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アビスパ福岡vsFC東京〜まさかの完敗 その原因は?〜[Jリーグ第11節]

5月はアウェーのアビスパ福岡戦でスタート。4月までの成績は5勝3分2敗、勝ち点18で4位。出来すぎ。

試合概要

メンバー

・アビスパ福岡
ここまで2勝5分3敗。5得点6失点と点が取れないけれど取られない。ちなみに5点中3点はG大阪戦。
前節の京都戦は1-0で5試合ぶりの得点5試合ぶりの勝利。スタメンはその試合と同じ。

・FC東京
こちらも前節G大阪戦で4試合ぶりの得点4試合ぶりの勝利。レアンドロが開幕戦以来に出場し即得点を決めた。しかしエンリケが負傷。これで森重、エンリケ、若東とCBに離脱が相次ぐ緊急事態。
ということでこれまで固定してきたメンバーを大きく変更。CBには小川がコンバート。佳史扶が今季初スタメン初出場。3トップはブラジルトリオ。今季初共演。CFにレアンドロを置くゼロトップシステム。

※前という単語と福岡の前選手が分かりづらいので一人だけフルネームで表記しています。ややこしいね。

前半

コーナーキックからいきなり失点。ゴール前でぐちゃぐちゃってなって押し込まれた。ディエゴがクリアかGKに取らせるかで後者を選択した結果失点になったわけだけど、この選択もチームとしてボールを大事にしようという意識があるからだと思う。こういう事故的な失点は起こりうるものだから切り替えて。

左サイドの機能不全

・FC東京のボール保持
FC東京のビルドアップではG大阪戦と同じようにアンカーの青木をCB間に降ろして最終ラインを3枚に。福岡の2トップに対して3対2の数的優位を作り出す。G大阪戦ではこの数的優位を活かしてCBが前向きになる状態を作ることが出来ていたが、この試合ではここのビルドアップが上手くいかなかった。

最終ラインを3枚にするFC東京のビルドアップに対して福岡はSHを一列押し上げて対応。2トップ+SHの3枚でプレスをかけることで3対3の数的同数を作り出してきた。このプレスに参加するSHは右のクルークスの方が担うことが多かった。このプレスはSHはSBのパスコースを切る外切り、2トップはサイドに誘導する内切りのプレスだった。

この福岡のプレスによってビルドアップがなかなか機能しないFC東京。特に左サイドは機能不全に陥っていた。その原因は主に2つ。

1つ目が小川のボールの持ち方。この試合はCBの小川に対して福岡の2トップが内切りでプレスをかけてきたとき、小川は相手に対してボールを隠すようにして持つことが多かった。

例えば11分55秒の場面。青木から小川へパスが出る。この時、内切りでプレスに来る山岸に対して小川はワントラップ目でボールを隠すような体の向きとなる。ボールを隠せば相手に奪われることはなくなるかもしれない。しかし、この体の向きだと切り返してプレスを外すこともできないし、GKに下げることも難しい。つまり小川の選択肢はかなり限られており、福岡の選手は次にボールが来るエリアが予測しやすくなる。

こういう場面のボールの持ち方は相手に対して正対することが重要になる。先ほどの場面のほんの少し前の11分50秒。青木からパスを受けた木本はプレスに来る北島に対して正対してボールを持っている。そのため、サイドのアダイウトン、中央のレアンドロ、裏へのボール、切り返して後ろに下げるなど多くの選択肢がある。

結果的に木本は切り返して北島のプレスを外し青木に下げ、その流れで小川に渡って11分55秒の場面まで繋がった。このように相手に正対することは重要。画像より映像の方がずっとわかりやすいのでぜひ見返してみてください。小川のボールを隠す持ち方は11分55秒の他に10分30秒、29分05秒、49分50秒(前半のアディショナルタイム)とか。

慣れないCBで相手がガンガンプレスに来たら難しいもの。逆に53分30秒の場面は小川が正対して相手のプレスを外せてる。なので慣れてくれば絶対できる。こういうのって自分じゃ気づきにくいと思うからスタッフ陣の腕の見せ所。

2つ目の原因が佳史扶の立ち位置。小川がボールを持った時、サイドに張る佳史扶の立ち位置が高すぎるため、小川→佳史扶のパスコースが開通していないことが多かった。CBからSBへのパスは当然相手のSHは狙っているし、ここでカットされると一気にカウンターとなる。

この時、ボールよりも自陣ゴール方向にいる(カウンターに対応できる)FC東京の選手はCBとアンカーの3枚、対して福岡の選手は2トップに加えてパスカットしたSHがFC東京のSB(サイドに張る選手)を置き去りにして勢いを持ってカウンターに移る。非常に危険なカウンターだ。絶対にカットされるわけにはいかない。

12分20秒の場面がまさにそうで、小川から高い位置にいる佳史扶に超高速パスが出るもズレてタッチラインを割っている。これもただ小川がパスミスしたのではなく、佳史扶の位置が高すぎるので普通のパスだとクルークスにカットされ一気にカウンターを食らう。だからカットされないように速いパスを出さなければいけない状況だった。

この時、佳史扶がもう少し低め、ちょうどズレた小川のパスが出たあたりにいれば、普通にパスを受けて前進できていただろう。まあ佳史扶も怪我明けで練習に合流したばかりだしまだまだこれからだね。

