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「いい人」の条件

今日も今日とてバイト。落ち葉を拾いまくりんぐ。

このバイトも今日で3日目となるが、周りの人たちもだんだん慣れてきたのか、けっこう僕に話しかけてくれるようになってきた。まぁ、僕はあなたがたのお名前を存じ上げないのだが。自己紹介って、新しく来た人だけすることが多いもんね。

昼休憩の時間、いつものように休憩室へ戻り、各々お弁当を食べ始める。今日は、スタッフの一人がカレーを差し入れしてくれた(ご丁寧にご飯も用意してくれた)ので、結果的にお弁当+カレーでお腹がパンッパン。
休憩所には70代くらいのおじいさんばかりだったのだが、
「おお、(カレーの後に)弁当も食うのか!」
「若いから食えるべ!」
と激励されながら、いつもよりペース早めにお弁当をかきこんだ。
お母さん、カレーくれたおじさん、どちらもごちそうさまでした。


昼食後、僕は決まって昼寝をするのだが、今日はそうしなかった。
いや、できなかったと言ったほうが正しい。
なぜなら、おじいさんたちに話しかけられていたからだ。

断っておくと、それが嫌だったわけではない。ただ、まぁ、いっぱい食べたから眠くなるじゃないですかぁ・・・

母の作ったのり弁をもぐもぐしていると、談笑しているおじいさんたちの口から不意に僕の名前が。

「アルロンさんなら詳しいんじゃないの?」

よくよく聞いてみると、家畜がどうのと話していたようだ。僕が畜産系の大学を卒業していることはすでに知っていたらしい。

「いや~、そっちの分野は専攻してなかったんで・・・」
「あの大学は、獣医もあるよね」
「そうですね」
「畜産と、獣医と、あとなんだ?食品加工とかか?」
「ありますね。あとは農業とか野生動物とかですかね」
「獣医でコロナウイルスの研究してる人いないの?」
「あー、いるかもしれませんね」
「獣医疫学とかあるもんな」

こんな感じで会話が繰り広げられ、気がつけば昼休憩が終わる頃になっていた。久しぶりに両親以外の高齢者と会話したかも。


午後の作業が始まってすぐ、僕はある疑問を抱いた。

「なぜ、自分はよく人に話しかけられるんだろう?」

漫画などで、おばあさんが道を尋ねるシーンがある。
あれ、現実で本当にあるんだね。
昨年、僕は経験したのだ。確か、「駅はあっちに進めばいいのかい?」みたいなことだった気がする。目的地が駅というのも、ベタな感じがして尚良し。

でも、なぜ僕だったのだろうか。都会だったので、ほかにも人はいただろうに。

思うに、僕が「いい人」っぽい雰囲気だったのだと思う。
すごくアバウトな表現だが、表情とか風貌とかが温厚そうで、真面目そうで、人畜無害そうで、なんとなく全体の雰囲気が話しかけやすいオーラだったのかなぁと。
自分で言うなよと思わなくはないが。

実際のところは、確かに人に頼まれたら断れないタイプだし、元役場職員ということもあって人とのコミュニケーションはけっこう気を遣う方だと思う。気は短い方だが、基本的にすぐ怒ることはない。
聞き上手と言われたことも何度か。父にも「お前はしっかり聴いてくれるから話しやすいな」と言われたことがあるし。

一方で、ともすれば押しに弱い、頼りないといった印象を持たれがちなのが玉に瑕。強く言い負かされたり、面倒事を押しつけられたり、優柔不断なところが心証を悪くしたり。
つまりは、ナメられやすいのである。

とはいえ、意外とこの「いい人」感は、欲しいと思って簡単に手に入れられるものではないのかもしれない。
まぁ、あくまでも「いい人」”感”であって、実際にいい人であるとは限らないとしても、だ。
本当は「いい人」なのにそう見られない人もいるだろうから、印象としての「いい人」は大きなアドバンテージとなり得ると言えよう。


おお、実はアルロンって、けっこうイケてるんじゃない?なんだか気分が乗ってきたぞ。一曲歌っちゃおっかなー。

♪けんがいのぉ、ちょうせ~んしゃぁ、じゃがいもみたいな面さげてぇ~
♪そらいけとぉ、とびこ~めばぁ、いい人どまりで終わるオチぃ~


答えはいつも薄情な涙の味しかしない。


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