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#6 尊敬と共感で、しあわせな組織をつくる

参考書籍1:武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50(山口周・KADOKAWA)
参考書籍2:データの見えざる手(矢野和男・草恩社)


はじめに

参考書籍2「データの見えざる手」において、人の行動データの分析により、仕事や生活に楽しさや充実感を得ている人は、「身体運動の継続性が高い」ことが明らかになった、と記載されており、具体的には、会話する際にできるだけ座らずに立ったまま行ったり、仕事が停滞したときは、オフィスを歩き回って身体運動を増やすことが良いのことでした。

行動データの分析は、ウェアラブルセンサの装着による2週間の行動データから、身体運動の特徴や人との接点・頻度を取得し、フロー状態と呼ばれる、目の前の行為をやりがいがあるものと感じ自分の能力を発揮して楽しんでいる状態、との相関関係を客観的かつ定量的に明らかにしたものでした。

さらに、著者であり、日立フェローでもある矢野さんが代表を務める会社「ハピネスプラネット」では、次のとおり「幸せな組織」について、分析されてました。

50億点もの行動データを分析し、幸せな組織が持つ4つの特徴「FINE」を明らかにした
 ①人のつながりが均等な「Flat」
 ②短い会話が高頻度で起きる「Improvised」
 ③会話中に体が動く「Nonverbal」
 ④発言権が平等な「Equal」。

また、日立製作所や東京工業大学との共同研究によって、⑤同僚との横や斜めのつながりを含めた「三角形の関係」がないと、前向きでウェルビーイング(心と体と社会の良い状態)な組織にはならないということが分かった。

「日立の人:職場を幸せにするアプリ「ハピネスプラネット」 研究者の飽くなき挑戦」

しあわせな組織の特徴を因数分解する

この特徴の状態をどう作るのか、さらに因数分解してみます。

尊重し合える

「①人のつながりが均等」と「④発言権が平等」について考えてみると、互いが尊重し合える関係性が作れていること、そのためには、個々の強みや良さ、つまりは、互いに尊敬できる部分を知っていることが重要に思えます。

私自身、メンバの強みや良さを1on1でトリセツとして作っていくことをやっていますが、それはあくまでも、本人の自己理解を深めること、それをもとに自己肯定感を高めてもらうことを目的にしていました。

そのトリセツにおける、強みや”何に向いているか”を互いを知れることで、尊重し合える関係性が構築できるように感じます。
(本人にどこまでオープンにして良いか、相談は必要ですが)

また、尊敬し合うと言う意味では、役割やスキルではなく、行動特性や性格のような”私らしさ”をどれだけ伝えられるか、個人としての尊敬を前提といた関係構築が重要に感じます。

仕事が見える

また、「⑤同僚との横や斜めのつながり」については、「仕事の見える化」ではないかと思います。

当社でもメンター制度があるのですが、お互いの仕事を知っているメンターと対象者の組み合わせは、効果的に機能しているケースが多いように思えます。

当然、すべての悩みは「対人関係」と、先日の「嫌われる勇気」でも書かれてましたが、

人と人の間には仕事があるため、仕事を知っている・知らないで、どこまでその状況に理解が示せるか、大きく変わってくると感じます。その結果、相談の量と関係性の密度も比例していくと思います。

また、若い子ほど、自らの置かれている状況をすべて言語化出来る訳では無いと思っているため(漠然とした不安やモヤモヤを抱えている)、メンターが、その行間を埋めるには、取り組んでいる仕事を知っていることが大切で、それが無いと、相談する方も「どうせ、話しても分かってもらえない」と諦めてしまうように思えます。

このため、チーム間、組織間で、仕事の状況を徹底的に共有することで、横の斜めのつながりが機能するように思えます。
このとき大切なのが、進捗ではなく、仕事の中身に思えます。組織横断の進捗報告のような会議体はよく有りますが、それは全体管理の色が強く、共有ではなく、やはり報告となるため、「予定どおり」や「遅延」と聞いても、中身が分からないと、やはり分からないということかと思います。

