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あのクリスマスの朝をいつか大切に繰り返そう

おがぁあああああしゃぁあああああ”!!!
ぢがうぅぅううううううああぁあぇぁああ”!!!!
訳:おかあさん!ちがう!

肌寒さも生活の一部になってきたその朝。
窓から差し込む太陽の光が少し白くて、冬を感じさせる。
寝室から、大号泣で階段を駆け下りていくひとりの幼児。
そう、今日はクリスマス。

二十数年前のクリスマス。

僕が記憶している、最も古いクリスマスの朝。

僕の幼児期、母に楽しいことはなんでも話してしまう子供だった。
「今年はサンタさんに何頼むん?」
「あんなー、んとなぁ、〇〇となぁ、それでなぁ、〇〇!」
「サンタさんひとり一個までって言ってたでー」
「……えっ!?(大ピンチの形相)」
そんな母とのやりとりをしていた僕の情報セキュリティは
実にガバガバだった。

その年に何をねだったのかは正直覚えてなくて
でも、サンタさんからのプレゼントが枕元に来る
という驚くべきイベントを自分の意志の下初体験したのがこの年だった気がする。
今みたいに「クリスマスプレゼント何欲しい?」と聞かれて
「欲しいものかぁ、難しいなぁ」なんて贅沢なことは言わず
一点突破で欲しかったスーパー戦隊のおもちゃをお願いした。

物心がついて初めてのクリスマスの朝。

頭を上に向けて、愕然とした。
「しまじろうの英語教材ビデオ6本セット」があった。

冒頭を思い出してみてください。

おがぁあああああしゃぁああ!!!
ぢがうぅぅううううううああぁあ!!!!

訳:おかあさん、ちがう

違うものがくるパターンってあるんだ。
メルヘン誤納品じゃん

それ以上に、あまりの号泣に
母も「え、そんなショックなの!?」と動転していた記憶がある。
それくらい、あの瞬間は今でも鮮明な主観映像として脳裏に焼き付いている。

それ以降、僕がサンタさんのお世話になり終えるまでの数年間。
「欲しいもののイラストと商品名を描いた紙を外から見える様に窓に貼る」
という対策が講じられることとなった。

そんな僕もクリスマスのプレゼントについて考える機会が出来たりして。
「そのうち俺も自分の子供からサンタ氏への情報リークをするのかぁ…」
なんてことも少しずつ視野に入って感慨にふける。

僕はひとりっ子で、発育過程でも問題山積な子で。
両親は初めての育児で。
初めて子供とサンタさんの間に立つ年だったんだ。

あのあとに見たビデオの中身は全編英語で、
わけわかんなくてより一層泣いて母さんにブチ切れてしまったけど。
きっとどうしたら喜んでくれるかを考えてくれたんだと思う。

大事なのは、値段でもいくつもらえるかでもなくて。
その気持ちを我が子に渡せることが、もう何より嬉しかったのかもしれない。

大人も子供も
大切な人とその気持ちを渡したり分かち合ったりするのが、
クリスマスプレゼントなのかもしれない。

当時の小さな僕にとっては
毎年毎年、もらえるのが当たり前で。
1つに絞ること自体の特別さもわからなかったあの頃。
何一つあたりまえじゃなかったんだなぁ…。

でも、プレゼントを待っていたあの日・あの時間は何よりも特別だった。

今ならわかる”特別”と、あの日に置いてきてしまった”特別”。

いつかその両方が交差して自分事として帰ってくるんだな
そんな風に考えられるようになりつつある自分の状況に
まずは、一つずつ感謝したい。

さぁ、今年はどんなクリスマスにしようか。
いつか来るあの朝のクリスマスまでは、少しばかり気楽に過ごせそうだ。

気に入ってもらえましたらよろしくお願いします