ゼロトップレアンドロ

ビルドアップで青木がCB間に降りた時、もともといたアンカーの位置に誰かが入ってくる必要がある。G大阪戦ではここに左SBの小川やIHが入ってくることが多かったが、この試合ではCFのレアンドロが下がってきてポジションを取っていた。

CFのレアンドロがアンカーの位置まで下がれば福岡のCBは流石についてくることはできない。そうすることでレアンドロとIHの松木、安部で中盤を3枚として福岡の2CHに対して3対2の数的優位を作る狙いだ。

しかし、レアンドロをアンカーの位置まで下げる形は上手く機能せず。確かにCBはついてこないのでレアンドロはフリーとなっていたものの、かなり早い段階で降りてきていたので福岡の2トップにパスコースを消されて、ボールを受ける場面はほとんどなかった。また、2トップのコース切りで対応できていたため、CHの前と中村はそのまま安部と松木のマークに集中することができた。そのため、このレアンドロのポジション移動によって福岡の4-4-2のブロックを動かすことができていなかった。

FC東京はレアンドロをアンカーの位置まで下げる場面を減らして、代わりにIH、特に安部が入るように。安部がアンカーの位置まで下がると前寛之はマークについてくる。これによって2CHにそれまでなかった段差ができる。前寛之が安部に引き付けられてできた背後のスペースでパスを引き出せるようになった。

40分20秒の場面では安部に引き付けられた前寛之の背後のスペースでアダイウトンがパスを引き出す。そこにレアンドロも絡み福岡の2CHを引き付ける。そしてアダイウトン、レアンドロの連携で密集を脱出して広いスペースがある逆サイドの佳史扶まで展開できそうだったけど、アダイウトンからパスは出なかった。でもいい形。

こんな感じで前半は中盤の数的優位を活かして上手く前進できている場面もあった。ここの部分に関してはアルベルさんも好感触はあったよう。

中盤の中央で数的優位をつくることを狙ってこのような配置にしました。そして、それは十分に効果が出ていたと思います。福岡のセンターバックが強いということは予想していました。それゆえに、そこで戦うのではなく別のゾーンで戦うということを狙っていました。特に前半は中盤の中央で上手く数的優位を作って、そこから上手くチャンスを作り出していたと思います。
https://www.fctokyo.co.jp/fanzone/fctokyofanzone/detail/222

ハーフタイム
FC東京は選手交代なし。アビスパ福岡はフアンマ、北島に代えてルキアンと田中を投入

後半

3失点目の原因は

48分にルキアンに決められて3失点目。前半に続いてまたも立ち上がりに失点。この失点シーンのクロス対応で前に入られた小川を批判する言葉も見られたけど、自分はそれは違うと思う。詳しく。

サイドで田中からパスを受けた前にアダイウトンと安部が引き付けられる。その2人の間を簡単に通され田中に再びパスが通る。ここで安部がプレスに行っているにも関わらずアダイウトンが前に引き付けられて田中を外してしまったのが問題点。ブラジルトリオを同時起用した時は余計守備を考えなければならない。誰かに言われたのか自分で気づいたのか3失点目の後はアダイウトンが頑張って田中にピッタリついていた。次の試合でも頑張って。

で、田中にパスが通り、サイドで長友に対して田中と志知で2対1となった。志知がハーフスペースを狙う動きをしたので木本がサイドに引き出される。FC東京ではハーフスペースのケアはIHの役割だが、安部は前へのプレスで引き付けられていたため戻りが間に合わなかった。

そして木本が引き出されたことで小川はゴール前の広いスペースを1人で守らなければならなかった。小川はクロス対応が上手い選手だが、CBとSBでは対応の仕方が全く異なる。SBでは基本的に自分の前を守るのに対して、CBは前も後ろも守らなければならない。

なのでCBが本職ではない小川にゴール前の広いスペースを1人で守らせてしまったチームの守備が失点の原因。1人に押し付けるものではない。

その後、前がかりになったFC東京に対して福岡はロングボール2本でFWの強さを活かして2点追加。終わってみれば5失点の完敗となった。

おわりに

まさかの5失点。試合全体を見ると戦い方の相性や試合運びで大きく上回られた。

今季のFC東京の最大の長所は中盤の強度。WGの外切りプレスで中央へ誘導して松木、安部が強度の高さでボールを奪いショートカウンター。これが一番の得点パターンだった。

しかし、この試合ではWGが外切りプレスに行く場面は全く無し。ほとんどの時間でFC東京がボールを保持していたこともあるが、福岡はFC東京がプレスに行く前にロングボールを2トップに蹴っていた。つまり、FC東京の強みである中盤を飛ばされてしまった。しかも森重、エンリケの怪我により、FC東京は小川をCBに使わざるを得ない状況。ここの競り合いでは福岡が完全に有利。

更に福岡に多くの時間でリードされてしまったことでFC東京は攻めなければいけない状況に。これによってよりCBが晒される展開となった。

かなり厳しい結果を突き付けられたが、アルベルさんも言っていたようにこの試合は始まる前から難しい状況だった。森重とエンリケは長期離脱で戦線を離れるが試合は続く。ここを乗り越えることができれば戦力の厚みは増す。出てくる選手を信じて応援するしかない。

試合結果
2022.5.3
アビスパ福岡 5-1 FC東京
ベスト電機スタジアム

【得点】
アビスパ福岡
   4' 宮 大樹
 39' 山岸 祐也
 48' ルキアン
 62' 山岸 祐也
 72' ルキアン

FC東京
 24' 松木 玖生

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