見出し画像

寿司道

すぐに消えてすぐに現れる
儚い形が好きだった
消えたと思えば現れる
逞しい形が愛おしかった
チョコレート おかき
葡萄 キャンディー
猫 愛情 お話


「いらっしゃい」
古びた暖簾の寿司屋に
飛び込むのが好きだった

「へいお待ち! イカです」
はじめに頼んだのはイカ
シャリの上に伸びたイカ

「伸びがいいでしょう」
大将自慢のイカは皿から伸びて
店の外にまではみ出している
それは私の好みとは少し違う

「端から行っちゃってください」
シャリを置いて伸びすぎたイカは
隣の町へと通じているという
手をつけずに見下ろしていると
店外から雀がイカの上を渡ってきた

「へいらっしゃい!」
来るものは拒まず
ウェルカムな店らしかった

「これはいただけません」
この寿司はもう道じゃないですか!


#掌編小説 #小説 #寿司 #道

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?