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難読標識: 駐車可能な時間と車種 - 銀座コリドー通り

日本の道路標識は他国と比べて複雑なものが多い。特に都市部では規制対象が車種、時間帯、曜日等によって細かく規定/限定されている。そのため、初見では正しく規制内容を判断することが難しいこともある。


タクシー関連の駐車禁止と車両通行止めが絡む複雑な例

今回取り上げる難読標識は、東京都中央区の銀座コリドー通りにある標識である。銀座の裏通りは夜になるとタクシー乗り場につける客待ちタクシーが長蛇で停車している。そのため銀座近辺の通りには様々なタクシー関連の規制が敷かれている。たとえば、夜のタクシー乗り場は場所が決まっており、路上で気軽にタクシーを拾うことはできない。

冒頭の写真は、元々は2020年度に標識が更新され、「タクシーを除く自動車・二輪車の通行止め」と駐車禁止の「区間内」標識が追加されたものである。

図: 左が元々設置されていた標識、右が2020年度から更新された標識

「タクシーを除く自動車・二輪車の通行止め」については、元々写真の場所の交差点の手前の道路まで規制がかかっていたが、客待ちタクシーの待ち行列をさばくために通行止めの区間が延長された。

駐車禁止の補助標識が2枚ある理由は?

それでは、元からあった駐車禁止関連の規制内容を見ていこう。まず気になるのは、補助標識が2枚付いている駐車禁止の標識だ。本標識に対して補助標識が2枚ある場合は、同じ本標識のダンゴを表すのである。そのため、駐車禁止の規制は以下のように分解できる。

図: 本標識に対して補助標識が2枚ある場合は、同じ本標識のダンゴを表す

ひとつは①「21時から翌1時までの間は(すべての車両が)駐車禁止」であることを表す。2つ目は、②「21時から翌1時までの間は客待ちタクシーを除く車両は駐車禁止」であることを表す。つまり、裏を返すと該当する時間はタクシーは客待ちのために駐車して良いことを表している。

この①②の規制について注意深く見てみると、時間規制は両方とも同じであり、②は特定の車種を除いている。通常は駐車禁止の規制は2種類が同じ区間にかかることはなく、1つの規制を終わらせてその場所から新たな規制を始める運用がほとんどであるが、この場所はそうなっていないのが面白い。

冒頭の写真の場所では、②の区間が始まる場所である。そして①の規制は手前の道路からずっとかかっている。つまり、以下の図のようになっている。

図: 2種類の駐車禁止規制が同じ区間にかかっている

論理的に厳密に考えると、②の規制で客待ちタクシーを除いていても、①の規制では除かれていないので客待ちタクシーはやはり駐車できないようにも考えられるのであるが、標識変更の経緯や目的を考えると、①②の規制が両方かかっているところでは②を優先するようである。

標識の変更により「区間内」の補助標識が追加され、①②の規制が重複してかけられていることが明確になった。「1つの規制を終わらせてその場所から新たな規制を始める」という標識の設置方法はここでは面倒くさいのでやらないということだろうか。

結局どのような規制が敷かれているの?

さて、以上のことを総合して日時や車種によってどのような規制がこの道路に敷かれているかを図解してみた。パターンは4通りに分かれる。このパターンを初見で瞬時に判断することはほぼ不可能だろう。

この規制の目的であるが、銀座の裏通りでは夜 (21時~翌1時)は客待ちタクシーが増えるためにそれに配慮し、この道路は客待ちタクシー専用にして一般車両が入り込むことによるトラブルを防ぎつつ、夜の時間は客待ちタクシーが止まることを許容しつつ一般車両の駐車は禁止して客待ちタクシーの邪魔にならないように規制している。昼間の時間は路上駐車スペースとして利用してもらうために時間制限駐車区間としている。

銀座のタクシー規制の時間帯 (22時~翌1時)と、駐車禁止の時間帯(21時~翌1時)が1時間ずれているのは、駐車禁止は1時間早めに実施することで止まっている一般車両を確実に無くすための準備時間ということだろう。また、「タクシーを除く自動車・二輪車の通行止め」は平日 (ここでは土曜・日曜・休日を除く日とする) のみに実施している。

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