はぐれコピーライターが勝手に編み出した、ポートフォリオ編集入門
居酒屋ですれば説教になる。
noteに書けばコンテンツになる。
なんなんですかね。歳のせいなのか。あるいは決算前にして過去最高の業績が確定して(社員たちのおかげだから自慢しときます!)気が抜けてしまったのか、はたまた半年以上にわたってディレクションとコピーワークを担当していた「八王子ブランドメッセージ」のプロジェクトが一段落したからなのか……妙に自分の経験を言語化することに熱が入ってしまっています。
ここ最近書いてきた フリーランスと「生々しい経営」について にしても、それでも会社を辞めてしまったひとへ にしても、 「脱社畜」の向こう側に潜む「ブラックフリーランス」という闇 にしても、しょっちゅう居酒屋で話してきたことではあったんです。
でも、気がつけば僕も四十路。僕が若いつもりでしゃべっても、ほとんどの言葉は説教くさくなってしまうんですよ。はっきり言って老害ですよね(汗)。でも、こうしてnoteで文章にしてみると、すごく広がるし、いろんな感想も聞こえてくるようになる(中には無料記事なのに投げ銭してくださる方まで!)。これはまあ、言葉で商売してきた人間にとってはけっこう楽しいモノなんですよね。
ってことで、今回はポートフォリオを編集目線で組み立てていくというお話しです。因みに元ネタは7年くらい前に京都のロフトワークで実際に僕が企画構成&MCを担当したワークショップからの抜粋です。
「ポートフォリオ」という言葉から、
「つくる目的」を考え直してみる。
さて、僕は一応、コピーライターなんですけど、コピーライターとしてよく使う小技のひとつに、プレゼンテーションを組み立てるとき、そのプレゼンのテーマの語源を調べ、そこからアプローチしていく……というヤツがあります。今回のポートフォリオについてのお話は、この「語源から入っていく手法」がぴったりだなと思ったんで、まずはそこからはじめてみます。
はい。クリエイターを中心とした一般的な(?)理解の中では、2の「作品集」という意味が主流だと思います。でも、まあ、投資とかやってる人はご存じでしょうけど、元々、ポートフォリオ(portfolio)というのは直訳すると4の通り「資産構成」となりまして、これを意訳してしまえば「クリエイターの価値を示す構成物」ってことになるわけです。
つまり、過去の実績をただまとめておけばいいというわけではない。「構成」することで、「価値」を感じさせないといけない。ということになります。ここまでOKですか?
同じ実績のラインナップでも
見せ方次第で印象も価値もガラッと変わる?
僕はこれでも7期続く(微妙な歴史の)会社の社長なので、面接だって経験してます。それなりにポートフォリオを見てきたと思いますし、なによりフリーランス時代はポートフォリオと口先だけでリーマンショック以降の焼け野原を生き抜いてきた男です(なんのエビデンスにもならねえ!)。
そして僕は元々編集者ですし(おまえの昔の仕事なんて知らねえよ!って方が大半でしょうけど怒らないでくださいね)、今でも一般のメディアではないものの、企業のカタログ、パンフレット、ウェブサイトやオウンドメディアなど、さまざまな「構成物」の企画・編集を数多く手がけています。そんな僕なので、ポートフォリオを見る基準は以下の3軸に分かれます。
1.コンテンツ(実績の内容)がどんな感じか?
2.構成(見せ方)がどんな感じか?
3.デザイン(見た目)のクオリティがどんな感じか?
まあ、普通は1に注力しがちですが、デザイナー志望の学生や、プロのデザイナーさんは特に、2と3にも気を配るわけですよ。でも、コピーライター志望の人とか、特にこのあたりがヤバいと感じてます。ただひたすら、講座で書いた1〜2行のキャッチコピーがプリントされただけの白い紙の束を延々と見せられたとき(それでもキラッと光る人はいるんですよ)、かなりの確率でよくわからない感じになってしまう。
2の構成とは、つまるところ、「プレゼンテーション」としての流れを意味しています。もっっっとわかりやすく言えば「会話の組み立て」ですね。面接や営業のシーンで、どんな流れで話せば、「より自分のことを理解してもらえるか?「自分の強みが伝わるか?」。さらに言えば「相手が求めている人材やリソースはどんなものなのか?」が意識されていたら、当然ながら、作品や実績を並べる位置・順番も変わってきますし、「作品や実績とバックグランウドにある企画意図などの情報をどう見せるべきか?」ってことなんかも見えてくるはず。つまり、実績やスキルを見せるポートフォリオそのものから、編集力とかプレゼン力、コミュニケーションスキルまでが透けて見えてしまうと言うわけです。ええ。怖いですね。
ポートフォリオ編集の3大要素
さて、それではどんな風にポートフォリオを編集していくべきなのか。あくまでも僕が勝手につくったメソッドですが、ざっくりポートフォリオを編集していくための「3大要素」をご紹介しましょう。
