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何事もなかったように

 鬼の頭にミサイルが突き刺さって3本角のように見えていた。
「人にやられたの?」
 君はかわいそうな鬼にたずねた。
「……」
 かわいそうな鬼は答えなかった。何か遠慮しているのか。人間のことが怖いのかもしれない。

「痛みはあるの?」
「ああ……」
 かわいそうな鬼は呻くように答えた。
「治るの?」
「……」
「痛みはどれくらい?」
「うん」
「どんな痛み?」

「ほっといてくれ!」
 突き放すように鬼が叫んだ。

「心配しているのに」

「なかったことにしたいんだ」
 だから言葉にしてはならないと鬼は言った。
 ずっと遠くを見なければならないと……。
「ああ、そうかい」


疎ましい
他人野郎と
一線を
引いて心の
戸締りをする

折句「うたいびと」短歌


#小説 #短歌 #折句 #鬼

#エッセイ #おせっかい #多様性

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