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Rock Fusion

Billy Cobham - Spectrum (1973)

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 ロックは面白い。ひとつ知ると次に次に進むべき道が見つかる。アルバムを聴くと誰それの凄さやその人の他の作品や参加した作品、果てはプロデューサーやエンジニアまで食指が伸びる。その内誰と誰が組んでいる、スタジオ名やレーベル、事務所まで関係性が見えてキリがない。時間さえあれば相関関係を繋げて見えてくる。そこまで行くとロック「学」になるが、もう体系的に纏められても良い時期に来ていると思うが、所詮はロックだ。

 ビリー・コブハムのソロ作第一弾「Spectrum」。マハビシュヌ・オーケストラを抜けた1973年、ライブアルバム「虚無からの飛翔」の後脱退してすぐにソロアルバム作っている。ビリー・コブハムがあの熱気を求めている事は想像に難くなく、またその勢いもあってリリースしたソロアルバム「Spectrum」は素晴らしい。しかも揃えたメンバーはマハビシュヌ・オーケストラ時代の同僚ヤン・ハマーとぶっ飛びのインパクトのトミー・ボーリン。リッチー脱退後のディープ・パープルに参加したトミー・ボーリンです。リッチー以上のギタープレイを持ち合わせていた人なのにディープ・パープルでトミー・ボーリンのギターを知った人は不幸かもしれない。

 冒頭の「Quadrant 4」を聴くとぶっ飛ぶ一曲で、マハビシュヌ・オーケストラの狂熱の様相を描くようにトミー・ボーリンがビリー・コブハムとヤン・ハマーを相手に白熱して弾いてます。相当の覚悟とテクニックとセンスが無いと無理だと思う。この一曲に限らず、ドライブ、グルーブしながらロックジャズのフィールドで個性を出し切り、他のメンツと張り合える才能が出てる。とんでもなく激しいぶつかり合いのマハビシュヌ・オーケストラとクリソツな音世界がビリー・コブハムのソロアルバムだから驚く。もっとロック界に広く知られるべきアルバムの一つ。

Bozzio Levin Stevens - Situation Dangerous (2000)

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 テリー・ボジオとトニー・レヴィンに、もう一人意外な参加者スティーヴ・スティーヴンスのトリオによるBozzio Levin Stevenのセッション名でCDリリースしてます。1997年にリリースされたファーストアルバム「Black Light Syndrome」は4日間だけの集中レコーディングによるセッションで、十分に各プレイヤーの技量は発揮されているけど、圧倒的に完成度の高い2000年にリリースされたセカンドアルバム「Situation Dangerous」の方が良い。

 スティーヴ・スティーヴンスのギターが正に本領発揮と言わんばかりで、ハードロック面から逸脱したシンセサイザー的なギターの使い方や「Spiral」や「Tziganne」のフラメンコギターに驚く。元々好きなのか、モノホンのフラメンコギターで、凄く心地良いサウンド。そこにプロフェッショナルなボジオのドラミングでフラメンコギターに華を添えている。更にトニー・レヴィンが良い感じでベースライン弾いてて刺激がある。

 他の曲はギンギンにハードな路線が多いけど、スティーヴ・スティーヴンスよりトニー・レヴィンとボジオの方向性で特にトニー・レヴィンのベースに圧倒される。ボジオはさすがだし、トニー・レヴィンもクリムゾンで鍛えられているので当たり前だけど凄い。

CAB - Cab (2000)

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 ロックの世界にはジェフ・ベックがいるから少々のハードフュージョンと呼ばれるギタープレイは驚かないが、ホールズワースは宇宙人だ。スティーブ・ヴァイだと理解出来るけど、古い時代からギターの可能性を追求するプレイヤーは他にもいて今に始まったことでもない。フュージョンはダメだからその先のハードフュージョンも手を出さないまま聴いたトニー・マカパイン。

 2000年にベテランテクニシャン二人とセッションを実現したCABの「Cab」。有名なバックの二人を従えてのセッションアルバムでギターを弾きまくってる。音聴くとフュージョン系の特徴的な音でのジャムセッションで、メタルも出てきた後だから融合している。プレイヤー達も音の刺激を求めて楽しんで進化した。このアルバムもプレイヤーのテクニックは楽しめるが、楽器の演奏を楽しむ世界だから曲の魅力はそれほどないが、十分堪能できるレベルの作品。

