生きた仮説

「生きるということは、通りすがりの猫に竹輪をあげるようなものだ。出会うことは幸いかもしれない。でもそのあとは」
「そのあとは」
「君は猫の明日を知ることはない。猫は君の行方を知ることはないのだ」
「だから……」
「出会うが故に抱え込むものがあるということだ」

「わからない。どうして竹輪なの?」
「それは物の喩えじゃないか」
「喩え?」
「トータルで理解してほしい」
「どの道わからないな」

「わかったか」
「わかりません」
「わかったようだな」
「ちっともわかりません」
「ようやくわかったようだな」
「何もわかりません」

「それが正解だ」
「まさか?」
「そう。君はわからないということを理解したのさ」
「わからなくていいの」
「私の話はまだ仮説にすぎない」
「なんだ、それじゃあ……」
「私だってよくわかっておらんのさ」


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