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通信ケーブルを持っている奴がヒーローだったあの頃

小学1年生の頃に欲しかった物と言えば、真っ先に『通信ケーブル』が思い浮かぶ。

ポケモン第1、2世代を生き抜いてきた同志ならわかってくれると思うが、当時は今のようにワイヤレス通信など存在しない。「わいふぁい? 何それおいしいの?」というレベルである。

したがって、通信機能を利用するには、外付けの通信ケーブルが必要だった。

ところが、我が家にそれはない。ゲームボーイとポケモンのソフトは2個ずつあるのに、それらをつなげる通信ケーブルがない。

もちろん通信ケーブルがなくても十分に楽しめるのだが、その存在を知ってしまったからにはやってみたくなるのがポケモン大好きキッズというもの。

そんな時代では、「うち、通信ケーブルあるよ」と言おうものならその時点で英雄扱いされる。通信ケーブルはステータスだった。小学校でモテるのは、足が速い奴か通信ケーブルを持っている奴と相場が決まっていた。


“通信”ケーブルと言っても、せいぜい数十cmサイズ。通信機能で遊ぶにも、実際に友達の家を訪れる必要があった。

現代のようにリモートで、テレビ電話で、インカメラとヘッドセットを用意して、なんてことはなく、「会って遊ぶ」の延長だ。

そう考えると、昨今の技術は素晴らしい。
未知のウイルスによる脅威にさらされても、(職種によるが)リモートで働くことができる。
友達と遊ぶにしても、わざわざその人の家に電話して、すると親御さんが出て、ドギマギしながら「○○くんいますか?」と代わってもらって、遊ぶ約束を取り付けて、その家まで自転車をガチャガチャ漕いでいく、なんてこともない。
スマホ一つで直接本人に連絡できるし、そのまま通話しながらゲームができる。


しかしながら、こんなことを言うと年寄り臭いかもしれないが、あの頃はあの頃で楽しかった。

当たり前のように学校へ行き、勉強して給食を食べて。
帰ってきてから友達と遊んで、ときにはケンカして、暗くなる前に帰って。
夜は自動的にご飯が出てきて、お風呂に入って、ゲームして、ゲームしすぎて親に怒られて、布団に入って。
そして、次の日も同じように過ごしていく。

今ほど便利ではなかったにせよ、むしろ便利ではなかったから、コミュニケーションが盛んだった。

今ではインターネットで調べればすぐにわかるゲームの攻略情報も、攻略本や口コミで仕入れる。
通信交換しないと手に入らないポケモンも、誰だかわからない赤の他人からではなく、目の前のよく知る友達からもらう。

インターネットがないのがスタンダードだったし、多少の不便があればこその充実感というのも確かにあった。

別に、今の便利さを否定しているわけではない。逆に便利になって嬉しいくらいだ。

でも、不自由なようで自由に生きていたあの頃が、時折とてつもなく懐かしくて、まぶしくて、僕は泣きたくなる。


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