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現役プランナーがゲームの世界観を考えるときにしていること <前編>

1、はじめに

DRIVE.です。
普段はネット上で作編曲・イラスト制作をしながら、ゲーム会社にプランナーとして1年半勤務しています。

前回は、こちらの記事でゲームプランナーになった経緯についてお話しました。沢山のご反応をいただき、閲覧回数は5000回以上となりました。大変嬉しく思います。ありがとうございます。

今回からは、プランナーという立ち位置の中で、ゲーム開発のときにどのような考え方をしているのかを解説していこうと思います。

「企画」の他にも、「仕様」や「ターゲット」の見立てや作成、「アイディア考案」や「世界観構築」など、プランナーには色々な事柄について考える必要があります。
1つ1つの事柄について、今後は考え方を文章に書き起こしていくつもりです。あくまで私なりの考え方、個人の意見となりますが、何かの参考になればと思います。

今回は、VRChat上で開催した「ゲームプランナー講演#2」で話した内容である『ゲームの世界観を考えるときにしていること』についてです。
<前編>と<後編>に分けて投稿致しますので、是非全て読んでいただければと思います。


2、『世界観』の定義、工程と調査

『世界観』の定義としては、一般的に以下のようになっています。

「世界についての統一的で全体的な理解。
 客観的な対象把握(世界像)にとどまらず、
 人の主体的な意義づけ・関係づけによって成り立つ」

こんな風に辞典に載っている言葉そのままだと、ちょっと難しいです。恐らく、宗教等における考え方から来ている言葉だからだと思います。

ですので、私個人の見解として、少し崩して「創る側」に分かりやすい言葉にしてみましょう。

「作られた世界について統一された、変わることのない設定と物語」

ゲーム、もしくは小説・ライトノベルにおいて世界観は殆ど一から作るものです。そして作った世界観は、舞台となる世界を丸ごと移さない限りは変わりません。

世界を移したら、移動先の世界観も新しく考えなければなりませんからね。
また、世界を移動する手段さえも考える必要があり、考える事柄が増えてしまいます。まず作ってみたい、という方は1つだけの世界を作りましょう。

世界観を一から作る。私はゲームを作る行程の中では、これが一番好きです。皆さんも頭の中で考えてみたり、もしくは作品として作ってみたりしているでしょう。

でも、実際に自分が作った世界観を、他人に伝えようとするとなかなか難しいものです。ゲームを作っても、世界観に問題があるとゲームの雰囲気や内容にとても影響します。

企画書を作成する段階でも、世界観のページを作るのですが、そこには出来る限り分かりやすい、短い文章でその世界観の魅力を伝えなければなりません。また、主人公のイメージイラストと共に、簡単なストーリーのあらすじを載せることもあります。

出来る限り簡単に、分かりやすくして、より世界観を、よりゲームを魅力的に見せるようにするためにはどうしたら良いのか。

一貫した設定を作ろうとしても、どうしても複雑になる問題を解決する必要があるため、「工程」と「調査」と「参考」を大事に取るべきだと、私は考えます。

作る上で「行程をしっかりと踏む」こと、「色々なものを調査して参考を多く取る」ことが大切です。では、あなたも筆を手に取って世界を創造してみましょう。


3、必ずコンセプトから

まず、世界観を考えるにあたって最初にやるべきことは『コンセプト』を決めるところからです。コンセプトが決まっていないと、世界観の内容を決めようとしても、大枠と方向性が決まっていないので設定の統一が出来ない…雰囲気にバラつきが生じているような…といった現象に陥ります。

私が楽曲制作するときに、その楽曲に関してのコンセプトと世界観をしっかり決めていないと作り進められない感じになる、迷った感じになる、というのもこれが理由だと考えています。

大まかなもので構わないので、コンセプトから始めていきましょう。

これはやりたいと思った“ゲームジャンル”&“世界のジャンル”から
考えることができるので、まずはそれを決めていきます。

一番良く見られるのは「RPG」&「ファンタジー世界」
とはいえ、ファンタジー世界の中にも豊富な種類があります。RPGというジャンルも同様です。

「SF」の世界にしようとしても、それは現実の世界を舞台にしたSF?別世界でとても科学が発達したSF?そしてRPGはシンプルなコマンドバトル?戦略を立てるストラテジーバトル?
どんなものがあるか、既存のゲームを調べてみると…とにかく色々なパターンがあり、豊富です。

