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東大卒無職の「楽しいあの世」

私はうつ病を20年近く患っています。寛解(少し良くなること)と再発・悪化を繰り返して今に至ります。希死念慮(自殺への衝動)を抑えて今まで生きて来られたのは、周りの方々や家族の支援のおかげです。ただ、自分なりに工夫したこともあります。それが「楽しいあの世」です。

「楽しいあの世」は、自分が死んだあとにどのようなあの世に行きたいかを真剣に考えることで、逆に今生きている中で大切なことを発見するアプローチです。自分が望むすべてが叶う楽園のようにあの世をとらえることがポイントです。私のケースを具体的に言います。

まず地獄は除外。これは当然ですね。楽しくないですから。そして輪廻転生的な、この世にまた別人あるいは別の生物として戻ってくるのも除外します。この世は弱肉強食で、戻ってくるには辛すぎるし魅力に欠けているからです。

私が望むあの世は以下のようなものです。

自分が絶好調だった若いころの肉体のまま病気もなく永久に生きられる。死んでしまった自分の身内やペットなどにまた会うことができる。自分より後に死ぬ身内や友達も死んだ後は会える。自分が集めた本や思い入れのある物品は、(たとえ現実には無くなったり壊れたり捨ててしまったものですら)持ち込むことが出来る。続きが気になっている作品などは、この世での時間経過に合わせて楽しむことが出来る。際限なく贅沢な食べ物や服などを楽しむことが出来る。自分が理想とする相手と、恋愛や結婚生活を自由に楽しむことが出来る。自分が作った作品などを発表し、共有、評価されることが出来る。あの世にいる偉人等に会うことが出来る。

とりあえず今望むことを書き出してみました。恥知らずなほど贅沢ですね(^_^;) これを真剣に考えるのです。より具体的であればあるほどいいです。優先順位(おおざっぱでいい)がつけられていればなお良しです。

こんなことをして何がいいのか?それには2つの理由があります。

1つめは、あなたが自分がどんな人間であるのかを知ることが出来るからです。人は今まで生きてきた経験(本や映画等の影響も含む)で得たものの中からしか、想像の世界を思い描くことは出来ません。あなたが思い描いた「楽しいあの世」像には、あなたが望むもの、逆に望まないものが具体的に書かれているはずです。そこには、自分が生きていて楽しい(楽しかった)こと、大切にしている(いた)こと、失ってしまったけれどもう一度欲しいものなどが詰まっているはずです。

例えば私の場合で言うと、永遠に若く病気無く生きられる、というのは自分が自分でなくなるのはイヤということですね。死んでしまったペットや身内に会えること、というのはそれだけ大切にしていたものを失った悲しみと、それと再会したい強い願いです。自分より後に死ぬ身内や友達に会うことが出来るというのは、彼らには彼らの人生を全うしてもらってから会いたい、という気持ちが表れています。自分が大事にしている(いた)物品を持ち込むことができるというのは、もっと具体的に書いたらより自分が大事にしているものが見えてきます。より具体的には、集めてきた漫画や本、映画等のディスク、パソコン、ぬいぐるみやフィギュア、手紙やメールなどです。長くなりすぎるのでこの辺りにしておきますが、「楽しいあの世」を具体的にすればするほど、自分が今現在、大切にしているものが分かってきます。

2つめは、死ぬのが怖くなくなると同時に、死にたくなくなる、ということです。心から自分が望む「楽しいあの世」に行けると信じて死ねたなら、それは幸せな死となるでしょう。大事な人やペットが死んでしまった時も、その人たちは「楽しいあの世」に行けたのだ、と自分を納得させることが出来ます。逆にこんな考え方は胡散臭いと感じた方は、簡単には死ねないと思ってくれるはずです。

私の望みのところに「永遠に若く病気もなく生きられる」がトップに入っていますね。希死念慮によって常日頃から「死にたい」などと考えている自分の思考からすると、この望みは矛盾しています。ここから考えると、私の本当の望みは「生きたい、死にたくない」なのです。私が常日頃思っている「死にたい」は、本当は「死ぬほど疲れているから回復するまで休みたい」の略だったりするのです。

また、私自身このような「楽しいあの世」がある、と心から信じるにはいろんなことを知り過ぎています。科学的観点からいえば、感情も経験も脳のニューロンの配置や発火のパターンに過ぎず、人も動物も死ねばただの物質となって自然の循環の中に還っていくだけです。そうすると、こんな怪しい話に乗って今死ぬのは賢明ではない、怖い、だから死ぬのはやめようということになります。

さらに、何らかの理由で死ぬときになってみてその恐怖に直面した時、「楽しいあの世」を思い描けていれば、その恐怖は少しは和らぐのではないでしょうか?私自身まだ死ぬほどの目には遭っていないので、単なる思考実験の域を出ないのですが、「地獄に落ちる」などと考えて恐怖を増長させるよりずっと健全です。

自分がどんな人間かわからなくて悩んでいる方、やりたいことが見つからない方、大切なものを無くした方、病気で苦しんでいる方に少しでも自分の考えが役に立てばと思い、この記事を作成しました。「楽しいあの世」を考えることを通じて、皆様の苦しみが少しでも和らぐことを心からお祈りしています。

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