ざわめきの中でも春はやっぱり春なのです

以前から気になっていたゲーテの「野ばら」の訳を、ひよこのるるさんにお願いしてみました。高校生の頃、音楽の試験で近藤朔風訳のシューベルトの歌曲を歌った記憶があります。「わらべはみたり のなかのばら……」その曲の中で、十七歳の清らな!こころが痺れた部分が、二番(二連目)のこちら。

手折りて往かん 野なかの薔薇
手折らば手折れ 思出ぐさに
君を刺さん 紅におう
野なかの薔薇

いつか実生活でこのフレーズを使ってやろう、と思ってはや幾年。幸か不幸か使うことは未だなく、うーん、多分この先もないような気が……。

前置きが長くなりました。それでは、ひよこのるるさんの訳をどうぞお楽しみください。

まず、すべての連にあるこのフレーズ

「ばら ばら まっか 野に咲くばら。」

新鮮です!まさかの「まっか」です。かわいらしくてリズムがあって素敵だと思います。
そして、二連目。

「おまえを摘んでやる
 野に咲くばら」
「あんたを刺してやる
 忘れられなくしてやる
 摘まれるのはいや」
ばら ばら まっか
野に咲くばら。

おお!がらっと変わって「おまえ」と「あんた」、語尾の「~やる」で繰り広げられるスリリングな駆け引き!
こういう訳になるとは思っていなかったのでとても驚いたのですが、一連目から通して読むと、この二連目がまさに「とげ」のように引っかかって、アクセントになっているように感じます。

三連目は、一連目と対になっているのですが、「摘まれてしまったとさ。」の「~とさ」という言い回しが、民話のようで、重々しくなりすぎず、でも、ほろ苦い余韻を残していますね。

日本語で音に出して読むと、さらに魅力的です。実は、初めに目で読んだときは「子ども」という言葉が引っかかったのですが、声に出してみると、不思議としっくりくるのがわかりました。音数と言葉の響きによるものなのでしょうか。

いつもリクエストに答えてくださる、ひよこのるるさん、今回も本当にありがとうございました。楽しませていただいています!

そんなひよこのるるさんのサークルがこちら。

学生時代、「一応」「なんとなく」「しかたなく」やっていた「英語」。もちろん、今も苦手意識がとてつもなく……。私自身、サークルに興味はあるけれど英語かあ、とためらっていましたが、思い切って参加させていただきました!そして、課題の『三四郎』の英語の翻訳を日本語になんとか訳してみました。(もちろんネットなどで必死に調べながら、です。)
最終的に、自分の訳したもの(かなりヘンな訳です)と、他の方の訳、そして夏目漱石の原文を並べて、ひよこのるるさんが解説してくださるのですが、これがとてもおもしろい!日本語で読むだけでは感じられなかった部分が開けるような感覚、そして、ひとつの「もの」を、をいろいろな角度から見て楽しんでいる感覚が、少し味わえたような気がします。自分でもとても意外でした。こういう言葉の楽しみ方、脳も活性化する気がします。興味のある方は、ぜひ!


もうすぐ、あちらこちらに「野ばら」が咲く季節が来ます。園芸種のばらとは違う素朴さとたくましさが魅力的な野ばら。ちなみに、白い野ばらはよく見かけますが「まっか」な小さなものは見たことがないんですよね。自分にとって、まぼろしの「野ばら」。それも、この詩に惹かれる一因なのでしょう。

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