Planet X - Moonbabies (2001)

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 Planet Xプロジェクトの2001年の2枚目の作品「Moonbabies」。Dream Theater好きな方には多分普通に知られているけど、Dream Theaterの鍵盤奏者が自身のソロアルバム経由でテクニカルなミュージシャンを集めてプロジェクト化したバンド。変拍子の嵐とテクニックの応酬を存分に楽しめるが、70年代好きにはUKや後期ソフツ、Brand Xの超絶ミュージシャンによる変態セッションバンドのインスト。ギターにトニー・マカパインが目立つアルバムで、ベーシストが多数ゲストで迎え入れられている。鍵盤奏者のデレク・シェリニアンも目立つけどトニー・マカパインの確かさと流れるソロワークが見事。

 どうやったらこういう変態的な曲をサラリとバンドではなく、セッションミュージシャンの集合体で出来るか不思議。音を理解して他のプレイヤーに信頼感があってリズムとラインを感じ取って自分のプレイをするアドリブの応酬は分かるんだけど、かっちりと決まっているけどヘンでアドリブも入って展開していく曲は凄い。譜面見ているにしても、あれだけキメが入るから記憶してるだろう。そういうテクニカル面を夢中になって見るけど、音だけでは飽きるので、ライブ映像見てる方が良い。

Steve Morse - High Tension Wires (1989)

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 スティーヴ・モーズが1989年にリリースしたソロ名義のセカンドアルバム「High Tension Wires」。害のない環境音楽です。アル・ディ・メオラみたいに白熱した一本気なギタリストでもなく、美しく爽やかに軽やかに、眠りを誘うインストアルバム。この人の場合はソロもあり、ディキシー・ドレッグスもあり、そしてこのアルバム以前ではカンサスにギタリストで参加していた事もあり、その後はパープルと実に忙しい男だ。しかも一旦は音楽業界に飽きてパイロットやってたから面白い経歴。

 ディキシー・ドレッグスは何枚か聴いたけど、特に好まなかったし、今回の「High Tension Wires」も環境音楽なので何回も聴かない。パープルも聴いてないが、ギタリスト的進行から久々に漁ってみた。

Victor Wooten - A Show of Hands (1996)

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 ベーシストが本領を発揮するのはあくまでも楽曲の中のフレーズのひとつでしかない面とプレイヤーのテクニック披露もある。それぞれの活躍するフィールドによってその凄さの伝わり方は違うけど、リズムが素晴らしいという人もいれば指さばきが凄い人もいる。それでもベース一本で名を挙げる事は難しく、ジャズやフュージョンの世界でも多くないし、ロックの世界もそうだ。ところが全ベーシストから一目置かれる人もいて、ジャコパスもその一人だけど、現代ではヴィクター・ウッテンも超絶。

 アルバムよりYouTubeのベースプレイを見てもらう方が早いけど、1996年からソロ名義のアルバムを幾つかコンスタントにリリースしてて、それぞれ作風が異なるけど、このファーストソロアルバム「A Show of Hands」はベース一本と歌声程度で作られている。普通は飽きる所だが、ヴィクター・ウッテンにはあり得ない。多彩なテクニックと音色を持つ超絶超人ベーシストで、リズムもメロディもハーモニーも同時に奏でつつ、更にはスラップを駆使して正体不明なプレイを繰り広げてくれる圧倒的変態。ベースを聴いてるだけで楽しめる世界なのでロック野郎も味わってほしい、この超絶さ。

 そんなテクニックとユニークさを持ちつつもメロディセンスや歌心的なトコロも豊富に持ち合わせていて、ベースでもハーモニックスとタッピングを組み合わせてメロディ展開したり、その時でもベース音は鳴らしているから何本ものベースが同時に鳴ってて不思議なくらいに豊富な音色が聞こえる。一人ミュージックマシーンになってて情感豊かにベース特有の味わいのある柔らかな音で多彩なフレーズを紡ぎ出してくれてる。楽器演る人なら圧巻な素晴らしき作品。

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