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第11話 伝説の洞窟(前編)

-ここまでのあらすじ-
ミャンマー赴任中のコウジは、日本とは異なる文化、環境に悪戦苦闘している日々だった。
コウジにとってミャンマーでの生活はいささか窮屈なものであったが、
思い立って国内旅行に出かけるのであった。

オフィスにて


2014年 夏の暑い時期だった。

ヤンゴン支店にやってきた駐在員の男性が言った。
「国内旅行って扱ってますか?・・・
 私ここにきて半年ですが、そろそろ国内のどっか出かけようと思って・・・
 弊社ヤンゴン以外にオフィスないので、国内出張とかもないんですよ」

コウジは、これまで行った場所や、最近問い合わせを受ける場所などを話し、その場での対応は終わった。

対応終了後にコウジは、
「・・・土日つかってどっか行こうかな」と思いたった。

コウジは、ヤンゴン以外の町には仕事以外でほとんど行った事がなく、ましてや国内を旅行するなど興味がなかった。

そこでコウジは、この1年のうちに知り合ったミャンマー人の友人に連絡を入れた。

ミャンマー中部のマンダレー近郊のKyaukse(チャウセー)という町に、サムというミャンマー人が住んでいる。

ヤンゴンにいるときにコウジはサムと1度会ったことがあったが、マンダレーに来るときは是非連絡をと言ってくれていた。
コウジはサムに連絡をした。

サム:やぁ コウジ! 久しぶりだな! どうしたんだ?
コウジ:サム、久しぶりだな! 急なんだけど今週末にマンダレーに行こうと思っているんだ。もし良かったら会ってくれるかな?

サム:もちろんさ! コウジはどこに行きたいんだ?
コウジ:それがまだ決まってなくてさ(笑)

コウジは頭をかきながら、少し早口で答えた。

サム:そうか! それならコウジ、僕の町に来ないか? 友人らを紹介するよ。
コウジ:君の町かい?

サム:そうだ、マンダレーから車で1時間ちょっとの場所さ。
コウジは少し考えた。
わざわざ飛行機を使ってマンダレーに行くが、目的地は一度しか会ったことがないサムと、特に観光地でもない町に行くわけだ。

「チャウセーなんていったって何も・・・・・」

コウジはサムと話をしながら、チャウセーという町に何があるのかGoogleで検索をはじめた。

すると、コウジの指が止まった。

「・・・この洞窟」
洞窟の中に寺院があり、洞窟の外から差し込む光が神秘的な風景をつくっていた。

その写真をみて、コウジはサムにすぐ質問をした。

コウジ:この洞窟知ってるか?
サム:あぁ、その場所が大体どこだかは知ってるよ。俺は行ったことないけど。

コウジ:ここ、案内できるか?
サム:え? もちろんだとも!!

コウジは、その奇妙な洞窟の写真を、ミャンマー人スタッフに見せた。
だけども誰もその洞窟を知らなかった。

駐在員の人たちにも洞窟の名前、町の名前を聞くが
「知らない」

マンダレー方面でスタディツアーなどで出向いている学生らに聞いても
「知りません」

オフィスにやってくるガイドさんに聞いても「知らない」「行ったことない」という返事だった。
聞いた人の中には、マンダレー出身のミャンマー人もいた。

ただ一人、ホテルの会員制ジムでいつも会うおじいちゃんがこの洞窟を知っていた。

ホテルのジムにて

おじいちゃん:やあ、コウジ。元気かい?
コウジ:どうも。あのさぁ ひとつ聞きたいことがあるんだ。 チャウセーにある洞窟って知らないかい?

おじいちゃん:ああ、知ってるとも。ここはとても有名な場所だよ。
コウジ:本当か? 僕、ここに行くんだけど、みんな知らないって言うから・・・

おじいちゃん:そうだろうね。 ミャンマー人の若者は中々知らない。  なぜか?
彼らはミャンマー国内を旅行せず、シンガポールやバンコクへ出かける。そういうものさ。
僕らの年代の方が、この洞窟を知っている人が多いと思う。

コウジ:外国人にとってはこの洞窟はとても神秘的ですけどね・・・

おじいちゃん:その通り。この洞窟だけでなく、このような町(Kyaukse)にはミャンマーのカルチャーが多く見受けられるんだ。
人はこの洞窟をいろんな呼び名で呼ぶ。たとえば“伝説の洞窟”ともね

コウジ:なるほど・・・

おじいちゃん:僕はこの町を訪れたことはある。でも洞窟は行った事がないんだ。
だからコウジがこの洞窟へ行ったら、いっぱい写真を撮ってきてくれ いいね。

コウジ:わかりました。

言い伝えでは造られたのは、チンギスハーンの侵略をしてきた頃と聞く。
だとすれば、この洞窟はかれこれ700年以上の時を経ている。

それが、ミャンマー第二の都市マンダレーから車で1時間程度にあるのだ。

コウジは、久々に心高なる冒険に出るのだった。


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