今回は例として、私が実際に考えたものでお話を進めていきます。今回私がやりたいのは「ハイスピードアクションRPG」です。
ゲームジャンルであれば「RPG」という大枠の中から少し深掘りできれば、
その要素から世界観を想像しやすくなります。

では、そのジャンルに合う世界観は少しずつ絞ることができますね。移動が素早く行える世界、つまり「移動魔法が使えるファンタジー世界」か「移動技術が発達しているSFの世界」です。

しかしながら、これだけでは「ハイスピード」の要素だけです。もう少し「アクション」から上乗せしてみましょう。

「ハイスピードアクションRPG」の中で何を他人にゲームとしてやらせたいのか。何が魅力になるのか。

“疾走感と爽快感があり、それを体験させることができる”という風に考えると、世界観の大枠となるキーワードも出てくると思います。

・「移動魔法が使えて、モンスターを様々な剣術と魔法、特別な力で薙ぎ倒す者達がいるファンタジー世界」
・「移動技術が発達していて、正体不明の怪物を戦闘用の装備を使って薙ぎ倒す者達がいるSFの世界」

次第に具体的なものが出来てきました。
今回は、私個人の好みではあるのですが、「ファンタジー世界」の方をやりたいと考えていたので、「移動魔法が使えて、モンスターを様々な剣術と魔法、特別な力で薙ぎ倒す者達がいるファンタジー世界」

こちらに決定しましょう。

さて、これで世界観のコンセプトが完成…としたいのですが、実はまだ足りません。“ゲームジャンル”のキーワードから、次は“デザイン”のキーワードで大枠にもう一声付け足します。

「ファンタジー世界」だとしても「洋風」か、それとも「和風」かによって、デザインの設定がガラっと変わりますよね。
また、比較的平和でポップな方向性なのか、少しシリアスで重みのある方向性なのか。デザインだけではなく、名称諸々にも凄く影響します。

今回はメジャーで分かりやすく、取っ付きやすい「洋風でシリアスな」で統一することにしましょう。

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「ハイスピードアクションRPG」
       ×
「移動魔法が使えて、モンスターを様々な剣術と魔法、
 特別な力で薙ぎ倒す者達がいる洋風でシリアスなファンタジー世界」
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これで、世界観を考える上での『コンセプト』が出来ました。

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・やりたいと思った“ゲームジャンル”&“世界のジャンル”を書き出す。
・“ゲームジャンル”のキーワードから、他人にゲームとしてやらせたいことに関連する事柄を書き出す。
・複数出来たら、一番やりたいと思ったものに決める。
・“デザイン”のキーワードから、もう一声付け足す。
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この手順で、ここまでの大枠と方向性が決まれば、スムーズに世界観を創ることができます。『コンセプト』から、創り出していきましょう。

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▲VRChatでの「ゲームプランナー講演#2」にて、コンセプトについて解説している時の様子


4、やりたい創造から見出す

コンセプトが決まったので、細かく世界観を決めていこう…と、その前に。

コンセプトを決める手順の上で、ポイントにしている部分が1つありました。“やりたい”という動機を基準にしていたと思います。
この動機は、単純に“好きだから”“面白そうだから”“良いと思ったから”…といった理由から生まれます。

最初に決めるにあたって、ゲームジャンルや世界観については指定が無い限り、とても自由度が高いものです。自由度が高い分、逆に迷うかもしれませんが、ここはあなたの“やりたいこと”を貫き通しましょう。そうすることで、これからの世界観の創造に対してモチベーションが保てます。

やりたいと思っていない、作りたいと思わない世界は、創造してもあまり深みが出ません。自分がそんな風に納得していないモノは、他人から見ても必ず引っ掛かりがあるモノになってしまいます。

