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Jaco Pastorius & Weather Report

Jaco Pastorius - Jaco Pastorius (1976)

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 ベースが注目を浴びるのはロックに限った事ではないが、ロックフィールドにいる人間に訴え出てる人はあまりいない。ジャズの世界も凄いベース弾きいるけど、普通にロックを話している中では名前も知らない感じ。しかし、ロックの世界でも多くの人が知っているジャコ・パストリアス。

 ベース一本で世に出てきた人で、ベーシストならこの人の名前が出る。ベースを最大限に活用して単品でも音楽が成立する事を証明した稀代の天才。ファーストアルバム「ジャコ・パストリアスの肖像」は超絶速弾きにもメロディーセンスもロック界で云えばヴァン・ヘイレンのギター並みのインパクトがあった作品。当時在籍していたウェザー・リポートのジャコ・パストリアス期の「ヘヴィー・ウェザー」が良い。ジャズではなくフュージョン系列のサウンドは好みではないが、この人のベースは関係なしに聴ける。

 波瀾万丈で破滅的な人生送ってケンカで35歳で死去。ロックのベースとは違って音にエッジが立ってなく、滑らかにベースラインが歌っているので、パーカッションと絡み合うと心地良い。ウェザー・リポート時代はバンドのアンサンブルにこのベースが入るので更にスリリングでライブが凄い。


Jaco Pastorious, Pat Metheny, Bruce Ditmas, Paul Bley - Jaco (1976)

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 軽快に聴くジャズ、アドリブプレイを存分に楽しむジャズ、音楽的実験色を強く試す機会のジャズ、実に様々なジャズの手法があり、そこまで意識しないとジャズの不思議さが募る。そもそもロック聴いてる人達はどこまでジャズを真面目に聴くか。昔からジャズは聴いていたものの、単に心地良い理由が大きく、ロックと違う世界に身を委ねたい面が大きかった。

 Jaco PastoriousとPat Metheny、Bruce Ditmasを引き連れてのPaul Bleyリーダー作の「Jaco」。1974年録音の1976年リリースで、この時点ではまだジャコもそこまで知名度は無い頃。パット・メセニーもデビュー前で、アルバムリリース時にようやく知名度が多少ある時点。ブルース・ディトマスもこれがデビュー作に等しいからフリージャズの第一人者のポール・ブレイ主導のECM作品に若者たちが貢献した状況。時代が流れた後は逆の現象だが、ポール・ブレイのフリー電子ピアノ感覚は凄い。この人、カーラ・ブレイの旦那さんで納得。ポール・ブレイの発展的才能のピアノの弾き方はアバンギャルドで前衛的でありながらテンション高い旋律を叩き出している。ジャコの圧倒的フリーランニングベースプレイがぶっ飛びモノだが、更に突出しているブルース・ディトマスのドラムが凄い。この若き時点でフリージャズドラムが叩けるどころか超絶プレイ。

 この二人に比べると出遅れているパット・メセニーのプレイは後のプレイスタイルが完成されていない時点のセッションか。ハイレベルな取り組みで見事なフリーセッションを繰り広げて、電子ピアノの旋律にも対応しているが目立ちにくい。ジャコが凄すぎるからか。じっくり聴くとパット・メセニーのプレイもピアノと差がないくらい鳴っているが、その後でジャコがもっとブリブリやってるからそっちに耳が向いてしまう。とんでもないセッションアルバム。音楽的にリラックスする聞き方を望む場合は聞けないアルバムだが、聴いているウチにこのテンションの高さに惹き込まれてしまうメンツのプレイ。ジャケットもタイトルもジャコリーダー的な売り方になっててカッコ良いが、中身も素晴らしい作品。

Jaco Pastorius - The Birthday Concert 1981

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 Jaco Pastoriusの発掘ライブ作品「The Birthday Concert」。1981年12月1日、ジャコの30歳の誕生日にフロリダで開かれたライブを記録した一枚が1995年にリリースされた。全盛期のジャコ・パストリアスに加えてマイケル・ブルッカーも参加しているスリリングなライブが聞けそうだ。

 冒頭の紹介からゾクゾクする感じで開始して軽快にメンバーがソロを取って自己紹介的にスタート。ここで既にご両人はきっちりと目立って決めている。ジャコのベースはホントに心地良い。歌心のあるベースプレイでバックにもなるけどリードでもあり、メロディアスに弾かれるプレイで本能的に弾いているようにしか聞こえない。ラインをなぞるプレイには聞こえないから、実際どこまで出来ててどれだけその場のプレイだろうか。

