジしてるケイから渡されたのは、ありがとうの言葉と手紙だった。

「ごめんな、俺泣き虫だから」

そう言って涙拭ってる俺を不思議そうに見るケイと周りのスタッフ。

そら泣くわ。友達との最後なんだから。

その日はケイの父親もきてくれた
「よく話聞いてますよ」って

俺が芸人してること
コンサルだけど来年はいないこと
ケイのこと本当に友達だと思ってることを両親に伝えた

一緒に写真撮ってバイバイ。

多分もう会えないことをケイは知らないだろうし、別に知らなくてもいい。
俺とケイがお互いを友達だと認識した夏は本物だから。

帰りに母親と話してると

「もともと日曜日って来れないんですよね?」

「もともとは。今日は最後なんでお休みもらってきました」

「ケイに、たぶんお兄さん今日いないよ。って言ったら『手紙渡したいから、いないなら預ける』って言ってたんできました。いて良かったです」

だってさ。


俺の友達はいいやつだな。


あなたの優しさを僕も世間への優しさとしてサポートして行きます!お金ください!