「楽しく創造する」ことができれば、創る上でポジティブ・プラスな思考ができ、良いアイディアが生まれやすくなります。これで構築していくことで、深みのある世界やモノが出来上がる可能性が上がる、と私は考えています。

否定的になってしまうと、いつかは、どこかで使えそうなアイディアさえも自分で却下してしまう可能性が高くなります。ですので、まずはアイディアに対して肯定的になるのが大切です。

頭の中で、好みの異世界に自分が入り込んで冒険するような想像をしたことはありませんか?暇な時に、ボーっとしている時に、とあるゲームをしている間に…一番良くやるのは、寝る前に。その想像は、殆どが「こうなったら良い」「やりたい」と思った形でどんどん物語が進んでいくはずです。

これはやり始めてしまうと、やめられないし止まらないですよね。お菓子じゃないです。でも、その“勢い”が大事なんです。

逆に、その異世界が自分が入り込みたくない場所だったとすれば、
物語の進み方が、あまりスムーズではないものになるのではないかと思います。

とにかく思い付いたアイディアに対して“やりたい”、もしくは“好き”“面白い”“良い”と思ったら、とりあえず自由に書き出してみましょう。

このように、自分の好みで、自由にアイディアを出すことを「ブレインストーミング(Brainstorming)」、通称「ブレスト」と呼びます。

現場でも、企画を作成する段階で実行することが多い、会議の方式の1つです。これは使える、これは使えなさそう…という結論を一切出さずに、まずは楽しくアイディアを自由に出す。そしてそこから連想していくのが良いとされています。

もしアイディアが出ない…という方は、コンセプトに沿って色々な事柄、ゲームについて調査し、参考にしてみると良いでしょう。

好きなゲームを少し調べてみよう、という動きだけでも、アイディアを出すための「インプット」が成されます。
もしかしたら、そのゲームから要素を取ってみると、意外と自分の世界観に合うこともあるかもしれませんよ。

というわけで、自分が“好き”“面白い”“良い”と思うものを他人に伝えられるように、楽しくやる。

“やりたい”という動機を基準にするのが、モノを創る上で一番良いことだと私は考えています。


5、見つけ出すか、新しく作るか

では、先ほど決めたコンセプトから、世界観を創っていきましょう。

「移動魔法が使えて、モンスターを様々な剣術と魔法、特別な力で薙ぎ倒す者達がいる洋風のファンタジー世界」

既にキーワードとして「ファンタジー世界」と決まっていて、「剣術」「魔法」を主体とした世界になりますね。ここから、それぞれのキーワードにおいての方向性を決める必要があります。

『見つけ出す』か、『新しく作る』か、になります。

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『見つけ出す』。
既存・汎用の設定を見つけ出し、それを元に構築する方向性です。

ファンタジー世界では、地球を基準としたものになることが多いでしょう。
陸地と海と天体があり、その中で人界と魔界で分かれていて…という感じです。魔法でも、属性等の概念を元素から基準にすることができますね。

また、SFの世界であれば、地球そのものが舞台にできます。この方向性であれば、あまり手間はかからず、比較的短い時間で世界観を考えることができます。
他人から見ても、基準が既に知っているものであれば共有しやすくなりますが、オリジナリティを出すのに苦労することがあります。


『新しく作る』。
全て新しく設定を構築する。オリジナリティを全面的に出す方向性です。
ファンタジー世界でも、“基準”そのものから創り出します。

そもそも陸地や海、天体があるのか、というところから考え、陸地は全て宙に浮いていて、海は無く、水のようなものは全て魔法から作られていて…という感じに考えることになります。

魔法も、元素ではなく、その世界特有の「魔法原点素」というものをオリジナルで作って、SFの世界でも、地球ではなく別の新しい星から創るところから始まったりと、全て新たに考えます。

この方向性は、一から考えるのでかなり手間はかかりますが、完成に近づくごとに魅力に溢れた世界になります。

他人の知識には無いので、新しいものとして上手く伝えることができれば、とても興味を引くことができます。

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それぞれの方向性で、メリットとデメリットを併せ持っています。今あなたが創りたい世界をどうするか、どうやりたいかを考えて、決めていくと良いでしょう。

