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Pink Floyd #1

Pink Floyd - The Piper At The Gates Of Dawn (1967)

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 ファーストアルバム論がちょっと気に入ってしまったので、もうちょっと続けたいなと、ピンクフロイドも一つの方向性を明確にしたバンドとして語れるでしょう。シド・バレットが在籍したまともなアルバムはファーストアルバムしかないけど、このファーストが後のシーンを代表する作品になっているところが凄く、以降ピンクフロイド的サウンドを突き進み、名作「狂気」を生み出すが、その原点はやはりファーストアルバムにある。

 単純に云うならシドがいなければ「炎」はなかったしロジャーの偏執的なこだわりも生まれなかっただろう。やはりサウンドの軸としても非常に斬新且つピンクフロイドサウンドを明確にしている。デビューシングル「See Emily Play」で聴かれる、ポップさの中に妙な浮遊感を持ったサウンドで、後の小曲郡に脈々と受け継がれているし、当然ながら「星空のドライブ」は「狂気」手前までのフロイドサウンド=サイケデリックサウンドの代名詞的曲調になっている。ヘタすりゃアマチュアバンドがそれらしくやっても出来てしまう音だけど、その辺のバランス感覚がバンドの面白いところ。それで、話は変わるけど、シドがダンエレクトラのギターを持って演奏しているUFOクラブでのライブ映像は、まさしく衝撃的な閉ざされた空間でのライブだし、ジョン・レノンやヨーコの姿も見られるけど、サイケデリック、アシッド空間の最先端にピンクフロイドが位置していた点も彼らの存在価値を高めていた。本来であればピンクフロイドは表に浮上してくるバンドではなかったはずだと感じる。でも、これだけ多くの人に受け入れられている事実は彼らが人間の本質を表現しているので、やはりポップな音楽だけでは語れないことの象徴。その辺はジョン・レノンも然り。ジミー・ペイジもこの頃のシドのライブを見て同じダンエレクトラのギターを手にしているのも面白い話。

 アルバムに話を戻すと、正にサイケの象徴とも言える「Astronomy Domino」で幕を開けて、恐ろしいほど心地良いポップさの中にどこか歪んだサウンドが濃密に詰め込まれていながらも浮遊するサウンドに身を任せる、任せてみたくなる狂気が間違いなく宿っている印象。これはシドのファーストソロアルバムで更に顕著となっているし、精神論はピンクフロイドの中に確実に種が蒔かれていた。他に影響を与えている面は大きいけど、フロイドのアルバムの中ではもっとも聞きやすい印象ながらもっとも重いかもしれない作品。難しい。作ってる側はLSDの世界だし、ジム・モリソンが叫んでいた「向こう側の世界」の住人なので常人には理解しきれない面がある点も事実。だからフロイドアルバム史の中でも割とまともに語られにくいアルバム。こればっかり聴いていたら結構あっちの世界に近づけるのかも。怖いけど。

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