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低コスト型信号機とは

最近、道路を走っていると、やけに薄型のLED信号機を見かけることがないだろうか。これは「フラット型信号機」または通称「低コスト型信号機」と呼ばれており、従来のLED信号機よりも安価に製造できることがメリットである。その特徴や歴史を紐解いてみよう。


2014年から開発、2017年より設置が始まった

LED信号機は1994年に愛知県と徳島県に設置されたのが最初で、2000年代前半には東京などでも従来型の電球式信号機から置き換えが一気に進み、すでに約60%がLEDになっている。

電球型からの移行により、筐体が薄くなり、庇 (ひさし、フード) もより短くコンパクトで軽くなり電球交換コストや電気代も下がったが、全国で老朽化が進む信号機のインフラを効率よく更新するために、2014年に警察庁によるモデル事業が開始され、2017年より設置が開始された。

場所: 千葉県市川市本八幡。庇が1cmくらいあるもの
場所: 岐阜県高山市。庇がまったくないもの。
場所: 千葉県船橋市大穴。庇がまったくないもの、かつ本体が薄い。

低コスト信号機の仕様は、警察庁が定めた交通信号灯器仕様書「警交仕規第1014「版X」(Xには1,3,4などの数字が入る)で定められている。(「版3」実装例「版1」実装例)※

※ 2017年 (平成29)の改版からはLED信号灯器の横幅が1050mmが認められるようになったが、それ以前の版では1250mmであり、1250mmに準拠したLED信号灯器も作られている。

ただし、庇がない薄い信号機はモデル事業化される2014年以前にから一部の地域で既に設置されていたようである。(たとえば2010年4月には和歌山県和歌山市の国道42号線毛見交差点に、2011年には静岡県静岡市清水区の国道1号線に設置済み)

フラット型信号機のメリット

低コスト型信号機は、その名の通り、従来は10万円以上した3灯式信号機が、7~9万円程度まで下がる。筐体はさらに「フラット」になり厚さは製品によっては6mm程度にまで薄く、重さも約40%軽量化 (約11kg)、ランプ部の大きさも300φから250φに小さくできる、フードレスにでき部材を減らせ低コスト化できるなどのメリットがある。本体は15-20度程傾けて設置することで着雪も防ぐことができる※。

※出典: 信号電材 社長日記

豪雪地帯では縦型の設置になっており、こちらはかなり傾いて設置されている印象である。

縦型の低コスト信号機
場所: 富山県富山市

フラット型信号機のデメリット (?)

ただし、コストについては、灯器本体の値段は下がったとしても、交差点における信号機の設置は、信号機のサイクルを制御する心臓部である交通信号制御器が70万円程度することをはじめ、信号柱やその他の部材の値段がそれなりにすること、工事費も合わせると部材の値段は全体の1/2~1/3程度にしかならず、1交差点の信号機一式を設置するには約500万円程度かかることを考えると、新設の場合は全体としてのコストインパクトはそこまで大きくない。

また、今までの信号機と見た目がかなり異なり、庇もないために、やはりランプ部が見にくいなどの意見も見られる。

加えて、これはLED信号機全般に言えることだが、写真を撮ってみるとランプ部が光っていなかったり、一部のみが光っている、光に縦に筋が入っている、といったことがある。これは信号機のLEDが交流で光っており短い周期で点滅しているためである。そのため、ドライブレコーダーを始めとして将来的には自動運転で信号機を認識する場合にLED信号機だと認識しづらい場合がある。

また、LED信号機は雪に弱いとも言われている。

東京では従来型のLED信号機がすでに普及してしまっているため東京都で低コスト型信号機が見られることはないが、他の道府県では場所によって導入が進行している。まだ設置が始まったばかりなので、今後の評価がどうなるか、気になるところである。


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