見出し画像

おあずけ

「まだ。まだよ」
「うー。もういいんじゃねえの」
「まだ!」
「なんなん。どうせ食うんじゃん。何の意味あんの?」
「意味とか言うんじゃないの」
「えー。なんでなん」

「犬は犬らしく言われた通りにしてればいいの」
「犬らしくあるより、僕は僕らしくありたい」
「生意気言うんじゃないの」
「だって僕は僕なんだもん」
「かわいくないぞ」
「かわいくなんてなくていいもん」
「そんな風に育てた覚えはありません」

「じゃあ、もう食う!」
「待て! 待て!」
「えー。なんで待つの?」
「最後までちゃんとできたら教えてあげる」
「ちゃんとできるよ。知ってるじゃん」
「ならちゃんとしなさい」

「ちゃんとするのは簡単なんだから」
「だからそうすればいいのよ」
「ずっとしてるって」
「そう。お利口ね」
「嫌だ。もう食うから」
「まだ駄目よ」
「もう食う」

「待て!」
「うー。うー」
「待て!」
「うー……」
「はい。よし!」
「いただきまーす!」

永遠に
届くことない
詩情にワン
クリックで今日
さよならをする

折句「江戸仕草」短歌


#短歌 #掌編小説 #小説 #待つ

#詩 #ショートショート

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?