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TOKYO2020 で道路標識にかかった費用は?

色々あった東京オリンピック2020も8月8日で閉会式を迎え、パラリンピックを残し、ひとまず折り返し地点まで来た。この大会には1兆5千億円とも、3兆円とも言われる予算が掛かったと言われている。1998年の長野大会のときのように、関連帳簿を焼却処分して詳細を闇に葬るようなことがないように願いたいものだ。

さて、全体の予算はともかく、今回の東京オリンピック・パラリンピック2020の実施に伴い、専用標識や外国人観光客に対応するための標識改善が行われた。それらの費用がどれくらいだったのか、公開されている資料やその他の情報から試算してみた。


TOKYO2020関連の道路標識設置

まず最初は、TOKYO2020の実施に必要な道路標識の設置や撤去費用だ。これらには以下の種類がある。

● 大会ルートを知らせるアルミ製、もしくはメラミン製の標識と、道路標示
● TOKYO2020大会関係車両の専用レーン・優先レーンを定めるアルミ製の標識と、道路標示
● 大会開催に伴う一時的な規制変更による車両通行止め、駐車禁止、駐車場などを表すアルミ製の標識と、道路標示

画像3場所: 東京都江東区 清洲橋通り

大会ルートの表示は首都高でアルミ製のものが約500枚、一般道路にはメラミン製のものが取り付けられている。TOKYO2020大会関係車両の専用レーン・優先レーン等の標識は、約3,400ヶ所に設置されたという。

アルミ製の標識の設置は、1ヶ所あたり約40万円かかるものとすると、上記だけでも約16億円の費用がかかる。実際には、大会開催に伴う一時的な規制変更による標識の変更やメラミン製の大会ルートの表示と、大会終了後の撤去、現状復旧費用があるため、少なくともこの倍の約32億円は掛かっていると思われる。

尚、現時点で、パラリンピックに使われない大会ルートの標識は取り外されている。

TOKYO2020に向けての道路標識多言語化等の取り組み

続いては、「誰でもわかりやすい道路標識」「多言語対応」への取り組みだ。生憎今回は外国人観光客が日本を訪れることはなかったのであるが、東京オリンピックの開催に関わらず、これは東京を始めとする日本の国際都市での今後の外国人の活動を促進するのに不可欠な投資である。たとえば、

● 英語併記がされていない案内標識に英語を併記する
● 英語表記内のローマ字など外国人に取って不自然な表記を改める
● ピクトグラムや路線番号など言語によらない表記を進める
● 全国に約170万ヶ所ある「止まれ」の標識に「STOP」を併記する

などである。

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案内標識などの改善は2016年2月に発表され、オリンピックまでの4年で東京都だけで約1万4千枚、止まれの標識は2017年10月に発表され、東京都内に約14万ヶ所ある標識のうち競技会場となる施設がある11市区の約3万5千ヶ所をオリンピックまでの3年間で更新、10年以上かけて全国約170万ヶ所を更新する見込み。

東京都の案内標識などの改善には28億円の費用が発生する見込み。これは標識全体の更新というよりは、上からシールを貼るなどの対応で済ませるところも多そうだ。1ヶ所あたりの単価は約20万円の計算。仮に大きな案内標識を支柱ごと更新するとなると1ヶ所あたり約700万円となる。

また、止まれ標識は標識板の値段だけで約1万5千円するので、単純にこれだけで255億円の費用が発生する見込み。実際には設置費用が掛かるため、1ヶ所あたり約20万円にはなる。ただし止まれ標識は大抵の場合は通常更新のタイミングでの更新となるはずなので追加費用ではない。東京都だけで3万5千ヶ所の早期更新であれば追加で70億円である。

以上からすると、「誰でもわかりやすい道路標識」「多言語対応」への取り組みでは、東京都だけで約100億円の費用となる。なんだかんだ、「止まれ」標識の改修に意外とお金が掛かる...費用が掛かるのは設置作業の部分なのでどれくらい費用削減になるかはわからないが、今更ながら「止まれ」標識の早期更新の場合は、案内標識の改修のように単純に「STOP」シールを貼るだけにしておくのも手であったであろう。

画像4場所: 東京都新宿区 甲州街道 新宿駅南口付近
まだ更新されていない「止まれ」標識

画像5場所: 東京都台東区浅草
STOPが付いた「止まれ」標識

TOKYO2020の開催に関連する交通標識の更新には、意外と費用が掛かっているのがお分かりいただけただろう。

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