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2020年8月、サマーウォーズのような思い出

ステイホーム、ステイトーキョー、ステイ書斎。

3月から半年近く、自宅でリモートワークを続けている2020年。
本当に出歩くことが少ない日常が続いていました。

例年とは大きく異なる過ごし方で積み重ねていく日常は、いろんな機会を逃し、取りこぼし、忘れているように思います。

帰省もおいそれとできない状況が続いていますが、そんな中で僕が過ごした夏休みの1日を、忘れないように書き記しておきます。


親族みんなから慕われているおばあちゃんと、
孫娘の婿という間柄である僕との1日です。

幸いなことに、誰も傷ついたり不幸な目にはあいません。
残念なことに、特別大いに盛り上がる展開はありません。

この1日は、孫娘の婿が義理のおばあちゃんと笑いあったというだけのお話です。少しだけ、サマーウォーズを思い出しながら。

(ここからは、サマーウォーズのサントラを聞きながら読むと良いかもしれません)


前前前日くらいの夜

今年の帰省は無しだね

と、話し合いの末にそう結論づけた妻の顔は少し寂しそうだった。

毎年、お盆の時期には娘2人と一緒に僕の実家に帰省をするのがお決まりだった。そして、僕の実家の近くに住んでいる妻の母方の祖母のお宅にも寄るのがお決まりだった。

おばあちゃんは80歳を超えてなお、穏やかで聡明な印象を感じる凛とした佇まいの素敵な方だった。そんなおばあちゃんを慕って、親族が正月とお盆には一同に会して近況を伝え合い、お祝いをしたり、楽しく交流する機会としてお決まりだった。


ただ、今年はそうはいかない。
コロナの感染拡大が収まることは無く、多くの親族が集まることはリスクが高いと判断せざるを得なかったのだ。

孫娘である妻はもちろん、ひ孫も、婿の僕のことをとても歓迎して喜んでくれるおばあちゃんに会えないのは、僕も残念だった。

ギリギリのタイミングまで、帰省を検討したけれど

高齢のおばあちゃんがもし感染したら
帰省の道のりで幼い娘たちが感染したら

と、わずかでも避けるべきリスクがあるなら、やめるべきだろうという判断だった。

しかし、妻のスマホが鳴った。おばあちゃんからだ。


電話、相談

どうやらTVの調子がおかしいらしい。
買い直そうにも相談できる人が近くにいなくて困り果て電話をくれたのだ。

話を聞くと、おばあちゃんのお宅の家電は昔からお付き合いのある個人商店の電気屋さんが諸々用意してくれているそうだ。

購入の相談も設置も、使い方も。すべて頼りにできる心強いお店。
話しぶりから信頼していることがこちらにも伝わってきた。

しかしそのお店も店主の方が高齢のため無くなってしまったようで、近くに家電の相談をできる方がいなくて困っていると。

おばあちゃんからの電話は、そのような相談だった。
その話を聞いて、おばあちゃんが少し心配になった。

帰省、決定

一年に2回。正月とお盆。
親族が集まり賑やかに楽しい日を一緒に過ごせるはずだったおばあちゃんは寂しくないだろうか。

コロナ禍で、猛暑で、中々出歩けない中でリビングに置いてあるTVはどれだけ大事なものだろうか。TVもコレクションのクラシック音楽のDVDも見れないとなると、どれだけ寂しいだろうか。


イマドキ、通販で楽に買い物ができる。
イマドキ、大型家電なんて買えば設置までスタッフがしてくれる。

けれど、おばあちゃんにただTVを手配するだけで全部解決するだろうか。
長年使ってきたTVから、新しいTVに変わっても問題なく使いこなせるだろうか。

他にも困っていることは無いだろうか。
やっぱり、傍で話を聞いてあげたい。困ってるなら助けたい。

「俺ひとりで行ってくるよ。帰省する」

使ってなかった夏季休暇を取得して一人で帰省することにした。
義理のおばあちゃんに、孫娘の婿が一人で会いに行くのは中々面白いシチュエーションだなと思った。

その日は近くにある実家に泊まればいい。
一人だけで外出するのは本当に久しぶりだ。少し、ワクワクした。

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当日、朝

問題なく会社にお休みを頂けたものの、朝に余裕など無い。
我が家は4歳と1歳の娘がいるので、家事育児のタスクは死ぬほどあるのだ。

僕の平日朝の家事分担は

朝食づくり(大人2+長女)、ミルクづくり、離乳食の用意、妻の弁当作り、妻と長女の水筒用意…など、主にキッチンが戦場だ。


いつもより早く起きて、一気に終わらす。出発は早いほうが良い。今日1日ですべて終わらせたいから、何事も早い方が良い。

流石に余裕がなくて、この日ばかりは近所に住んでいるお義母さんに娘2人の保育園の登園をお願いした。

そうして、めちゃくちゃ久しぶりに朝の電車に乗り込む。
思ったより人が多くて驚いた。この6ヶ月でオフィスに出社したのは3回くらいなので、混んでる朝の電車は新鮮に感じた。

到着、猛暑

東京駅、横浜駅を乗り継いで神奈川県の地元の駅へと向かう。
暑い。
暑い暑い暑い暑い暑い暑い。暑い。

書斎に引きこもり続けた自分には地獄のような暑さだった。
壊れたのがエアコンじゃなくて本当に良かった…。

暑い夏の日差しを嫌というほど味わい、玄関のインターホンを鳴らす。

思えば一対一でお会いするのは初めてだ。
ニコニコ笑って接してくれる穏やかな態度は、不思議と時間をゆっくり感じさせてくれた。

ヒアリング、思い至る

今日の自分の目的や動き方を、当初はこんな風に考えていました。

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できるだけ早く解決してあげることが、自分に求められていることだと思っていたんですね。

