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インタビュー経験が文章力の基礎になる5つの理由

はじめに

ども!基本的に「noteはいつも久しぶりの投稿」でおなじみの森田です。
「◎つの理由」って自分で書いてみると結構恥ずかしいですね……でも、敢えてこのまま書いてみます。

さて、今年の夏、数年ぶりに新人くんを迎え、いっしょにごりごりお仕事をしています。

ウチの会社はコピーや企画やライティングを生業にする会社でして、基本的にスタッフが書いたものを僕か他のスタッフが確認・フィードバックして、可能な限り磨き上げてから提案・提出していくスタイルを続けています。(そんなに特別なことではないと思いますが)

新人くん以外のスタッフはそれなりに社歴があるので、このやりとりも慣れていますが、新人くんとのやりとりはなかなか新鮮で、いろいろなことを見直すきっかけになったりもしています。

その中で、芸歴約20年の自分にとって、文章力やボキャブラリーの源泉って何だったのだろうか?ということを考える機会が増えました。そこで思い当たったのがインタビューの仕事。考えれば考えるほど、インタビューには文章力や語彙力の基礎が詰まってると気づきまして。で、たまにはそういう話をコンテンツにしてみるのも良かろうと、水星の魔女の最新話を観るのを後回しにして筆を執った次第です。


1_人間の肉声と、読みやすい文章との違いがわかる

いきなり遡りますが、そもそも僕が初めて「印刷物になる原稿」を書いたのは大学時代でした。多摩美術大学という八王子の秘境にある学校になぜかほぼ作文だけで入学してしまい、絵を描くことは好きだったけど、周囲は「地元で一番絵が上手かった」クラスのヤツらだらけで、「自分のアドヴァンテージは文章だ!」と決めつけることでしかプライドが保てない状況にありました。(不思議と同じ試験を受けた同じ学科の仲間たちはあんまり文章の仕事してないけど)

そんな中、芸術祭(美大の学園祭)の季節がやってきて、もともと本をつくることに興味があった僕は、実行委員会のパンフレットの制作部署の門を叩きました。そこで持ち上がったのがOBインタビューという恒例企画。当時、武蔵美の教授でありながら、多摩美の特別講師でもあった東北新社・中島信也さんの担当ライターの座をゲットしました。

で、ひとまずインタビュー自体は無事に終わったんですが、その後が地獄。生まれて初めてのテープ起こし(本当にカセットテープを部室に捨ててあったラジカセで再生しながら)に挑戦したわけですが、1時間ちょいの音声を文字起こしするのに1週間くらいかかりました。

ここで、無知な森田くんははじめて気づくんです。

「人間がしゃべったまんまを文章にすると文法めちゃくちゃなんだ!」と。

これ、中島信也さんの名誉のために書いておきますが、トーク力も内容も素晴らしかったんですよ。わかりやすいし、聞いててワクワクする様なお話でした。でも、人間はほぼ誰もが文法に則らずにしゃべり、それでも聞き手は、ちゃんと理解ができるんです。嘘だと思ったら、試しに誰かと5分くらい世間話したのを録音して文字起こししてみてください。

前後の文脈から主語や目的語が省略されてたり、重要な単語を脈絡無く3回言ったり、不思議な倒置が起きてたり、「あー」とか「うーん」とかが混ざり込んだり……でも、それが話し言葉の味であり、空気感でもあり、インタビュー記事の読者が期待してることでもあるわけです。

森田くんは頭を抱えました。頭を抱えながらも、そして技術が無いながらも、「文法的な正しさ」と「その場の空気感」のバランスをいかにとるかに悩んで2週間ほどかけて記事を書きました。


2_「何を切るか?何を活かすか?」を考えざるを得なくなる

結果としてその記事のできがどうだったかはもうわかりません。印刷物が残ってないので。でも、このとき体験した文字起こし1週間+編集・推敲2週間で、森田くんはさまざまなことを学びました。

まず、「会話」と「文章」には別のルールが存在していること。「会話」は「文章」の素材にはなっても、そのままでは読めるモノにはならないと言うこと。そして、そのまま起こすととんでもない文字量になるということ。

アナウンサーが1分間かけて読む文字量はおよそ300文字くらいだとどこかで聞いたことがありますが、その説が正しいなら1時間で単純計算で18000文字になります。実際のインタビューでは、その場で思案しながらしゃべってもらうこともしばしばですし、規則正しい速度でしゃべるわけでもないので、20000字くらいいくのはざらです。

そうなってくると、当然、「何を切るか?何を活かすか?」という工程が必要になってきます。


3_「読解力」が飛躍的に向上する

この工程こそ、文章力の肝になる経験と知見ではないか?と思うんです。取材で話を聞いたのは自分。その内容の「生」の魅力を体感したのも自分。その「生」の魅力を活かしながら、いかにわかりやすく、読みやすくするか?

この工程を世間一般では「編集」や「推敲」と呼んだりします。これも「書く」という自分の耳で聴き、自分の手で書き起こした膨大な文字量の対話を繰り返し読み解き、主題を見抜き、(文章として)無駄な言いまわしや言葉遣いを探し出しては切り、現場の空気感を読み物としてのリズムに落とし込み、徐々に整えていく。

そう、「書く」という作業の半分くらいはこの「編集」や「推敲」だったりします。つまり、自分で書いたものを自分で「読解」するってことでもあるんです。ふつーに考えたら、読解力は「読む量」に比例して高まっていくと思いますが、膨大な文字量を「読み解きながら書き直しながら読み解きながら書き直しながら……」という「編集」「推敲」のプロセスを経験することで、飛躍的に高めることができる。はずです。責任は持ちませんけど。

4_「問いを設計する技術」が身につく

その後、紆余曲折あって、大学をギリで卒業した森田くんは、編集プロダクションや広告制作会社を経て、ドロップアウト……もとい、独立してコピーライターの会社をつくることになるんですが、独立当初からコンスタンスにあったお仕事のひとつがインタビュー記事の制作でした。

しかも、多くは採用サイトや会社案内に載せる社長さんや社員さんへのインタビュー。当然、広義の広告なので、個々の記事には明確な目的や意図があります。つまり、ある程度は「訴求したいこと」「解決したい課題」が存在していて、それを生の声として発信するという部分に意味があるわけですよ。

例えば、「就活生に自社の福利厚生の手厚さを知ってほしい」とか「新規事業への挑戦に共感してほしい」とか。だとすると、そういうエピソードを引き出す力が求められる。で、その力ってなんなの?というのが「問いを設計する力」なんです。

「どう聞けば、よりいい素材が手に入るか?」

これって、インタビュー取材のみならず、コピーはもちろん、企業理念づくりや商品のコンセプトワークでもめちゃくちゃ生きる技術です。つまり、その先の、さまざまな「書く仕事」につながっていくというわけで、やっぱりインタビュー取材の経験が文章力にもたらす影響は大きいと思うに至ります。


5_「生の言葉」に触れて語彙力や知見が強化される

それから、忘れてはいけないのは、インタビューって、普通に暮らしていたら巡り逢わないであろう、まざまな人たちの生の声、生の言葉に触れる機会にもなるってこと。

本やネット以外で、自分の知らない視座や考え方に触れる。これは副産物的ではありますが、それなりに重要なことなんじゃないかなって思ったりする次第です。

ということで、ここまでで約3000字、1時間半。
水星の魔女の続きを観て寝ます。


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