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音楽活動と会社員に優劣はない。それは等しく、人と繋がること。|GAMBS・Sukemasa|ぼくらの現在地vol.4

今までと生き方がガラリと変わったこの時代に、モヤモヤを抱えながらもいろんな領域を横断している若者が、どんなことを考えて、どう仕事をして、どう生きているのかを教えてもらう連載です。彼らの現在地と今の時代を照らし合わせて、これからの生き方を探っていきます。第4回目は新進気鋭のバンドとして注目を集める「GAMBS」でギターをつとめながら、今年から新卒で働く社会人でもあるSukemasaさんにお話を聞きました。「音楽活動で食べていけるようになるまでの仕事」という古い価値観を軽々と飛び越えて、音楽活動にも会社員としての仕事にも真摯に向き合うSukemasaさんの現在地とは?



繊細な感情の表現が、
音楽づくりの醍醐味

ーギターを務めているバンド「GAMBS(ギャムズ)」にはいつごろ加入したんですか?

Sukemasa 大学3年生の留学に行く前日に声をかけられて入りました。すごく急だったんですけど、ボーカルがクールにみえて熱い人なので、「このタイミングだ!」と強行したんでしょうね(笑)。

ー(笑)。留学ではどちらに行っていたんですか?

Sukemasa スウェーデンに留学していました。せっかくなら英語を学ぶだけじゃなくて、英語で専門的な大学の授業を受けられるところがいいと思って、大学の交換留学プログラムの中でそれが叶うスウェーデンの大学に留学しました。留学中も現地でバンド活動をしていたんです。

ー異国の地でも!スウェーデンでのバンド活動のきっかけは?

Sukemasa フラッと入ったギターのお店にバンド募集中のチラシをみつけて。そのバンドが影響を受けたと書いていた音楽も割と好きだったし、チラシに文字だけじゃなくて、バラの絵がポンと載っていたんです。その気遣いがいいなと思って電話してみました。今時バンド募集に張り紙なんて、年配のバンドなんだろうなと思っていたら、同じ年代くらいの女の子が出て「私があのバラをつけたのよ!」って(笑)。

ー日本でのバンド活動とスウェーデンでのバンド活動に、何か違いはありましたか?

Sukemasa スウェーデンでは音楽活動に対して政府が支援してくれるんですよ。日本ではスタジオで練習するのにもお金がかかりますけど、スウェーデンでは“児童館”的な扱いで25歳くらいまではタダで利用ができる場所があって。ギター、ベース、ドラムもそこにあるし、ライブがあると楽器を貸してくれたりもします。

ーすごいですね。文化を醸成していこうという気概が違う。

Sukemasa びっくりしましたね。全然お金かかんないじゃんと思って。

ー国によっての音楽性の違いもあるんですか?

Sukemasa 2ヶ国しか経験していないので分からないですけど、スウェーデンのバンドではジャム(※)で自由に音楽を作っていて。誰かが弾いた音に合わせてみんな音を鳴らして、ボーカルも適当に言葉を乗っけていって。録音したものを後から聞いて、「これいいじゃん!」となったら曲や歌詞を書き起こしていくという作り方をしていましたね。

※楽譜やアレンジにとらわれず、即興的に演奏をすること。

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スウェーデンでのバンドの練習風景


ーそれはスタンダードな音楽づくりなんですか?

Sukemasa 昔は割とそうだったと思いますよ。そのバンドがアナログだっただけで、今はパソコンで音楽をつくることが多いんじゃないかな。GAMBSでもデータを回しながら自分のパートの音を入れて曲を作っています。

ー全く違いますね! 音楽づくりで大切にしていることはありますか?

Sukemasa バンドの中だと、僕は“一番攻めた表現にチャレンジしたい人”ですね。音楽をやっていると、「あのバンドのあの曲みたいにしたい」といった思いが強くなりすぎちゃうんですけど、それだと好きなバンドの劣化版になっちゃうだけですよね。もっとその先の、いろんな新しい表現を探るのが僕の役割かな。それが必ずしもいいわけじゃないですけどね。

ー新しい表現はどこから取り入れるんですか?

