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ドイツ旅行2016:ガルツヴァイラー露天掘り炭鉱見学バスツアー


ガルツヴァイラー露天掘り炭鉱

2016.09.18
観光客で賑わうケルンの大聖堂から直線距離で約30km、東京で言うと東京駅を起点として立川あたりの位置に、ガルツヴァイラー露天掘り炭鉱はある。褐炭を産出するのだが、石炭層をバケットホイールエクスカベーターと呼ばれる超巨大重機で掬い取って、ベルトコンベヤに載せて直接隣接する火力発電所まで搬送してそこで燃やして発電している。巨大なスケールで石炭の地産地消をやっている。
石炭をその場で燃やしてしまえば輸送費がかからないというので火力発電所を炭鉱に隣接させて建設する(電気に変えてしまえば送電コストは石炭の輸送コストと比べたら桁違いに安くなる)ところなど、工業立地論の輸送コスト最小化セオリーの忠実な実践にほかならない。
スケールメリットと輸送コストの最小化戦略、ドイツ合理主義とはこういうものかと感心さえしてしまう。そして、これだけ温暖化対策で脱炭素が言われている中で、しかも先鋭と思われているドイツで、平然と大規模に石炭を燃やし続けていることに驚いてしまう。

この地域にはガルツヴァイラー以外にも、ハインバッハ、インデンと、露天掘り炭鉱が3か所もある。

さて、そんな露天掘り炭鉱を見学できる機会があるという。
炭鉱を運営している電力会社が年3回程度、露天掘りの「底」まで行くことができるバスツアーを開催している。バスから降りることはできないものの、普段立ち入ることのできない場所に行けるのは楽しみだ。そして、お目当ては、もちろんバケットホイールエクスカベーターと呼ばれる超巨大重機だ。

この超巨大重機の魅力が伝わらないと始まらないので、先に写真を出しておくと、こんなやつだ。

バケットの付いたホイール(写真左手の円形部分)を回転させて掘削(エクスカベート)していくから、名称がバケットホイールエクスカベーター。ホイールを上げ下げするためにタワーを2本立ててワイヤーを張ってある。足元に視線を移すと、重さを分散させるために履帯(キャタピラ)を8条ずつ前後に並べてある。履帯は全部で16条だ。これらが超巨大重機の重量を支えている。右手にアームが伸びているがこの先にベルトコンベヤへの投入機が付いていて、つまり、この写真でも全体像を捉えきれていない。足元に人がいるので、サイズを比較してほしい。とにかくでかい。
これを見に行くのである。

カスターという町に着いて、ガルツヴァイラー露天掘りの見学バスツアーの受付をする。
受付会場に着いたのは11時過ぎで、待ち行列はなかったけど、この時点で入手できたツアーバスの整理券は14:15のもの。15分おきにバスが出ているということだが、3時間待ちだ。もっとも、早く来ていても3時間分の見学者が行列していたはずなので、行列嫌いの私としては、これで良かったかもしれない。

待ち時間を利用して、先に展望台に行っておく。
展望台は炭鉱内に張り出していて、スリルが味わえるちょっとしたアトラクションに仕立ててある。スカイウォークというらしい。
露天掘り炭鉱の全体を見渡すことができる展望台だが、ガスっていて遠くの方は霞んでいた。バケットホイールエクスカベーターもぼんやりとしか見えなくて残念だった。

駐車場の地面には大きな円が描いてあって、つまりこれがホイール部分の大きさというわけだ。


いよいよバスツアーの始まり

カスターの町に戻り、指定された時刻となり順にバスに乗り込んでいく。座席は真ん中より少し後方ぐらい。左側に、なんとか窓側席を確保した。窓側が取れるか取れないかで大違いだ。

バスの車内からの撮影なので、走行して位置がどんどん変わるのでピント合わないし、揺れてブレるし、窓ガラス越しなので光が反射するし、しかもその窓ガラスには泥とか水滴が付きまくっているし、隣の席の人にちょっとは譲らないといけないかなと思うし… と撮影条件は最悪なのだけどとにかくシャッターを押すしかない。
今、掲載用に写真を見返していたけど、ほんと、ブレたり、ピンボケの写真ばかり量産していた。

