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【小小説】ナノノベル

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2020年1月の記事一覧

私たちの台本

私たちの台本

「昨日はじめて宇宙人を見てね」
「へー」?
「よさげだったよ」?
「……」
「……」

その先があるのかと思いきや、
どうやら何もないようだ。
あなたはそれきり黙り込んでしまった。
私は相槌を間違えたようにも思う。

私たちはそれぞれに見えない台本を持ち合っている。
共通の台本を持てば、次がどちらの番かは互いにわかる。
それによって会話は円滑に進んでいく。
けれども、台本を読み誤れば台詞に穴が空く

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二人の会話(花と散る)

「人脈を広げることはいいことだが」
「ああ。しかし広げすぎたかな」
「あれだけいたらおかしなのも交じるよね」
「まあ、あとになってわかることだがね」
「やたらと真実を求めたがる者がいるんだよ」
「真実なんて偉くないのに」
「その通りだよ」
「本当に偉いのは私たちだ」
「そうそう」
「記録にも記憶にも残らないようにできる」
「うん」
「それが私たちの力なんだ」

(誰か呼ぼうや)
「最初に言い出した

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