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補助標識「指定車・許可車を除く」とは?

○○車両通行止めや○○専用道路の規制標識に添架されている補助標識に「指定車を除く」「許可車を除く」等と書かれているものがあるが、この意味について解説する。


「指定車」とは?

通行禁止除外指定車のことであり、特定の業務に従事する車両に対する除外指定車。官公庁、公益事業(電気、ガス、上下水道事業等)等で使用する車両、緊急の往診及び手当のため医師が使用する車両、感染症の発生の予防及びまん延の防止のため保健所の職員が使用する車両、緊急の取材のため報道機関が使用する車両、など、用途が指定されており、通行禁止除外指定車標章が交付される。

場所: 千葉県千葉市稲毛区緑町 京成みどり台駅前

東京都の場合は通行禁止除外指定車標章を申請できる車両以下のように定められている。

● 電気、ガス、水道、電話又は鉄道の各事業について緊急修復を要する工事のため使用中の車両
● 報道機関の緊急取材のため使用中の車両
● 食品衛生法に基づく臨時検査のため使用中の車両
● 環境基本法に基づく公害調査のため使用中の車両
● 民事執行法に基づく強制執行等を迅速に行うため使用中の車両
● 総務省設置法に基づく電波の監視及び探査のため使用中の車両
● 狂犬病予防法に基づく犬の捕獲のため使用中の車両
● 郵便法に規定する郵便物の集配のため使用中の車両
● 歩行困難者の輸送業務のため使用中の車両(特別な装置・構造を有する車両)
● 監察医務院等が行う検案のため使用中の車両
● 国又は地方公共団体が保有する車両でその職員が公益上必要な用務のため使用中の車両

出典: 警視庁ホームページ

尚、通行禁止除外指定車の他には、駐車禁止除外指定車の制度も存在する。

「許可車」とは?

指定車と似ているが、通行が禁止された道路でも、警察署長から許可証を交付された車両が通行できる制度がある。車庫など車両を保管するための場所に出入りするため、歩行が困難な方が車両を利用するなどの事情があるため、荷物の集配をするため、電気、ガス等の修復工事をするため、道路の維持管理をするため、冠婚葬祭、引越し等の社会生活上やむを得ない理由があるため、などの理由で申請すると許可証が交付される。

尚、○○車両通行止めや○○専用道路の規制標識は、「指定車を除く」「許可車を除く」等の補助標識があってもなくても実は意味は変わらず、補助標識がなくても暗黙のうちに指定車、許可車は規制から除外されている。つまり、歩行者専用道路であっても厳密に言うと車両が100%通行してこないとは言い切れないのである※。

除外が適用される通行禁止規制

除外が適用される通行禁止規制は以下の通りである。

除外される通行禁止規制※
出典: 警視庁ホームページ

※歩行者専用は「特定禁止区間(区域)」の補助標識板が付いている場合は除外されない。(歩行者天国の場合などに付加されている事が多い)

尚、通行禁止規制には組み合わせのシンボルもあるので、適用されるシンボルは他にも以下のような規制もあるため注意が必要である。

神奈川県警では、文章にて以下の通り定義されている。

通行禁止除外車両及び通行許可車両並びに駐車禁止除外車両及び駐車許可車両取扱要綱
第4 通行禁止除外車両及び通行許可車両の取扱い
1 通行禁止除外車両の取扱い
(1) 取扱いの基本
ウ 通行禁止除外車両は、細則第1条の2第1項第3号の規定により、次の道路における車両通行禁止の交通規制からは除外されないことに留意する。
(ア) 一方通行路
(イ) 車両進入禁止場所
(ウ) 車両通行止めのうち、その道路標識に「特定禁止区域」又は「特定禁止区間」の補助標識が付されている区域又は道路の区間(歩行者天国、モール等)
(エ) 指定方向外進行禁止の交通規制が、車両通行止めの交通規制の実効を担保するため補完的に実施されているものではなく、右折禁止等の単独で交通規制(当該目的のみによる交通規制)が実施されている場所

