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シャドー・ナイト(大逆転将棋)

 取りたいところをがまんしてじっと金を引く。辛抱の一手が続いていた。さて、次は取るのかというとなかなかそうもいかない。相手は更に厳しい指し手を突きつけてくる。手に入れたいところをがまんして、じっと歩を謝らなければならないのだ。辛抱の時間が続く。
 取りたい駒(取れそうで取れない)があふれている。前に出たい駒がつかえている。自分の手番は一手置きにくるはずなのに、私は自分の本当に指したい手をしばらくがまんしている。耐えているのに笑っていられるのは、楽しみを多く残しているからだ。今だけ厳しい手なんて、その内に燃え尽きてしまうだろう。
 相手の攻めは一手も緩むことなく、辛抱の末に自玉は詰んだ。

「負けました」
 その瞬間、相手の頭も垂れた。
 私は待望の手番を生かして、反撃の一手を繰り出した。

「投了したのでは?」
 投げたのは影武者だ。
 詰んだのは影武者の玉だった。


#小説 #ショートショート #将棋 #楽しみ

#負けました


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