例えば特殊な技法を駆使した個性的なイラストを売りにしている人がいるとします。その人が「自分のテイスト以外の仕事はしたくない!」と考えているなら、まずはド頭からバシッと「質」を追求した自信作・代表作を持ってきて、ぐいぐい押していけばいいと思います。その作品の「質」がいくら高くても、ある程度の「量」は必要です。ポートフォリオを見る人は、その人のキャパシティや安定性、スピード感も推し量りたいので、自信作が1枚だけでは「こいつ大丈夫か?」となってしまうからです。あと、気をつけたいのは「量」と「幅」を混同しないこと。「幅」はあくまでも「質」のバリエーションなので、無節操に見せまくるとやりたくない、苦手な仕事がいっぱい来ることだってあるわけです。
「自分のテイストはそれなりにこだわりがあるけど需要が多くはないし、他の仕事も欲しい……」というデザイナーさんだったら? 駆け出しのフリーライターだったら? 就活生だったら? など、いろいろ当てはめて話を展開していくことは可能ですが、追い炊きした風呂のお湯が冷めておくさんに小言を言われるのが嫌なので、「3大要素」にかぶせるかたちで目的軸で見た基本的な編集方針をつくっておきました。これ見て各自で考えてみてください。
「幅」についてもう少し詳しく触れておきます。特に僕みたいな節操のないオールラウンダータイプは、「サイトに載っていた○○のお仕事みたいな感じでお願いしたいのですが……」といった依頼のされ方もよくあります。それはつまり、実績に「幅」がある(ように見せている)と言うことなんですよ。
面接や営業で使うプッシュ型のポートフォリオは、トークでカバーもできますけど、ウェブサイトを使うプル型のポートフォリオの場合、ターゲットとなる「仕事をくれそうな人たち」は、自分が頼みたい案件にフィットするスキルの持ち主をサーチしているはずです。
でも、そのものズバリな実績がある人間なんてそうそう見つからないので、ある程度近い実績を重ね合わせて、「この人なら頼めそう」というイメージを膨らませてからお問い合わせをくれたりするんですよね。だから、特にいろいろな仕事にバリバリ挑戦してみたいという方は「質」以上に「幅」も重要視すべきだと思います。
実績はまるで星座のようでもある
もう一方で、これはほとんど意図的に構成することはかなり無理ゲーなんですけど、こっちが狙っていないにも関わらず、「あなたならこれができるのではないか?」みたいな角度から、思いがけなくおもしろい、かつ、自分が活躍できるような案件が飛び込んでくることが希にあります。
僕で言えば、スタートアップのサービス開発周りで言葉遣いのツールを策定するという案件や、B to Bのポータルサイトの検索窓の設計とか、そういったコピーライターとしては謎の仕事がそれに当たります。
依頼者の方は確信に満ちた顔で、「森田さんなら」「Rockakuさんなら」と、声をかけてくる。僕は一度も、そんな実績を発表したことはないし、そもそも経験したこともないにも関わらず。です。
この現象は、過去の質が異なるバラバラの案件を、あたかも星座をかたちづくる星のように観測して、線で結んで、見えてなかった図像をイメージしていくような感じなんだと思ったりしています。
いずれにせよ、依頼者の想像力(想定力)のおかげで、仕事の幅が広がった……なんてケースはよくあります。まあ、こうした幸運な出会いを意図的につくり出すことは超難しいわけですけど、でも、強く輝く一等星のような「質」の高い作品や実績を、信頼性を担保する「量」の中で、バランスのいい「幅」をとりながら配置していくことで、確率を上げていくことはできると思ったりします。
全然実例とか出してないっすけどね
というわけで、今回はこんな感じでおしまいです。これで実際のポートフォリオのサンプルとか見せあって、講評なんかできるとワークショップとしてはなかなか価値が出そうなので、そういうのやりたいというメディアのイベント担当さんとか、社内研修担当さんとかいたら、お気軽にご連絡ください。企画・構成・ファシリテーションまで一通りできますんで。例えばこんなセミナーやイベントに出てきました。
・宣伝会議 Webライティング実践講座(約9年間)
・OpenCU(ロフトワーク主催/テーマを変えつつ約5回ほど出演)
・CSS Nite (銀座、青森、静岡などに出演)
・京都精華大学デジタルクリエイション学科(特別講義2日間)
・スクー
・日本ディレクション協会(特別講義)
・独立行政法人中小企業支援機構(地方での単発セミナー)
・仙台市広報セミナー(年1回の半レギュラー)
・contents nagoya(イベント出演)
・エンタミナ5(プレゼンパフォーマンス/イベント出演)
・コトカレ(京都学生広報部/特別講義)
・テクトモ(クラウドワークス主催/イベント出演)
・三越伊勢丹(社内研修)
・ビジログ(中小企業庁主催の人材育成事業)
・その他住宅業界、自動車業界などの研修講師多数
はい。これもある種のポートフォリオでしたね。ええ、今回もきちんと「自分の宣伝」で落としました。それじゃあ、お風呂に行ってきます。
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