バケットホイールエクスカベーターの全景写真。既に解説用に出した写真だけど、良いものは良いのでもう一度載せておく。これが見たくて日本からわざわざやって来たのだから。

そして、ホイール部分をアップで。これが回転しながらバケットが土を掬い取っていく。

頭上のアームを通り過ぎて、別の角度から。後部(写真右手)に巻き上げ機が見えている。これでワイヤーを引っ張って、前部のホイールを掘削する場所に当てていく。全体の構造がよくわかる。


実はもう1回整理券をもらってバスに乗せてもらうことができた。それも今度は最前列の席を確保することができた。
最前列はフロントガラスからも見ることができるから、バスが今どこを走っているかもよくわかるし、何よりも遠くにいるバケットホイールエクスカベーターが次第に近づいてくるという臨場感もあって、全然違った。もう1回お願いしてみて良かった。

露天掘り炭鉱の底に降りていくスロープ。
バスの窓ガラスが泥や水滴で汚れている理由がわかった。土埃や石炭の粉塵が立たないように散水をしているのだ。そのため路面も濡れている。そうやって周囲の環境への配慮をしているのだから、これはもう仕方ない。

選炭処理のために扇形に広がっていくベルトコンベヤ群の真下を行く。これも先頭から眺めて、そういう場所を通っているということがはじめてわかった。

そして、だんだんと近づいてくるバケットホイールエクスカベーター。既に一度見ているはずなのに、胸の高鳴りが全然違う。

折り返してきたツアーバスの前の便と対向する。前方に見えているのはバケットホイールエクスカベーターのベルトコンベヤへの投入機の部分だが、大型観光バスがこんなに小さく見える。

ただ、そう良いことばかりは続かないもので、1回目のツアー参加から2時間ぐらい時間が経過していて、日が傾いて逆光になってしまった。バケットホイールエクスカベーター自体は1回目の方が断然よく撮れた。そもそも午前中の早い段階に来ていたら順光だったわけだが。

露天掘り炭鉱の最も奥へ。地層がよくわかる。
空も晴れて、青空が見えてきたかな。

ツアーバスは折り返して、バケットホイールエクスカベーターに「後方」から迫っていく。

そして、ベルトコンベヤへの投入機の下を潜る。


2回目のツアーも終了して、展望台にもう1度行ってみた。ガスはだいぶん取れて、露天掘り炭鉱の全体を見渡すことができるようになっていた。

展望台はもう1か所あるということで、こちらは北側の展望台にやって来た。露天掘り炭鉱の全体を「縦方向」から眺めることができる。左右から階段状に掘り進めて行っていて、一番低いところに黒く石炭の層が見えている。

そして、バケットホイールエクスカベーターが現われた。これが全体像だ。夕陽に照らされて神々しくもある。

バケットの実物が置いてあった。爪が付いていて、これで土を削っていくわけだ。地層も細かな泥や粘土のようで石や礫はなさそうだった。サクサク掘り進んでいけることだろう。

ガルツヴァイラー露天掘り炭鉱の「狂気」を物語るのが、この細長い空き地。ここは元々高速道路(アウトバーン)だったが、露天掘り敷地の拡大によって付け替えられて、廃止となった区間だ。炭鉱はどんどん西側に拡張していっている。

畑の向こうから、にょきっとバケットホイールエクスカベーターのタワーが頭を出している。大地を削り取るモンスターだ。


交通手段について

今回はレンタカーで行ったので交通手段を心配することはなかったが、KasterまではHarron駅からバス路線があるようで受付会場の隣にはバスが停まっていた(2016年9月時点)。
Harron駅はケルンの郊外電車(Sバーン)の駅で、ケルン中央駅からはS12/S19で行けるようだ。公共交通機関だけで見学バスツアーに参加することもできるかもしれない。
【公共交通機関については最新の情報をご確認ください】

※写真、情報はすべて訪問時のもの


良すぎて次の年、もう1回行ってしまいました。


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