出典: 神奈川県ホームページ

都道府県によっては、古い標識には「指定車を除く」「許可車を除く」等の補助標識があるものが多いが、最近更新された標識では、同じ規制区間/区域でも補助標識が省略されている。何故ならこの補助標識があってもなくても指定車・許可車は法令上暗黙のうちに除かれるからである。

加えて、通行規制のある道路との交差点において、除外が適用される通行禁止規制を補助する目的の「指定方向外進行禁止」の規制についても、あわせて除外される。

通行禁止除外車両及び通行許可車両並びに駐車禁止除外車両及び駐車許可車両取扱要綱
第4 通行禁止除外車両及び通行許可車両の取扱い
2 通行許可車両の取扱い
(3) 審査及び通行許可証等の交付
ア 審査
(エ) 車両通行禁止(指定方向外通行禁止を除く。)が実施されている道路の区域又は区間について許可をする場合において、当該規制の実効を担保するため、当該区域等の入口の交差点において補完的に指定方向外進行禁止の交通規制が行われているときは、当該指定方向外進行禁止の交通規制についても併せて許可をするものとする。

出典: 神奈川県ホームページ

参考:「居住者用車両」とは?

他にも○○車両通行止めや○○専用道路の規制標識には様々な除外を行う補助標識が添架されるが、中でも意味が難しいのが「居住者用車両」関係の補助標識であろう。実は、これは都道府県毎に定められており、都道府県によって表記が様々であるばかりでなく、除外している車両の範囲も様々なのである。

場所: 東京都墨田区

代表的な表記を以下に挙げる。

● 居住者用車両
● ○○地区居住者用車両
● 指定区域内居住者用車両
● 指定区域内居住者使用車両
● 区間内居住者車両
● 規制区間内に使用の本拠を有する自動車
● 区間内住民の関係車両
● 沿道に保管場所を有する車両
● 居住者所有車両

基本的には、規制区域内の生活道路から通過交通を排除し、歩行者などの安全を図る目的なのであるが、これらの表記を見ても分かる通り、規制対象の車両にばらつきがある。たとえば規制区域内の住民が「所有する車」「保管場所がある所有者」「運転する車」「同乗する車」なのか、または住民に「荷物、情報、サービスなどを届ける車」なのか、である。都道府県により範囲が異なる場合があるので、注意が必要である。

東京都の「居住者用車両を除く」規制については、東京都議会での答弁に明確な回答があるので引用する。

都内における通行禁止規制「居住者用車両を除く」は、昭和52年度を初年度として3か年で計画された「東京マイタウン化総合交通対策」に基づき、生活道路から通過交通を排除し、歩行者などの安全を図る目的で実施されているものです。
「居住者用車両」とは、規制区間内又は規制区域内に所在する住居、会社その他人が社会生活を営む場所又は車庫、倉庫その他人が管理する場所に出入りするために使用する車両が該当するとしています。具体的には、居住者が乗車している車両、居住者宅への訪問車両、その他、規制区間内又は規制区域内を所用のため出入りする宅配便、行商車両などが該当するものと解しています。

平成25年第四回都議会定例会西沢けいた議員の文書質問に対する答弁書

この答弁では、居住者だけではなく、規制区間・区域内にある会社の関係者も含まれ、会社関係者が利用する車両も含まれるとのこと。また、居住者が同乗車両、居住者宅への訪問車両、規制区間・区域内への宅配便、行商車両等も該当するとなっている。

しかも、この答弁の元々の質問に含まれる「政治活動用車両」も、規制区間・区域内へ「所用のため出入りする」に該当することから除外対象になる、というのは面白い。(この考え方だと、規制区間・区域内に空き巣を企む車両も「所用のため出入りする」に該当することになるだろう)

逆に、この規制区間・区域内に所用がない、たとえば抜け道として使うためだけに通過する車両は規制することが出来る。

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