見出し画像

ステレオタイプは悪か~「ボディガード」

我々くらいの世代からすると90年代はついこの前のように思うのだが、それくらいに生まれた人たちと一緒に仕事をしたりすると、時の流れの激しさに改めて慄然とさせられるものだ。
そんな90年代初頭に大ヒットした映画、「ボディガード」である。

うん、まあストーリーは悪くない。
悪くないけど、二人が恋に落ちるという件は蛇足というか、拙速な展開というか、やや腹落ちしないまま進行していったという印象。

そもそも、そんなに軽く恋に落ちるのだろうか。そんなに簡単に体を許すものだろうか。当時のステレオタイプが色濃く反映されているようで、現代の価値観ではちょっとついていけない気もした。

でも、そのステレオタイプに沿った作りこそが、芝居たるゆえんでもある。現実をそのまま落とし込んだらとても商業作品になりゃしない。
昔の映画はどことなく映画というより芝居の感が強いと思っているのだが、それは現実ではなく虚構の話を時間的・空間的な制約がある中で描ききろうとするがゆえのテクニックなのだろう。
芝居(舞台)を見て、リアルでないことを糾弾する人はいない。フィクションだということが明らかだからだ。では、映画は?
映画も同じく虚構の作品。リアルさのレベルをどこに設定するかだけの違いなのだ。

というように、独りで課題提起し勝手に納得してしまったわけだが、これくらいの時代の映画には、まだフィクションだと割り切っていた残滓が感じられるのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?