 ビッグバンドなくせにベーシストが引っ張ってて、これだけのメンツを参加させてるリーダーともなれば準備も大変だが、ブリブリとプレイしてて相変わらず。全ての音に余裕と自信が感じられる美しきプレイで、既にフュージョンは超えていて、ジャズともロックとも言えない世界へ突入している充実したライブ。ジャコを聴く時はエモーショナルで染み入るからライブ盤を聴いてしまう。

Trio of Doom - Trio of Doom: John Mclaughlin Jaco Pastorius Tony Williams (1979)

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 フュージョンは聴かないし好みでもないけど、その後色々な音楽を聴いて、ジャンルを気にせずにミュージシャン単位で考えると敷居は下がった。ジャコパスも知らなかったけど、ロックの世界もジャコの世界も大して変わらないと気づいてからは、ジャコパス好きになった。

 発掘音源の1979年に行われた「Havana Jam」のライブ音源。ジョン・マクラフリンとトニー・ウィリアムスとジャコパスの即席ライブで気になる世界。ジョン・マクラフリンもロックサイドな人だから、フュージョンアルバムではなく、クリームみたいにぶつけ合ってるプレイと期待満々で聴いた。

 裏切らない。静と動とテーマとそれぞれの技量が棲み分けされて構築されている世界で、単なるジャズやロックのぶつかり合いではなく、フュージョンに在住するプレイヤー達の了承の中で構築されている。ロックやジャズだこうも綺麗にメリハリ付けられないから一味違う。もうちょいと楽器同士のぶつかり合いが欲しかったロック的願望はあるが贅沢な話の強烈なセッション。

 聞きかじり情報だけ書いておくと、「Trio of Doom 」は前半がキューバのハバナ・ジャムのライブセッション、後半はその前後の同じ曲のスタジオセッションでいずれも貴重なジャムとプレイで、燃える事間違いなしの作品。

Jaco Pastorius - Word of Mouth (1981)

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 ロックの世界しか知らなくてもジャコ・パストリアスは聴いた方が良い。ロック以外の人でもジミヘン知ってるみたいなもんだ。ジャコパスはやっぱり例外で、1981年にリリースされたセカンドソロ名義アルバム「Word of Mouth」。

 冒頭からぶっ飛びのベース。紐解くとジャコパスのベースラインだけを聴かせて各プレイヤーに自由にプレイしてもらって、それぞれはお互いの演奏を聴いていない状態のレコーディングでミックスしたセッション。だからかなりアヴァンギャルドでフリージャズになってるけど、それよりもジャコのベースにぶっ飛ぶ。この人も色々な側面を持ってて、ベースプレイヤーもあるけどビッグバンドもオーケストレーションもクラシックもロックも好きと判る。

 客寄せに書いておくとビートルズの「Blackbird」をやってますが、普通は理解不能。。人によっては原曲に忠実らしいが素人には意味不明なくらいには崩されてて、かなりスペイシーな世界にいるがジャコらしい味付け。次のアルバムタイトル曲「Word of Mouth」も衝撃的。ジャック・ブルースやジョン・エントウィッスルの世界に近くて、もっとスペイシーでメロディアスだが、まずは聴いてほしいアルバム。楽器触る人なら普通にKOされるし、これまで散々聴いてた人も聴くとぶっ飛ぶ世界。

Jaco Pastorius & Word of Mouth - Truth, Liberty & Soul 1982

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 ジャコのライブアルバム「Truth, Liberty & Soul」が発掘リリースされたが、冒頭からぶっ飛びモノで凄い。このライブに限らないけど白熱してるライブ。この世界は1982年頃がピークで、当時は興味なかったから意識しなくて、ロックを漁ってたけど、テレビでもやってたし耳に入ってきたからブームだった。

 Jaco Pastorius & Word of Mouthを従えた1982年ニューヨークでのライブを記録した2枚組。言う事なしの全盛期で、バンドの一員ではなく自分の名前を前に出したバンドだからビッグバンドながら圧倒的にジャコ・パストリアスがベースを弾いてる。ベースを最大限に発揮したリズム、メロディー、音色、そしてプレイスタイルもあらゆるパターンを披露している恐るべしパフォーマンス。バンドメンバーも超一流だからすべてのアドリブやプレイに追随して煽ってるし、自身のソロパートになれば圧倒的パフォーマンスを繰り広げてる素晴らしきライブアルバム。

 ジャコ・パストリアスはロックの世界の人に近い。フュージョンの人ではなく、ジャズだけでもない、あらゆるジャンルから好かれるスーパーベーシスト。これだけ弾いてて疲れないのか、指が動き続ける事が不思議なくらい白熱したプレイが軒並み続く。最後は趣味の世界に至るジャムセッション。そういえば1985年のニューヨークではこの曲にジミー・ペイジが参加したセッションもあった。1982年のライブの方が圧倒的なプレイで絶対に後悔しないライブ盤。