ただ、おばあちゃんに話をお聞きしてみると

「今日は本当にありがとうございます。今日は近くのご実家にお泊りになられるんですよね?ゆっくり過ごす時間はあるかしら」

と、まずは冷たい緑茶とお茶菓子を頂きながらゆっくりと、沢山お喋りをするところから始まりました。

…全然違ったなwとすぐに気づきました。
嬉しいことに、おばあちゃんは僕と話をする時間を楽しみにしてくれていたのだと感じました。

今日はゆっくり一緒に過ごす時間を大事にしよう
家電は、本当に必要な部分だけ解決できればいいや

とマインドセットを早々に切り替えました。

10年選手で頑張ってきた家電たち

調子が悪いTV
音が出ないスピーカー内蔵のTV台

主にこの2つを直す、もしくは買い換える必要がありそうだった。

地デジに完全移行するよりも前に購入したもので、中々の年代物だった。
数年前に亡くなられたおじいちゃんも愛用していたという思い出話など、沢山のエピソードと一緒に紹介してもらえた。

これは、できれば直してあげたいなと思い早速色々といじくり回し始める。

家電たちの診断結果

結局は配線まわりの問題(ケーブル劣化による破損など)だったので、部品を買ってくれば修理はできそうだった。

ただ、「TVでYoutubeが見れたら素敵だわ」というおばあちゃんのリクエストに答えるためにTVは買い換えることにした。

そんなわけで今あるTVとDVDレコーダーを別部屋に移し替えて、スピーカー内蔵のTV台に新しいTVとBlu-rayレコーダーを置くことにした。

おばあちゃんのDVDコレクションは100枚を超え、すべてがファイナライズ(他の機器でも再生できるようにする処理)が行われていなかったのでDVDレコーダーを捨てるとコレクションが見れなくなってしまうので捨てることにならなくて本当に良かった…。

恐らく年代物のDVDレコーダーで100枚のディスクをファイナライズしていたら日が暮れるだろう。

出発、とはいかず、昼食、お茶会

買うものも決まったし後は家電量販店に行って、価格コムで事前にチェックしていた商品を見に行くか…。

と思っていたけれど、お昼ご飯を頂いてから出発することにした。

おばあちゃんの家には同居している娘(僕の妻からすれば叔母にあたる)が一人いて、電子機器まわりはさっぱりだが料理が趣味ということでごちそうを振る舞ってくれた。

前夜から仕込みをしたという料理の数々は本当に盛りだくさんで、嬉しかった。やっぱり妙なシチュエーションだなwと感じた。

そうして、おばあちゃん・叔母さん・僕の三人で乾杯をした。
振る舞われた食事もビールも、どれも美味しかった。


昼食後。
夏野菜で腹がはちきれそうになりながら「今度こそ出発できる…!」と思ったところでフルーツ、お土産、お茶菓子、緑茶、紅茶、コーヒー、チャイetcetc...

と、お茶会がエンドレスに続いた。会話も楽しくなってきて止まらない。
はて自分は何をしにきたのだったか。
気づけば午後3時である。茶がうまい。

いざ家電量販店

腹が重い。
家電見に来たんだった。

と、ようやくおばあちゃんの家を出た。

そういえば亡くなった自分の祖母も、食事を大量に作ってもてなし続ける人だった。すべてのおばあちゃんはもてなしたい気持ちで溢れているのだろう。

家電量販店では

・使うのはおばあちゃん
・使いやすさと価格を最優先
・修理サポートとかは検討する
・価格コムの値段と比べて、ポイントなし現金値引きで提示できる価格を教えて欲しい

とまとめて伝え、さっさと買うものを決めた。
今回買うTVは43インチでそこまで大きくないので、大きめのタクシーを読んで後部座席に積んで帰る。

腹が苦しいが、今日中にTV+レコーダーの設置を一気にやることにした。

初めてのYoutube

帰宅して、すぐさまTVとレコーダーの配線をガチャガチャと仕上げる。ついでにTV台のスピーカーを直して無線LANつないでYoutubeも見れるようにする。

僕はおばあちゃんのDVDコレクションにあった アンドレア・ボチェッリのライブ動画をYoutubeで再生した。

以前よりも格段にキレイで大きな画面
何年も音が出なかったスピーカーから出てくる迫力のある音

思わず自分も「おぉ、すげえ…」と心の中でつぶやいてしまうほどのインパクトが、あった。

10数年前のTVから一気に進化したその光景に、おばあちゃんは目を丸くしてとても喜んでくれた。電子機器は苦手、と敬遠していた叔母さんも拍手をして喜んでくれている。

来てよかったと心から思った。

その後

TVを見るのが5倍楽しくなったわ!

と目を輝かせて親戚中に感謝を伝えまわっていると聞き、少し照れました。

残念ながら今年の夏は家族みんなで集まることはできなかったけど、1日だけ、孫娘の婿だけ帰省して新しいTV買ってくるという妙な夏休みはおばあちゃんに喜んでもらえたようです。

次またお会いできるのが楽しみですね
今度は妻と娘と遊びに来ますね

と、最後にお別れするのが少し名残惜しかったです。
まだまだ暑い日とコロナに気をつける日が続くけれど、新しいTVを楽しんでもらえると嬉しいな。

来年のお正月やお盆には、新しいTVの前で親族皆で乾杯できるんじゃないかな。と楽しみにしています。

おばあちゃん。また乾杯しましょう。

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