狐のへりくだり

「いつもつままれさせていただいております」
 どうぞどうぞと紳士は腰が低く無防備に見えた。
 どうもパワーが出ない。苦手なタイプだ。
 化かしが発動しないと狐は思った。
 ドアのない金庫は破ることもできないのだ。
 どこかにもっと見下してくれる者はいないのか……。
 それならどれだけ自分の力を出せることだろう。

「ちょっと休まさせていただいております」
 人間みたいな言い回しをしている自分を狐は恥じた。
 獣度が日に日に薄まって行く。


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