Weather Report - Heavy Weater (1977)

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 ジャコパスの存在に接するとロックとジャズ、フュージョンの境目が曖昧になる。音楽にジャンルは関係ないと言うが、ある程度のカテゴライズはない必要だ。ミュージシャン側も困るから言葉としてはあるべきだと思う。ジャンル概念がなかったら表現できないし、ジャズ系ロック系と会話のために必要。それがジャコパスの場合は境界線が曖昧だから困る。ジャック・ブルースみたいなベースではないジミヘンみたいな人だけどベースだから、唯一無二の存在感はその人自体が名詞になるけど、どこまで有名か。ジャコパスなら知られてるか。

 Weather Reportにジャコパスが参加しているアルバムが聴きたくて、1977年の「ヘヴィー・ウェザー」をチョイス。アルバムだから最初から進むと、物静かなムード音楽フュージョンサウンドが続いて、到底ロック的な視点からは退屈な曲が流れてくるから参った。ジャコパスのベースは分かるし変態的だが、まだバンドの志向をぶち破るほどではなく、バンドに刺激を与えたレベルでしかない。それだけWeater Reportがしっかりしたバンドでベースだけ聴くなら楽しめる。ジャコが作った「Teen Town」はイントロからハッと目が覚める曲で異質な音が聴こえる。

Weather Report - Mr.Gone (1978)

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 時代はクロスオーバー、正にジャズとロックの融合体のフュージョンが全盛期となり、ロック側からもジャズ側からもテクニカル志向なプレイヤー達が集まってバンドを組んだりセッションしたりとリスナーを楽しませるが、まずは本人達が楽しむスタイルが出来上がった。出自はそれぞれで色は付いているけど、ジャコはロックと思う部分あるし、なかなか頼もしい時代だった。

 80年前後のロック側からフュージョンへアプローチが盛んな頃、その前に同じ取り組みをしていたフュージョン系のWeather Reportの1978年の作品「Mr.Gone」。ジャコ・パストリアス在籍の全盛期のアルバムで悪いはずもなかろう。そもそも背景も知らないフュージョンの世界へジャコパスだけの繋がりだけで聴いている。このアルバムは評判は悪いようだが、聞き所は満載で、ある種ロック側の何でもあり感覚からしたら楽しめる。ジャズ側からはダメかもしれないが。

 アフロやテクノと方向が定まらない中のテクニカル集団のプレイだが、ソロプレイも充実してなくて散漫になっている作品。ロック的に言えばSoft Machineの中期の作品の雰囲気で面白い。ロックは何でもありだが、ジャズはきちんとしてないとダメか。故にこのアルバムは、バンドはジャズ系所属ながら音はロックに属する作品。

Weather Report - 8:30 (1979)

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 友人とギター談義してて、最近またギターが楽しくて弾きまくってるらしいけど最初は昔の自分のギタープレイのレベルに戻したいと思ったらしいが、この年齢で今から弾くギターは昔の自分と同じ路線ではない、別の路線を突き進む方が上達の道で、新たな挑戦でもあり、今の自分に合っていると。簡単に言えばブルースロックをもう一度弾くんじゃなく、もっと新しい要素を自分なりに加えて異なるロックギターを弾く方向に進むようだ。凄く納得感あって、聴く音楽も志向も考え方も変わってきてるから弾くギターの路線も変わると。

 ジャコパス聴いたらもっと聴きたくなって、Weather Reportのライブ盤「8:30」を。フュージョンは好まなかったからアルバム聴かないし、ライブはテレビを夜中に小さい音で見てたくらい。フュージョンは軽い先入観しかなかったが、「8:30」やジャコパス聴くと明らかに自分の概念が違う。プログレやジェフ・ベックの延長で、更に言えばアドリブプレイとテーマの融合はジャズの世界だけど、電子楽器も入るから英国ジャズ・ロックと似た世界で、こっちの方が垢抜け爽やか感ある。楽器の音を楽しむ点に徹底している所がここまで激しい応酬になるか。

 このレベルの白熱ぶりやフュージョン嫌いを覆すほどのインタープレイを聴かせるバンドはまずない。Zeppelinのアドリブプレイと比較したら大抵Zeppelinの方が凄い。Weather Reportの「8:30」は次元が違うけど、緊張感溢れるプレイヤーの息遣いと空気感、テーマに沿ったプレイと戦いぶりの応酬はスリリングでドキドキする楽しみがある。ロックの世界ではないところから同じエナジーを出して来るから凄い。ジャズメンからはロックはガキの音だけど、ロックからしかモノを見てなかったから、こいつらフュージョンのくせにカッコイイじゃないかと逆に思う。

