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FC東京vsアビスパ福岡〜理想と現実〜[J1リーグ第19節]

天皇杯でVファーレン長崎相手に敗退、サガン鳥栖に5-0で大敗と代表ウィーク明けに良い流れに乗れないFC東京。今節は1ヶ月ぶりの味の素スタジアムでアビスパ福岡を迎える。また九州勢じゃねえか!

FC東京は前節、サガン鳥栖に5-0の大敗。コンディション的にも厳しい試合ではあったが、メンタル面の弱さを晒すこととなった。これで公式戦3連敗。その3試合では計10失点と守備が崩壊中。

対してアビスパ福岡。実はこちらもかなり深刻。11節でFC東京をボコボコにした後、7試合で1勝2分4敗。その間僅か3得点。

前回対戦は11節。FC東京は森重とエンリケが立て続けに離脱した影響で小川をCBで起用した試合。しかし、そこの強度を狙われて5失点。この試合以降、アンカーをCB間に降ろして最終ライン3枚でのビルドアップはやっていない。今の段階ではそっちの方が良いと思うんだけどね。

詳しい試合内容はこちらから ↓

試合概要

メンバー

・FC東京
前節からは4枚変更。ポルトガルへ旅立った小川に代わり長友。ディエゴが怪我から復帰。紺野は柏戦以来5試合ぶりのスタメン。怪我で離脱となった安部が今季初の欠場となり渡邊がIH。そして東をアンカー起用。ボール保持の色合いが強いスタメン。

・アビスパ福岡
前節は3バックを採用したが、今節は4バックに戻してきた。GKの永石はJ1初出場。CHでは田邊が6試合ぶりのスタメンで前とコンビを組む。

前半

攻略の鍵となるエリア

FC東京が圧倒的にボールを保持する展開の前半。

それに対して福岡は4-4-2の守備ブロックを形成。2トップの山岸とルキアンがCBの森重と木本に対してアンカーへのパスコースを切りながら内切りプレスで制限をかける。

福岡の4-4-2ブロックを崩す鍵となるのが、2トップの脇のエリア。ここでCB以外の選手がボールを持った時、福岡はSHやCHが前に出て対応する。そのため、FC東京はこのエリアでSBやIHの前向きを作り、SHやCHを引き出すことで福岡の中盤4枚のラインに段差を作り出すことができる。

機能しない原因

では実際にFC東京は2トップ脇のエリアから上手く福岡の守備を攻略できていたのか?サイドに分けて振り返っていく。

右サイド
右サイドで2トップ脇のエリアを取るのはSBの長友。そして長友がこのエリアを取った時には福岡はSHの田中が前に出て対応する。田中を2トップ脇まで引き出すことができれば、福岡の左サイドは志知1枚となり、守備は薄くなる。

そして長友の立ち位置の取り方が絶妙。サイドに開きすぎずに少し内側に立つことで、サイドに張る紺野へのパスコースを作り出していた。サイドに開きすぎると田中に縦を切られる形となり、WGへのパスコースはできない。この少し内側の取り方が長友はホントに上手い。流石長友さんって感じ。

しかし、ここから上手く前進することはできなかった。その原因が紺野の立ち位置。長友からサイドに張る紺野まで繋ぐことはできたが、紺野がパスを受ける位置が低すぎてしまった。この低すぎた立ち位置によって田中が2度追いのプレスで対応できため、SBの志知を紺野の対応に引き出すことができなかった。

より高い位置を取ることができれば田中はプレスが間に合わなくなる。そうなれば、紺野と志知の1対1の勝負に持ち込んだり、そこに渡邊も絡んでのワンツーなどサイドを崩しやすくなる。長友が良い立ち位置を取っていただけに、この紺野の立ち位置はもったいなかったし、修正してあげて欲しかった。

左サイド
惜しいところまでいっていた右サイドとは対照的に問題だった左サイド。全く上手くいっていなかった。

左サイドではSBの佳史扶はサイドに張っているため、IHの松木が降りてきて2トップ脇のエリアを取ろうとしていた。しかし、このエリアで良い形でボールを持つことはできなかった。原因は降りてくる時の身体の向き。

松木が2トップ脇のエリアに降りてくる時、ボールホルダー(この場合は森重)に対して角度がない状態で降りて、正面の身体の向きになることが多い。つまり相手のゴールに後ろ向きの状態。後ろ向きの松木に田邉はついてくるため、ターンできず、そのまま森重に戻すことになってしまい、前向きを作り出すことができなかった。

上手く斜めに開きながら角度をつけて、半身の状態(言語化が難しい)で降りていくことができれば前向きでボールを受けることができる。そして田邉を引き出してライン間へ縦パスを通せたはず。松木はFC東京でも青森山田でも低い位置でのプレーはあまり多くなかったから、この辺りはその内身につけるだろうね。

また、松木の身体の向きよりも問題だったのが森重のプレーエリア。木本に比べて森重はサイドに開いた位置でもプレーをすることが多い。それはこの試合に限らず今季ずっとそう。

森重がサイドに開いた位置でボールを持った場合でも、CFのルキアンがプレスをかけに来る。そのため、2トップ脇のエリアが取れなくなり、福岡の中盤4枚を引き出せなくなる。

また、これは1つ前に書いた松木の身体の向きにも関連する問題。森重が内側に入れば松木も角度をつけて降りてきやすくなる。

今季のFC東京は最終ラインを2CBのみでビルドアップに取り組んでいる。2CBのみでも相手のFWを外すために、森重はサイドに開いてボールを持つことが多いのかもしれない。これは森重のビルドアップ能力が高いからこそできる部分。ただ、2トップ脇を取りたかったこの試合に関してはプレーエリアを狭めて、内側でボールを持った方がよかったのではないだろうか?