Sukemasa そもそも音楽の歴史はすごく長くて、いろんなジャンルの派生やメソッドも確立しているんです。前提として、ボーカルが作る歌のストーリーやそこに秘められた感情の流れの演出を優先するんですが、その上で「この音楽だったらこうでしょう」という固定概念を崩していくと、新しい表現にたどり着くのかなと考えています。例えば、決められた音楽ジャンルの定型をあえて崩したり、「楽しい曲」に対してその楽しさを引き立たせるために、あえて「悲しい感じがする音」を取り入れてみたり。常にそういった違う切り口で演出ができないかを探っていきます。

ーなるほど。少しの違和感が人間の感情に響いたりするんでしょうか。

Sukemasa 音楽における違和感といえば“不協和音”だと思うんですけど、和音の正しい音から一瞬だけ不協和音にいって正しい音に戻ると不思議と自然に聞こえるんですよね。安定した和音の中に、タラッとちょっと不協和音があると感情のほころびのようなものを表現できて、それが繊細な感情を作ることに繋がったり。音楽はそういう表現の追求だから、そこがおもしろいです。

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GAMBSメンバー
左からSukemasa(Gt)、Fumiya(Vo.Key) 、Kanta(Ba)、Shimon(Drs.Sampler)


ーこれからGAMBSで挑戦していきたいことはありますか?

Sukemasa バンドを組んでいるからこその強みを生かしながら、いい音楽を作るためにできることはなんでもやっていきたいですね。そのためなら、ギターを入れないという判断もするかもしれないし(笑)。それから、多くの人にまだ届いていない素晴らしい音楽が世の中にはたくさんあるので、ゆくゆくはそういった自分が好きなもののために、何か力になることができればと思います。それに、CDのデザインやPVはメンバーの友達が作ってくれているので、この先GAMBSだけにととまらず、いろんな人と関わりながらいいものを作り上げていけたら楽しいと思います。


“普通”からはみ出していた
中学生時代


ーいつから音楽に興味を持ちはじめたんですか?

Sukemasa 中学生の頃からですね。僕、中学1年生の時に不登校になったんですよ。そこからフリースクールに通いながら中学生の3年間を過ごして。

ーフリースクールは、普通の中学校とは違うところなんですか?

Sukemasa アパートの一室に同じような不登校の子どもたちが集まっていて、一緒に勉強をしたり遊んだりして、人と接していきながらいろんなことを学んでいきましょう、というところでした。ゲームもあって、おのおのが好きな人と好きなように過ごせる場所でしたね。普通の学校みたいに時間割が決まっていなくて、「今日は何をする?算数の勉強をする?」と1人ひとりに聞いて決めていったり。

ーSukemasaさんが不登校になったきっかけは、なんだったんですか?

Sukemasa 学校がなんだかすごくつらくて。その当時は何でこんなにつらいのかが分からなかったんですけど、たぶん人に合わせるのがすごく大変だったんだと思います。小学校の時は友達とたくさん遊んで楽しく過ごせていたんですけど、中学校では今まで許されてきたことが許されなくなったように感じて。制服も出てくるし、みんなと同じようにしなきゃとか、同じものを好きにならなくちゃという強迫観念のようなものを感じるようになってしまったのかもしれないですね。とにかく全然うまくいかなかったです。

ーフリースクールでは誰かに合わせる必要もなく、自分がやりたいことをできたんですか?

Sukemasa そうですね。それまでは「人に合わせなきゃ」と思っていたから、何かを自然に好きになる感覚があまりなかったんです。フリースクールでは勉強時間の合間に、自分の好きなことをネットで調べたり本を読んだりできたので、関心を持ちはじめた音楽への興味を広げていけました。だいたいみんな中学生くらいから自分の趣味嗜好が作られていくと思うんですけど、僕はそのタイミングでいわゆる一般的な社会から断絶されていたので、外からの影響を受けず、純粋に自分の中の好きなものと向き合えたのかもしれません。こういう経歴のせいか、いろんな局面で君は変わっているねと言われたりするけど、それは別に悪いことじゃないということをフリースクールでは学びました。ちょっとはみ出すぐらいがちょうどいいんじゃないかと。

ーそれまでははみ出してる自分が嫌でしたか?

