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長崎次郎書店、長崎書店と保岡勝也③長崎次郎書店設計以前のつながり


長崎次郎書店支店(現 長崎書店)大改修工事

 熊本市中央区新町に現存する長崎次郎書店の図面が描かれたのは、大正13年と大正15年とされている。それ以前の大正3年に、保岡勝也は熊本市中央区上通町にある長崎次郎書店支店(現 長崎書店)の改修工事を手掛けていた可能性があることが分かった。その根拠となる資料を3つ挙げる。

資料1

 まず1つ目は昭和4年9月に出版された下吉正助「熊本之事業と人物」の中の「長崎書店」の記事に書かれている次の文章である。

大正三年本邦建築界の大権威たる保岡工學士に依嘱し、書籍部陳列と室内採光及び換氣を主として特に考案せる設計により大改修工事を施し、

下吉正助.「熊本之事業と人物」(熊本之事業人物刊行所,1929,p.26.)

 この文章を見て、大正15年(1926年)に発売された保岡勝也の著書「洋風小売商店の建てかた」(鈴木書店)を思い出した。この本では「陳列棚」、「通風」、「照明」などの重要性が説いてある。まさにそれらの点を考慮した大改修工事であったようだ。

資料2

 大正14年(1925年)に出版された木村俊作「熊本県案内」の中の「長崎書店」の記事には次のように書かれている。

大正三年安岡工學士の設計に係る理想的書籍店に改築し今日に至つてゐる。(原文ママ)

木村俊作.「熊本県案内」.熊本市三大事業記念国産共進会熊本県協産会,1925,p.42.

 こちらの記事には小さいながら外観、内観合わせて3枚の写真も掲載されており、保岡勝也が手掛けたと思われる書籍部陳列の様子が写されている。

資料3

 大正12年(1923年)に出版された真栄里正助「人物熊本 増補版」には次のように書かれている。

大正三年二月東京建築技師で斯界の権威たる保岡工學士嘱し、書籍部陳列と室内採光及び喚起を主として、特に考案せる設計圖により書籍部の店舗に就き再び大改修工事を施し以つて今日に見るが如き理想的店舗となつて居る。(原文ママ)

真栄里正助.「人物熊本 増補版」.新九州社,1923,p.60.

 これら以外にも保岡勝也の名前は挙げられていないが、大正3年(1923年)「理想的大店舗に改修」「理想的大店舗を修築」などと記載されている書籍が複数見つかった。以上のことから保岡勝也が、大正3年(1923年)に長崎次郎書店支店(現 長崎書店)の大改修工事の設計を手掛けていたことは間違いないのではないかと想像する。この年はちょうど長崎次郎書店支店(現 長崎書店)創業25周年にあたる年であった。



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