また、もう1つ。左サイドの2トップ脇のエリアで前向きを作ることができても、ライン間でパスを受ける選手が永井になってしまっていた。永井はライン間の狭いエリアでターンしたりなど細かいプレーは得意とはしていない。

17分50秒の場面では東が2トップ脇で前を向いて田邉を引き付け、永井へ縦パスが出たが、トラップが流れてパスは繋がらなかった。

この左サイドの選手の役割に関しては中村の負傷交代の影響が出てしまったところ。本来であれば、長友が下がり目の位置で永井がサイドに張り、松木がライン間を取るという配置にできた。しかし、中村が交代を余儀なくされて、左SBがサイドに張る佳史扶になったことで永井がライン間を取る役割となってしまった。なのでしょうがないかなって感じ。

こんな感じにいろいろな原因で上手くいっていなかった左サイド。それを見てしびれを切らしたかのようにディエゴがCFの位置から降りてくる。そして37分30秒のチャンスの場面。

ディエゴが2トップ脇で前を向いて田邉を引き出しライン間の松木へ。前選手を引き付けた松木は再びディエゴへ。スピードアップしたディエゴは渡邊とのワンツーで中央まで侵入してミドルシュート。永石の好セーブに阻まれたが、良い形でシュートまで持って行った場面。

2トップ脇のエリアを上手く取れていればこのような形はもっと作ることができたはず。ディエゴはその部分も分かって降りてきただろう。これを見るとまだまだ時間はかかりそうと思ってしまう試合だ。

ハーフタイム
1点ビハインドで前半終了。チームとしても上手くいかずに選手からもフラストレーションが伝わってくる前半。
ハーフタイムでは両チームとも1枚づつ選手交代。福岡はクルークスに代えて金森。FC東京は永井に代えてレアンドロ。前半のところで書いた永井の役割の部分でライン間を取るのが得意なレアンドロに変えてきた。いいね。

後半

得意な戦い方

後半開始早々にレアンドロの得点でFC東京が同点に追いつく。そして停滞感ともどかしさMAXだった前半とは打って変わって、縦に早い展開。

佳史扶と紺野がサイドで幅を取り、中央で松木、渡邊、レアンドロ、ディエゴの4枚がポジションを変えながら福岡の2CHの周りで動き回る。ここの数的優位を活かしながら縦に早く早くといった攻撃。

数的優位を活かしたって言うと聞こえが良いけど、どちらかと言うと福岡の強度がハーフタイムを挟んでガクッと落ちて前進できるようになった印象。疲れかな?

その後、紺野のスーパーゴールで勝ち越した後はもう殴り合いのような試合展開。FC東京はディエゴとレアンドロ、福岡は山岸とルキアンの2トップにシンプルに蹴ってカウンターの打ち合い。ある意味でFC東京らしい。と言うか今のメンバーだとこっちの戦い方が絶対に合っている。正直。

同点となった試合終盤はお互いリスク上等で攻め合う。この暑さの中でこんな試合したら怪我するで。アディショナル10分もやらされるし。

で、試合終了。引き分けだけど一応連敗ストップです。

おわりに

2-2。ホームで連敗は脱出した。

正直言って福岡も良くなかったと思う。ただ、その福岡に対して前半あれだけ停滞してしまうとかなり厳しいなと言った印象。まだまだ我慢が必要になりそうだ。後半は戦い方を変えて今までのFC東京らしい展開となった。上でも書いたが後半の戦い方の方がFC東京の選手の特徴にはマッチしている。

今季はアルベルトーキョー1年目の挑戦のシーズン。一歩づつ成長だとか我慢が必要と言うのは自分の記事でも何度も書いているし、アルベルさんも発言している。

我慢と言っても降格だけは絶対に避けなければならない。そしてそのためにはチームに新しいスタイルを浸透させながら勝ち点を積み上げなければならない。なのでこの試合の後半のように一度目指しているものから目を背けて、自分たちの得意な戦い方を選択することは全く問題ないと思う。そこはアルベルさんの判断。

ただ、その戦い方を選択したのならばしっかりと勝ってほしかった。それだけ。

試合結果
2022.7.2
J1リーグ第19節
FC東京 2-2 アビスパ福岡
味の素スタジアム

【得点】
FC東京
 49' レアンドロ
 63' 紺野和也

アビスパ福岡
 16' ルキアン
 78' フアンマ



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