Sukemasa 中学校でうまくいかなかった原因は、はみ出すことを悪いことだと思っていたからですよね。今こうして社会に出てみると、意外と個性的な人間の方が受け入れられたりするので、生きやすい時代になったのかもしれないです。フワちゃんとかを見ているとそう思います(笑)。

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休日はレコード屋や服屋をめぐったりするというSukemasaさん。この日は気になるギタリストのインタビューが特集された音楽雑誌を購入。


音楽活動も会社員も等しく、
人と繋がるために



ーSukemasaさんはGAMBSで音楽活動を行いながら、今年新卒で企業に入社されたんですよね。

Sukemasa はい。大学3年生の春にインターンをしながら、僕が本当にやりたいことが何かを考えたんです。音楽が好きだけど、それの何が楽しいんだろうと考えてみると、音楽を介して人と繋がることだと思い至って。就職活動が始まった頃、GAMBSはほとんど表立った活動をしていなかったので、社会と繋がるためにも就職をしようと思いました。

ーインターンではどんなことをしていたんですか?

Sukemasa 編集者のもとで撮影同行やインタビューに同行しながら、編集のお手伝いをしていました。実家の真裏にある事務所なんですけど、大学からの帰り道に普段と違う道を通ったら、ガラス張りのオフィスをみつけて。何をしているところか気になって調べてみると、インターンを募集していたので思い切って応募しました。大学でも、教授だったり大人と接する機会はあるけど、いわゆるサラリーマンがどんな仕事をして、どうお金を稼いでいるのかに興味があって。編集の仕事ではインタビューでいろんな人に会ったり、いろんな業界を垣間見られるので、これを機会に、大人たちが働いているところを見てやろうと(笑)。

ーインターンを経て、大人に対する印象は変わりましたか?

Sukemasa 楽しんで仕事をしている大人たちをいっぱい見ることができたのが一番よかったです。大学では、「就職したら懲役何十年だよ」という話を聞いたり、漠然と仕事はつらいものだと思っていたけど、「なんだかすげえ楽しそうじゃん」と。インタビュー同行でお会いした方たちは、フリーランスでも会社員でもみんな生き生きと働いてらっしゃっていて。家具を作る人がいたり、落語家の名前の文字を書く人がいたりと、おもしろかったです。

ーそんなお仕事があるんですか?

Sukemasa 「めくり」という落語家の名前を書く紙の看板があって、それ用の文字を書く職人さんがいるんです。そういう人たちに出会っていくにつれ、フリーランスでも会社員でも肩書きなんてどうでもよくて、自分のやりたいことをできている大人たちはこんなにも輝けるんだなと知ることができました。これなら就職をしても、将来楽しいかもしれないと希望を感じました。

ーそれで、音楽活動をしながらの就職に至ったんですね。

Sukemasa
 コロナ禍だったからか、就職活動も60社落ちたりとめちゃくちゃ難航して。ちょうどGAMBSでは僕が加入後初めての新曲を発表しようと曲作りをしていたので、それも僕にとっての就職活動ではありました(笑)。新曲をリリースした結果、GAMBSを聞いてくれる人がだんだん増えていった一方で、ご縁があったメーカーに就職が決まったので、思いがけず両方をやっていくことになりました。でも、バンドも会社員もやってることは一緒なんじゃないかと思っています。

ーどういうところが似ていると思いますか?

Sukemasa どちらもいいものを作るという点で共通しているかなと。音楽だと聞いた人がいいと思うもの、メーカーだとお客さんが欲しいと思うもの。それでいて、自分たちが「すげえいい!」と思うものを作っていく。相手と自分の“いい”を擦り合わせながら、いろんな人と作り上げていくところが同じだなと。それには、誰にとって何がいいものなのかを、ずっと考え続けなきゃいけないですけどね。

ーそれは社会と繋がるためにはすごく大切なことですし、クリエイティブの根幹ですね。

Sukemasa 広告のクリエイティブ職やデザイナー、編集者といった職業だけがクリエイティブかというと、そうじゃないと思います。メーカーの会社員だとクリエイティブから遠のいてると思われがちですけど、実際になってみると会社員もすごくクリエイティブだし、イケてると思いました。

ー会社ではどんなお仕事をされているんですか?