共感をつくる

最後の「②短い会話が高頻度で起きる」については、「共感をつくる」ということではないかと思いました。

参考書籍1「武器になる哲学」において、人を行動させるのは、「倫理・論理・情熱(共感)」とありました。

アリストテレスは著書「弁論術」において、本当の意味で人を説得して行動を変えさせるためには、「ロゴス」「エトス」「パトス」の三つが必要だと説いています。
・「ロゴス」とは論理のことです。でも、「論理」は必要条件であって十分条件ではない。
・「エトス」とは論理のことです。いくら理にかなっていても道徳的に正しいと思える営みでなければ人はエネルギーを引き出すことができない。社会的に価値があると思えるものに自らの才能と時間を投入したいと考えるもの
・「パトス」とは情熱のこと。本人の思い入れをもって熱っぽく語ることで、初めて人は共感します。

一方、「言葉によって人を動かす」ことが言葉巧みに「人を酔わせる、動かす力」であり、その危険性を知っておかないといけない。(対置としては対話)

参考書籍1「武器になる哲学」

その人の「人となり」を知り「仕事」を知り、その上で、小さい会話をするには、話したいと思えること同じ価値観でいれることではないかと思います。

この組織がどこに向かうのか、どういう文化を大切にしているか、その価値観に共感できるときに、この人と一緒に仕事をしていきたい、何かお手伝いをしてあげたい(お節介してあげたい)と思えるのではないかと感じます。

そのためには、企業としてのMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、それを組織でどう具体化し、どこを目指すのか、そのために、組織が何を大切にしたいのか、それを示していく、しつこいぐらいに伝えていくことで、価値観の共感につながっていくのではないかと思いました。

まとめ

「人のつながりが均等」「短い会話が高頻度で起きる」「会話中に体が動く」「発言権が平等」「横や斜めがつながる」

この「しあわせな組織の特徴」を作るには、組織の価値観への共感と、互いに「人・仕事」を知り、縦・横・斜めでお節介し合える関係性を構築していくことが大切と感じました。

  • 尊敬し合える(お互いの良いところを知ろう)

個人として、お互いに尊敬できる関係性をつくる。
個人の強みや”何が向いているか”、お互いにトリセツを共有する

  • 仕事が見える(周囲をお節介しよう)

何に悩んでいる・困っている、その背景を知るために、チームや組織をまたいで、お互いの仕事の状況を共有する。
特に、進捗ではなく、仕事の中身について知ることが大切

  • 共感をつくる(同じバスに乗せよう)

この組織が何を大切にしているのか、価値観を共有する。
会社・組織・個人のつながり、組織としてのミッションの実現方法をしつこいくらいに対話する。(私の場合は、「悪い話ほど早く正確に」「明日の60点より今日の30点」「周囲をお節介しよう」)

Appendix

組織がイノベーションを起こすには、物分かりの良い器用な子ではなく、時間はかかっても本質的にモノゴトを理解しようとする子を大切にしないいけない、というのは、はっとさせられました。
公平感を意識しつつも、短期的な見方の中で、成長機会を配分していないか、改めて意識したいと思いました。

マートンは、新約聖書のマタイ福音書の文言「おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げらるであろう」という一節から借用して、このメカニズムを「マタイ効果と命名した。
同学年で野球チームを作る場合、4月生まれの方が体力面でも精神面でも発育が進み、どうしても有利な場合が多い。そのため、結果的にチームのスタメンに選ばれ、より質の高い経験と指導を受けられる可能性が高まります。人はいったん成長の機会を与えられるとモチベーションが高まり、練習に励むようになりますから、これでますます差がつきます。
私たちは「より費用対効果お高い子」に教育投資を傾斜配分してしまう傾向にあり、物分かりの早い器用な子ばかりを組織内に抱える一方、噛み砕くのに時間はかかるけれども本質的にモノゴトを理解しようと努める子(つまりイノベーションの種子になるアイデアを出すような人)を阻害してしまう可能性があります。

参考書籍1「武器になる哲学」

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