私は「ファンタジー世界」自体を地球基準として見つけ出し、その他の「剣術」「魔法」は新しく作る、という方向性をやりたいと思っていたので、

・「ファンタジー世界」…地球と同じように、陸地と海と天体が存在する
・「剣術」「魔法」…その世界特有の「魔法原点素(まほうげんてんそ)」から創り出されているもの

という形にしました。
世界の基準を一から創るのはとても難しく、それよりも「ハイスピードアクションRPG」を目立たせるために「剣術」「魔法」を特有にして重点を置いた方が、魅力がより引き立つので良い、と考えたからです。

『見つけ出す』か、『新しく作る』か、決まりましたか?

これも、コンセプトに沿ってから…やりたいことを基準に選んでみましょう。


6、大枠となるもの

ここからは考える上でどうしているのか、少し詳しく解説していきます。

では、その世界の「大枠」となるものを考え、決めていきましょう。
世界観としての大枠は、以下の順に考えます。

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①世界の基準
②種族
③環境
④魔法(科学)
⑤情勢
⑥文化と社会
⑦主人公と物語
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これらを大まかに決めておくことで、スムーズに世界観を創ることができます。それぞれの項目で、3~6個ほど書く具合が大枠としては丁度良いです。

では、私が決めたコンセプトから考えるのを例に、進めてみましょう。


 - ①世界の基準 -

前述から、“陸地と海と天体があり、その中で人界と魔界で分かれている”を基準に大枠を決めます。また、ファンタジー世界らしい設定もプラスしておきましょう。よく見るのは「神々」の設定ですね。

“その世界らしさ”を伝えるためのスパイスとして、特別な設定を入れ込むとその後の設定が広げやすくなります。

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・陸地は「五つの大陸」が存在、海と天体の概念は地球を基準
・五つの大陸が人界となっている
・魔界は世界のどこかに存在しているが、人界からほぼ認知できていない
+世界には神々も存在しており、天界から監視している
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大陸に関しては「いくつあるのか」といった具合で決めておくと良いでしょう。

 - ②種族 -

世界の基準を元に、人界と魔界があるので、それぞれに存在している種族を大まかに書き出します。

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・人界であるには「人間族・妖人族・獣人族・龍人族」が存在
・魔界には「魔族」が存在
+神々は「神族」と呼ばれている
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この辺りも、ファンタジー世界の既存・汎用の設定を参考に見つけ出して決めています。
人界と魔界ならば、大抵は敵対してそう、と想像できるでしょう。


 - ③環境 -

上記の2つを元にして、世界にどのような環境があるのかを考えてみます。

・大陸が五つに分かれていて、住んでいる種族も違うならば、それぞれ違う環境がある

という前提が考えられるので、地球の環境を基準に見つけ出し、

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・人間族 … 安定した気候になっていて、季節がある環境に住む
・妖人族 … 森林等の自然を主とした環境に住む
・獣人族 … 砂漠や雪国等も存在する、少し極端な環境に住む
・龍人族 … 活性化した火山や地底が存在し、極端な環境に住む
・魔族 … 闇に囲まれた魔界で、異常な環境に住む
+神族 … 空の上にある天界で、快適な環境に住む
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という具合に決めることができます。

種族が違うと、それぞれ住んでいる環境にも特徴が出ていれば良いですね。
また、SFの世界で、現在の「地球」を舞台にするのであれば、
ここまでの設定は既に決まっているものとして捉えられるので割愛できます。地球以外の惑星が舞台だと、現在ではなく未来の話で書く必要がありますが…それも面白そうです。


 - ④魔法(科学)-

これは、前述より“その世界特有の「魔法原点素」から創り出されているもの”という方向性が決まっているので、その仕組みを大まかに決めておきます。『新しく作る』ので、ちょっとだけ詳しく書いておきましょう。

