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不釣り合いなカップルの行く末~「足ながおじさん」

ミュージカル映画の名優としては、私はフレッド・アステアがとても気になる。
今回はその彼の、ミュージカル映画としては最後の方の出演作品である。
1955年公開「足ながおじさん」、アステア56歳である。

足ながおじさんというと、いわゆる孤児に対する支援を目的とした「あしなが育英会」が思い浮かぶ。
この映画も、やはり富豪と孤児院の少女との話となる。そこまでは漠然と想像はしていたのだが、はて、それで結局どうなるのだろうか。

そう、最後は結婚するのである。

足ながおじさんことペンドルトンは、50歳代の中年男性。
孤児の少女であるジュリーは、大学生なので20歳そこそこ。
もちろん、恋愛は個人の自由ではある。
そうなのだが、物語に落とし込んでしまうと逆に、より生々しく感じられてしまうのだ。

古くより、絵画のモチーフに「不釣り合いなカップル」というものがある。

これはルーカス・クラナッハの有名な作品であるが、彼以外にも多くの画家が描いている画題だ。老人の域に達しようとする男性と若い女性のカップルを指して、「不釣り合い」と断じているのだ。

この見方は現代でもさほど変わらないのではないだろうか。
芸能人のカップルでも時に親子以上の年齢差のカップルのニュースを見聞きすることがあるが、そこには少なからずこの「不釣り合い」な加減を面白おかしく見てやろうという心情があるのではないか。

真実はわからない。真に心通い合っているのであればそれでよいのかもしれない。しかし、二人だけで行くわけではないのも人間というもの。

映画では結婚がゴールでめでたしめでたしであるが、その後の二人の歩む道に思いを巡らすと、決して平坦なものではないかもしれない。
そんなことを考えさせられてしまったのであった。

とはいえ、途中に差し挟まれる歌やダンスはとても見ごたえがあり、娯楽作品としては満足度の高い仕上がりだと思うので、オススメの作品でもある。

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