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天気図の世界

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天気図に関する話題を取り上げ、Pythonを利用した天気図の作成方法についても紹介します。気象にある程度知識があり、事例解析などに興味がある方や、天気図を作成したい方々を対象とし…
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#気象

「天気図の世界」について

「天気図の世界」について

マガジン「天気図の世界」のコンテンツは、様々な種類の天気図の紹介やMetPyを利用した天気図作成コードの解説、豪雨などの事例解析などからなっています。コードにのみ関心がある方、事例解析にのみ関心がある方などもいらっしゃると思います。そこで、コンテンツの分類と各コンテンツの簡単な紹介をします。気になったコンテンツを読んでいただければ幸いです。今後も、コンテンツを増やしていきます。

紹介しているコー

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関東地方南部における南岸低気圧接近・通過時の降雪と発雷

関東地方南部における南岸低気圧接近・通過時の降雪と発雷

関東地方南部では、冬季に本州の南岸を東へ進む低気圧、南岸低気圧によって雪が降り、積雪になることがあります。この気象学的な構造はよく知られていて、東京管区気象台のホームページに詳しい解説があります。

2024年2月5日、低気圧が関東の南海上を東北東へ進みました。東京では雪が降り積雪する中、同時に雷も観測されました。過去にも関東地方南部において、南海上を低気圧が接近・通過する際に降雪と発雷した事例が

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(3)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(3)

850hPa面のQベクトルの収束・発散総観規模擾乱による上昇気流の励起を確認するために、850hPa面のQベクトルの収束の天気図を作成しました(下図)。赤のシェードがQベクトルの収束域で上昇流が励起されるエリアと推定できます。

図の実線は等高度線を示しています。850hPa面の低気圧(地上の低気圧Aと対応)が北緯43度付近の大陸から日本海北部を東進し、北日本を通過しています。17日9時から18日

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700hPa面湿数、500hPa面気温の天気図(2)

700hPa面湿数、500hPa面気温の天気図(2)

500hPa面の気温について現象に伴う特徴的な500hPa面の気温の分布には、主に次のようなものがあるでしょう。
・トラフに伴うサーマルトラフ
・発達した低気圧の前面のサーマルリッジ
・気団の縁や前線帯に伴う等温度線集中帯
・熱帯低気圧や台風の暖気核
・寒冷渦などの寒気コア
・太平洋高気圧に伴う暖かい領域

500hPa面気温場の把握対象としては、上記の項目に加えて、解説で利用される大雪の目安とな

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700hPa面湿数、500hPa面気温の天気図(1)

700hPa面湿数、500hPa面気温の天気図(1)

気象庁ホームページで公開されている、気象庁数値予報天気図には伝統的な主な予想天気図が5種類あります。
 ① 500hPa面高度・渦度の天気図
 ② 700hPa面湿数と500hPa面気温の天気図
 ③ 850hPa面気温・風と700hPa面鉛直流の天気図
 ④ 850hPa面相当温位・風の天気図
 ⑤ 地上気圧・風と降水量の天気図
それぞれの例を図1に示します。今回は、700hPa面湿数と500h

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(2)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(2)

前回は、昭和39年7月山陰北陸豪雨の大雨の状況を確認し、地上前線解析から大雨の要因を考察しました。今回は、大気の静的安定度や南北断面図、ジェット気流に関連する上層発散に着目して大雨要因について検討します。

大気の静的安定度前回の地上前線解析から大雨時に金沢は前線の暖域内、松江では前線の近傍の暖域側でした。不安定性降水による大雨の可能性が考えられるため、大気の状態が不安定であったかを確認します。J

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JRA-55のデータを使ったエマグラム

JRA-55のデータを使ったエマグラム

再解析データ(JRA-55)からエマグラムを作図するコードのご紹介です。

JRA-55のエマグラム作成の動機昭和39年7月山陰北陸豪雨の事例解析を行なっています。JRA-55で作成した断面図を解析していると、ポイントのエマグラムを確認したくなりました。前線の遷移層の高度、暖域内の大気の安定度など断面図からも読み取れますが、エマグラムの方がより正確に読み取れ、これを参考にすることで断面図解析をより

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昭和39年7月山陰北陸豪雨(1)

昭和39年7月山陰北陸豪雨(1)

JRA-55を活用した、豪雨の事例解析です。3回に分けて掲載する予定です。

JRA-55を利用する上では、次のことを注意して解析することにしています。利用している格子点データの空間間隔は緯度・経度1.25度毎、時間間隔は6時間毎です。このためにメソスケールの現象を考察することは難しいため、総観場の気象状況中心の事例解析となります。メソスケール現象について考察する場合は、総観規模擾乱により生じる環

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JRA-55を使った地上天気図

JRA-55を使った地上天気図

JRA-55(NetCDF形式)を利用して、地上気圧や風、温位、降水量を天気図として作図するコードについて紹介します。このコードで作図した天気図を下に示します。1991年台風第19号(通称リンゴ台風)が長崎県に上陸間近の9月27日15時の天気図です。この時の中心気圧は935hPaでした!

この記事の最後に、サンプルコードを掲載しています。ご利用ください。

地上天気図ご存知の通り、地上天気図は最

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地上天気図解析とプロット図作成コード

地上天気図解析とプロット図作成コード

地上天気図解析の概要と、この解析のために地上観測をプロットした地図を作成するPythonのコードについて解説します。

この最後に、実行可能なサンプルコードを添付しています。説明用に示すコードは、わかりやすさ重視でそのままでは動作しません。ご留意ください。

地上天気図解析について地上天気図には、気象台や空港で観測された気圧や気温、風、雲量などの情報がプロットされています。これら観測データから等圧

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エマグラム

エマグラム

エマグラムは、対流圏の成層状況などを確認することができます。2012年につくば市で竜巻が発生した日のエマグラムを紹介し、MetPyを利用してエマグラムを作図していきます。

この記事の最後に、サンプルコードを用意しました。記事の中のコードは、わかりやすさを重視し、それだけでは動作しません。ご留意ください。

つくば市の竜巻2012年5月6日につくば市では竜巻(F3)が発生しました。軽自動車が宙を舞

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リンク集

リンク集

MetPyや天気図に関する情報入手のリンク集です。随時更新していきます。

MetPyなどの天気図作成に関するリンク集・本家本元のMetPyのページです。

・MetPyの開発者Blog。MetPy Mondays は動画で解説されています。

・xarrayのページです。データセットを作成する際に、お世話になってます。

・地図を表示する際にお世話になる、Matplotlibとcartopyのペ

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JRA-55を使った力学的圏界面の天気図

JRA-55を使った力学的圏界面の天気図

今回は、圏界面付近の気象状況を把握できる等渦位面天気図を作図します。

力学的圏界面について力学的圏界面(渦位1.5PVUや2PVU面)における温位や風、気圧を描画した天気図を作成します。この天気図からJETや力学的圏界面の高度や、圏界面の折り込みなどを確認することで、対流圏における中緯度の上層擾乱などの構造把握の参考となります。下層擾乱との相互作用としての温帯低気圧の発達においては、圏界面下降な

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JRA-55から天気図を作成する

JRA-55から天気図を作成する

これまでは、気象庁GSMのGRIB2形式のデータから天気図を作成してきました。今回は、JRA-55のデータを表示させるために、NetCDF形式のデータ読み込みについて説明します。描画のコードは前回までと変わらないため省いています。

京都大学のサイトでは、気象庁JRA-55のNetCDF形式のデータをユーザー申請するとダウンロードできるようになります。これを利用すると、1955年以降の天気図を描画

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