”知らない”ことはもう手に入らない~「初老耽美派 よろめき美術鑑賞術」

美術館もやっていない中、少しでも美術に触れようということで読んだ本を紹介したい。美術に触れたいならどうして画集を読まなかったのか、ということは置いておいて。

著者は、いずれも著名な美術史家。うち二人は私もよく足を運ぶ美術館の館長を務めている。
美術愛好家のはしくれとしては、著名な三人がどのように美術鑑賞をしているかは気になるところであるのだが。。

とはいえ、本書まったくアカデミックな話は出てこない。「美術は役に立たない」と開き直ってしまっている。いい意味で。だからこそ純粋に楽しもうということだ。

また心に残ったのが、「知らないことは財産だ」ということ。
もはや見慣れてしまった絵を、初めて見た時の感覚など忘れてしまっているし、もう二度とその感覚は味わえない。
でも考えてみれば世の中は「知らないこと」で満ちている。
「知らない」ままで済ますか、食わず嫌い返上で飛び込んでみるか。

美術鑑賞に限らないけれど、好きでやっているはずのことでも、気づいたら惰性になっていることはしばしばある。今までやっていたことだから、今日もやる。そしてこれからもやる。こんな風に日常化してしまっては、大事なことも見落としてしまうほど、響かなくなってしまう。

もう「知らなかった」状態には戻れないけれども、
せめて当初感じていた新鮮さや素朴な楽しさを肌身に意識して接していくことが大事なんだな。

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