 そんな偏見やめて普通に聴くとぶっ飛ぶカッコ良さとプレイ。楽器やってる人には楽しいアルバムで、こんなテンションのライブ出来たら人生楽しいだろう。

Weather Report - Night Passage (1980)

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 Weather Reportの1980年リリースの作品「Night Passage」。ジャコ参加最後の作品が一番大きいけど、ウェザー・リポートのファンからはこのカルテットの演奏が最後のアルバムになる。だからこそこのアルバムの演奏が一番の名盤な人も多い。スタジオ盤だけの比較ならそうなるかと思うけど、熱気のあるアルバムでジャコ好きな自分からは少々おとなしい。それでもソロは弾きまくって、バンドアンサンブルは良く出来てるからバンドの音してる。演奏陣のテンションの高さは半端ないし、ひとつづつの音の出方に情が入ってるから、ウェザー・リポートも面白く、ロック好きからも楽しませてもらえる。

 まだウェザー・リポートを整理して聴けていない。Spotifyで色々アルバムがあるから纏めて一気に聴いても良いと思ってて、ジャコ時代のメリハリは聴いてその過程を楽しんでおきたい。

Weather Report - The Legendary Live Tapes 1978-1981

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 フュージョンにはハマらないと思ってたけど、聴くと凄いから聞き入ってしまうWeather Reportのライブアルバム「The Legendary Live Tapes 1978-1981」。4枚組だけど凄い。ジャコパスのベースが好きだから新しいライブ盤も聴きたくて。凄い熱気とテクニックと迫力で、ロックのエナジー的にぶつかってくる演奏の凄まじさ。それでもライブではなくジャムセッションを録っただけだから凄い。半分くらいは日本のライブで嬉しいが、どこでもこのレベルのライブ演奏していた時期だし、バンドの一体感も半端ない。今の時代にここまで出来るライブバンドもメジャーシーンにいないかも。しかもスーパースタークラスのプレイヤーばかりが集まってるぶっ飛びなバンド、音、センス、見事。

 フュージョンに括られてたからおかしな話になるが、ロック畑から入るフュージョン。Brand XやUKあたりが対抗馬だが、Weather Reportの凄さはそれ以上。プレイヤーが技を競い合うバンドだからある種楽曲の良さを気にしなくても良く、楽曲の良さはプレイヤーの演奏力が引き出す認識のプレイ。

Weather Report - Weather Report '81 (1982)

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 エレクトリック楽器でジャズから派生したメロディを奏でながら楽器の旋律でぶつかり合うスタイルは元々ロック連中が取り込んだスタイルだが、そこをまたジャズ連中がアプローチしてフュージョンとなり、ロックと似たように各種融合を果たしていつしかアンプのボリュームを上げて演奏するライブにも発展した。ウェザー・リポートの80年代はジョー・ザヴィヌルとジャコ・パストリアスが音のデカさを競ってライブを繰り広げ、ロックと同じく疲弊していった矢先にジャコ・パストリアスがドラマーのピーター・アースキンと共にバンドを離脱する。ここでウェザー・リポートの黄金時代が潰えてしまったが、その最終作となった1981年に録音されたアルバム「Weather Report '81」。

 リリースは翌1982年だが、ファンからは脱退前提のアルバムだから熱量が少ないとの反応で、イマイチ評価も低い。その評をどことなく知ってたから自分が聴く時も後回しになってしまったが、聴けばまるでそんな評判は関係ない程のアグレッシブなプレイだった。ジャコ・パストリアスのベースは最初からこれまで以上にブリブリ弾かれてて、ピーター・アースキンのソリッドなドラミングと共に強烈な印象を放っている。楽曲の出来映えとスリリングさ加減のテンションはやや低めと同意するが、それでも相変わらずの高品位な楽曲が奏でられて、バンドメンバーの演奏のぶつかり合いや旋律の試し合いも存分に味わえるスタイルだから何ら問題なく良いアルバム。ここまで来ると確かにロックと変わらない演奏スタイルと曲調で、丁寧に演奏されている面と歌がないだけで大いにロックシーンに出て来ておかしくないクォリティ。

 10分以上にも及ぶ「N.Y.C」のメドレーもジャコ・パストリアスのベースが強烈で、相変わらずのウェザー・リポート節と安心して楽しめるし、スリリングさも当然出ているのでアルバムレベルで素晴らしい作風。これまでの作品が120点だから本作で100点は低いと言われるような評価だ。自分がそこまでウェザー・リポートを聴いて楽しめるようになるとは随分と大人になったと実感するが、妙なプログレよりはスッキリしていて聴きやすい楽器のぶつかり合いで、大いに楽しもう。


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好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