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窓の女(ダイナミック・ウィンドウ)
「すみません。ラッキーストライクください」
「ごめんよ。うちはうまい棒と消しゴムの店だよ。何味がいい?」
ランドセルを背負った少年は何も買わずに帰っていった。
「はい、いらっしゃい」
青年は酷く調子が悪そうだ。
「夕べから熱っぽくて……」
「食前に1錠、朝夕2回2週間分出しとくよお大事に」
薬を受け取ると青年はせき込みながら帰って行った。
「いらっしゃい」
次々と客が押し寄せる。この街
今日と明日のルーティン
「お急ぎの方、お先にどうぞ!」
「お次の方、ちょっとお待ちください。只今、大急ぎの方がいらっしゃいました。大急ぎの方、お先にどうぞ!」
この店は行列のできる大繁盛店。私はいつも列の後方に並んでおとなしく順番を待っている。どれだけ早く来て列に並んだところで、必ず自分の番が訪れるとは限らない。なぜなら、世の中には急いでいる人が多すぎるからだ。
「無茶苦茶お急ぎの方、真っ先にどうぞ! 少々お待ち
相談将棋 ~純粋に水をさすもの
儚い1分をつないで永遠をつくることだってできる。許されるならずっとそうしているのかもしれない。読み耽っている間は歳を取らず、風邪を引くこともない。徐々に棋士の縦揺れが速くなっていく。前のめりとなり勝ち筋を追求しているに違いない。遠目には何もしていないように見えて、実際には壊れるほどに動いている。脳内を占めているのは、玉を中心に存在する世界。そこには蠅1匹として入り込むことはできないのだ。純粋であ
もっとみるライブ(真夜中の肉食獣)
人の数だけ理想の形はあるのではないか。ある人は音楽などなくても何も困らない。だが、ある人はロックがなければ息もできない。ある人にがらくたであるものが、ある人には不可欠だ。しわわせとは、飢えを満たすことではないだろうか。俺の飢えは、あなたの飢えとは違う。俺は俺であなたはあなたであるということだろう。俺は真夜中の肉食獣。今夜も満たされる瞬間を求めて街をさまよっている。
「テクニカルチキンとトロピカ
スープ・カレーを召し上がれ
「誠に申し訳ございません。ご注文いただきましたスープ・カレーでございますが、私の不注意により少々スープをあふれさせてしまいました。お届けできる状態でないと判断できるため、ご注文をキャンセルさせていただき、こちらの方で引き取らせていただきます。この度は誠に申し訳ございませんでした」
「大丈夫です。構いませんのでそのまま届けてください!」
「恐れ入ります。せっかくご注文していただいた商品を、完全な
ロング・ファイト(2000ラウンド)
ノックアウトの予感を越えて、私は50ラウンドのリングに立っている。激しいパンチを交えながら、試合の中でさえも成長する。私は自分ののびしろに驚かされる。そんな私を前にガードを固め、フットワークを駆使しながら向かってくる相手も大したものだ。倒れない限り、ファイトは続く。ゴングとゴングの間に注がれるお湯。一息つく間、私は青コーナーでたぬきを食べた。ちょうどいい補給。そして、また立ち上がる。
眠って
超速の銀/一局の将棋
(この銀が間に合うだろうか)
次の一手を求めるために先の先を読まなければならない。無数の物語の中から今の自分に必要なものを読み分け、最善を上書きしていく。
読みには何より速度が重要だ。湧き出るイメージを束ねて取捨選択するには、速度がなくては。ゆっくり読んでいては脳波に隙が生じる。後悔、奢り、丼、うどん。様々な邪念が介入することを防ぎ切れない。最悪の場合、睡魔に襲われてしまうだろう。厄介な追