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・現在は、誰もが潜在的に「魔法原点素」の力を持っていて、この力を上手く使って繫栄し続けた
・「原点素」種類は、10種類以上ある … 例:リル - 閃光にあたる属性
・それを素に、詠唱等は無しで頭の中で想像した魔法を発動できるが、訓練が必要
・移動魔法も、専用の「原点素」種類が存在する … 例:レイダス - 移動にあたる属性
・「魔法原点素」は生命力を消費し、時間が経てば回復する
+「魔法原点素」は昔、神々が創り、世界にもたらしたもの
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ここまで大枠を決めておけば、後の「情勢」「文化と社会」にも影響していそうだ、と想像しやすくなります。
また、SFの世界なら「科学」が対象になるので、「素となるエネルギーから開発されたもの」「エネルギー燃料で動く」など…「どう作られたか」「どう使用できるか」等の仕組みを書いておくと良いでしょう。


- ⑤情勢 -

世界の基準~環境を見て、世界が現在どんな状況になっているかを決めておきます。大きな括りでの関係図を描くイメージです。

ファンタジー世界であれば、取っ付きやすいパターンとして「魔王」を出して敵対勢力として置く、といった状況ができますね。
また種族が複数あれば、それぞれの関係性も決めておくと、細かく大陸の地図等を作ったり、移動手段を決めたりするときに役立ちます。

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・魔界にいる「魔族」を作り出した「魔王」が存在し、世界を侵攻している
・「人間族・妖人族・獣人族・龍人族」はそれぞれ国を創っており、
 魔界からの侵攻を止めるべく協力的に過ごしている
・思想の違いにより、一部孤立化した国も存在している
・魔族たちが攻め込んでくるため、それに立ち向かう者たちを「冒険者」と呼んでいる
・「魔王」が徐々に力を強めており、人界側は苦戦している
・魔界は、五大陸と同じように存在していると言われているが、人々はその大陸を認知できていない
+「神族」は天界の規則により、直接世界に干渉することができない。
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この辺りも、“やりたいこと”があれば書いてみましょう。例えば、「謎の種族が存在すると噂で流れているが、詳細は不明」など…

ただし、物語に関わる部分が多くなってくるの情勢なので「どこも紛争状態」といった激しい状況を入れたときに、もし「やりたいけど、自分でコントロールが効かなさそう…」と思ったら、「一部のみ紛争状態」とスケール感を少し下げると良いでしょう。

もしどんな状況にして良いか分からない、というときは参考になる作品を調べて見つけ出しましょう。特に人気を持っている作品を見ると、必ず“面白い状況”が出来上がっている世界が多いです。

もうこれだけでシナリオが作れそうですね。大方出来上がってきました。


 - ⑥文化と社会 -

ここまでの項目をまとめて、現在どのような文化や社会が形成されているかを決めます。

例えば、分かりやすい文化としては「魔法を主流として建築・農業・交通が創り上げられている」といった内容です。

社会であれば「人間族が中心になって平和連合を創立し、定期的に国のトップ層が集まって会議している」など…
環境や情勢を見ながら、大きくピックアップしていきましょう。

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・魔法を主流として建築・農業・交通等の基本的な文化が創り上げられた
・人間族が中心になって平和連合を創立し、定期的に国のトップ層が集まって会議している
・四つの種族は皆平等であり、連合で法を築き上げている
・「冒険者」は多く点在し、「管理会」や「ギルド」を中心に動いている
・「魔法原点素」を元とした、この世界独自の言語「SIVS(シブス)」が主流となっている
+人々は神族の姿を認知できないが、日々平和を望んで崇拝している
+と希少な人数だが、神族の力を受け持った「神紋章」を持つ冒険者がいる
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面白くなってきました。
世界の基準から情勢まで大まかに確定していると、文化と社会を考えたときには、盛り沢山のアイディアを書き出せるようになっていると思います。