Sukemasa 樹脂素材を扱う会社で、僕は自動車部品の営業を担当しています。たまたま、新商品の開発をしている部署に入れていただいたんですよ。「なんで新卒で?」という恐れ多い気持ちもあるんですけど、すごくおもしろそうだなと。手を動かしながら、かなり踏み込んで技術のことを理解しないとお客さんにも説明ができないから、一人前になるまでにすごく時間がかかりそうです。

ー営業でも、ものを作るんですか?

Sukemasa 営業も作ろうという方針の部署なんです。決まった商品を売るのではなくて、お客さんの悩みを聞いてその課題解決の案として新しい製品を出す仕事なので、営業もちゃんと会社の技術のことを学んでいきます。最適な提案をしていく中で新しいものが生まれていくし、想像以上に未来の技術にも関われるので、すごくワクワクしています。仕事はまだ始まったばかりだから何もできていないんですけど、今はいろんな人と会って話をするのが楽しいですね。

ー会社にはいろんな年代の方がいらっしゃるんですか?

Sukemasa 20代〜60代まで、いろんな人が働いていますね。ある日、上司から「社長になりたかったんだよ」という話を聞かせてもらって。「なんで社長になりたかったのに、今まで起業しなかったんですか?」と聞いたら、「ここの仕事が楽しいからだよ」と言われて。それには結構しびれましたね。

ーそれはいい会社ですね。

Sukemasa 周りからは「はやく、会社を辞めて音楽だけで食べていけるといいね」と言われたりしますけど、スーパーサラリーマンになるのもめちゃくちゃいいじゃんと思っています。

ー音楽活動1本で食べていくことを目指しているわけではないと。

Sukemasa 音楽で成功する方がサラリーマンとしてやっていくよりいいという考え方は僕の中であんまりなくて。どうして多くの人がそう思うのか不思議なくらいです。どっちも並列ですごくいい。ゆくゆくはどちらかを選ぶことになるかもしれませんが、そうなった時にはより楽しいことができる方をやっていきたいですね。

ー音楽活動も会社員も、Sukemasaさんにとってはどちらも等しいものなんですね。

Sukemasa そうですね。仕事と趣味で分けているつもりはなく、僕の中では同じことをしていると思っていて。どちらも人と繋がるためのものなんです。それはつまり生きることでもある。音楽活動がだめだった時のために会社員をしているわけでもないし、なんなら会社員がだめだった時の音楽活動くらいに思っています(笑)。うまくいかなかったら起動修正すればいいだけですし。中学校時代のフリースクールでも、「トライアンドエラー」精神を掲げていたんです。やってみてダメだったらまたチャレンジするだけです。

ー5年後は何をしていたいですか?

Sukemasa 僕は27歳になりますね。偉そうに喋ってきたんですけど、僕はまだ何もなし得ていないので、バンドでも仕事でも「僕はこれをやりました」というものが出てくるといいな。

ー最近モヤモヤしてることはありますか?

Sukemasa 今は特にないですけど、これから絶対出てくると思います。僕はまだモヤモヤする手前の社会人なんです。これから会社員をしていったりバンドが大きくなったりする中で、いろんな人の期待に応えなきゃとか、もっと他のしがらみも出てくるだろうし。だから僕は5年後にちょうどモヤモヤしていると思います。

ーじゃあ5年後にもう一度話聞きたいですね。

Sukemasa そしたら全然違うこと言ってそうですね(笑)。


Sukemasa・すけまさ
1999年生まれ、東京都出身。大学在学中にスウェーデン•ストックホルム大学に留学。現地でもバンド活動をおこなう。大学卒業後はメーカーに営業として就職。2019年8月よりGAMBSに加入。ギター・サンプラー担当。
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GAMBS・ギャムズ
2019年3月に結成。メンバーチェンジを経て、Fumiya(Vo.Key)Sukemasa(Gt) Kanta(Ba)Shimon(Drs.Sampler)の4名体制へ。メインストリームとインディーなシーンの音楽を自由に横断するサウンドと、ボーカルFumiyaによる素朴な詞世界が組み合わさることで、時代性を問わないポップミュージックを作り出す。 東京都内を中心に活動中。
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\NEW RELEASE/
7月7日(水)にGAMBS 5th Single“Summer”を
各種配信サービスにリリース

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(取材/文 李生美)

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