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道場破り(将棋メシ)

 好敵手との対戦に疲れて道場の床に伸びていた。この戦いによって感覚は破壊され、世界観はまるで変わってしまったようだった。時刻は23時を大きく回っている。なのにこの道場の大盛況振りはどうしたことだろう。みんな家に帰らないのだろうか……。しかし、自分はもう限界だ。

「帰ります」
「800円です」
 と席主が言う。
「食べたぞ」
 誰かがすぐに僕が出前を取ったと告げ口をした。その料金がまだ未払いになっていたのだ。
「310円です」
 すると逆に料金が下がった。
 定食屋のセット割が適用されるという。

「大丈夫か?」
 その後、道場の中は定食屋の安さの話題でいっぱいになった。味はよくて、量も普通以上だった。それでいて料金の驚きの安さ。どういう商売をしているのやら。
「ありがとうございます」
 明日はあのデタラメ振り飛車を破ってやる。
 それにしても、僕は今夜自分が食べたものが思い出せないでいる。


#夢 #小説 #将棋 #出前 #振り飛車破り #セット割

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