このように世界観の情報が順番を踏んで整理されることによって、次第に頭の中で連想しやすくなる。

実際に目に見える形で、“その世界のことをシミュレートしながら書き出す”ことで、内容が繋がっているアイディアを出すことができる。

と…私は考えています。現場でも、世界観を考える他に、ゲームの仕様を考えるときにこの方法を活用してアイディア出しを行っているので、とてもオススメな方法です。


 - ⑦主人公と物語 -
さて、ここからは世界の基準のような内容よりかは、少し外れた内容になります。

これまでに決めた大枠を見て、「主人公」と「物語」の大まかな内容もここで一度決めておきましょう。

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・主人公は人間族の少年で、見習い冒険者
・物語は、この少年が突如として「神紋章」の力を得て、魔王を倒すために日々奮闘するお話
・様々な種族の仲間、そして「神紋章」の主である神族と出会う
・魔族側は、主人公の存在を危惧して更に動き始める
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大枠を決める段階でこれを決めるのは理由があります。
細かい設定を決めていく段階になった時に、「設定する優先度」がこれで決まるからです。

もし、主人公が「優秀な悪魔として、魔王の下で働く少女」で、
物語が「人界、更には天界まで全てを支配するまで奮闘するお話」に決まったとしたらどうなるでしょうか?

今回のような「人界と天界」の表向きな設定ではなく、「魔界」の細かい魔族や環境について、という裏側な設定を優先して作らなければならなくなります。

これも1つの“方向性”として決めておくことで、どの設定から優先して決めていけば良いかが分かり、世界観がスムーズに創りやすくなります。主人公の目線で、よりシミュレートがしやすくなるからですね。

とはいえ、表向きな設定を優先して作った後には、裏側な設定も作る必要はありますので、「悪魔の少女の奮闘物語」もアイディアとして保存しておきましょう。
個人的な意見ではありますが、主人公とは真反対である“もう一人の主人公”をイメージして裏設定を作ると、表裏どちらの設定も深みが出るのでオススメです。

これで世界観の大枠が出来上がりました。
あなたもこの手順で、自分だけの世界が大まかに創造できたのではないかと思います。

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▲VRChatでの「ゲームプランナー講演#2」にて、世界観の大枠構築について解説している時の様子


7、後編へ

さて、ここまでの過程で出来上がった世界観の大枠をまとめてみましょう。
また、大枠をまとめてみるときは、小説のあらすじのように文章をまとめるとやりやすくなります。

-------------------------
<コンセプト>
「ハイスピードアクションRPG」
       ×
「移動魔法が使えて、モンスターを様々な剣術と魔法、
 特別な力で薙ぎ倒す者達がいる洋風でシリアスなファンタジー世界」

<大枠>
ここは五つの大陸があるファンタジー世界。
古の神々がもたらした魔法の源となる「魔法原点素」を基に、四つの種族が平和に繫栄していた。

だが、そこに現れたのは世界の支配を企む「魔族」、
そして「魔王」である。

これを打ち倒すべく、世界は平和連合を結成し、
多数の「冒険者」を生み出す仕組みを創り出した。
「冒険者」たちは、世界中に出現する魔族たちを討伐しつつ、
諸悪の根源となる魔王を倒すための術を、魔法と剣術、
そして神々の力で創り出そうと日々奮闘している。

長年に渡り、四つの種族と魔族の戦いが繰り広げられている中、
徐々に勢力を広げる魔族のことを、この世界の天界に存在する神々は危惧していた。

この物語は1つの城下町から始まる。
冒険者として旅をする準備を進めていた少年が、
突如として「神紋章」の力を得て、魔王を倒すために努力し続けるお話だ。
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これだけで壮大な冒険記が始まりそうで“ワクワク”してきますね。
ゲームの企画書作成段階では、世界観の1ページにこのぐらいの文章を載せることになります。

こんな世界を「ハイスピードアクションRPG」として創り出せたらと思うと、更にこの後の工程でも楽しくなりそうです。

今回のまとめとしては…

「方向性を決めて手順を踏みつつ、やりたいことを書き出すことで、創り出すものに一貫性が出る、統一感が出る」

これを行うことで、他人にも分かりやすい世界観を構築しやすくなる。というポイントを覚えておくと良いと思います。

後編から、ゲームプランナー講演#2でもお話していない、例に上げている世界観を元に細かい設定を決めていく段階に入ります。更に細かいポイントまで解説する記事となりますので、お楽しみにお待ちください。

ではまた後編で。

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DRIVE.

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